ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

殿ダム

2018-10-18 13:43:34 | 鳥取県
2018年10月9日 殿ダム 
 
殿ダムは鳥取市国府町殿の千代川水系袋川にある国交省中国地方整備局が管理する特定多目的ロックフィルダムです。
一級河川袋川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、鳥取市営水道への上水道用水の供給、鳥取県企業局への工業用水の供給、鳥取県企業局袋川発電所での最大1100キロワットのダム水路式発電を目的として2011年(平成23年)に竣工しました。
事業計画から建設着手まで長期にわたる補償交渉があったことも踏まえ地域との交流に配慮、ダム下の殿ダム記念広場をはじめダム周辺に4カ所の広場を設け地域住民の憩いの場となっています。
 
県道31号線を進むと右下に殿ダムの姿が見えてきます。
堤高75メートルは鳥取県内のダムでは最高、ダム下は記念広場として整備され見た目にも美しいロックフィルダムです。
 
特筆すべきはその洪水吐で、導流部がカスケードになっています。
右手は放流設備と袋川発電所。
 
明治大正期の上水用アースフィルダムでは階段状の洪水吐導流部をよく見かけます。
しかしこれほど大規模なものは殿ダムだけでしょう。
 
右岸ダムサイトにある管理所とダム下の記念広場を結ぶインクライン。
一般見学者は乗れるのかな?
 
ダムサイトまで上がってきました。
下流面は白い石が積まれていますが、上流は黒い丸石です。
 
天端から
ダム下の記念広場、
サッカー会場として利用されるなど普段は家族連れで賑わうようですがこの日は休園日。
 
下流面は白い石。
 
天端
管理所の開設時間に限り車両通行可能です。
 
左岸の側水路式の巨大な洪水吐
ゲートレスで奥の二つの穴がが常用、横越流部が非常用の洪水吐となります。
 
取水塔。
ダム湖は因幡万葉湖と命名され総貯水容量は1240万立米。
 
2011年に竣工したばかりのダムなので、見た目も美しく周辺の環境整備も行き届いています。
ダム管理事務所では「平成のピラミッド」を標榜していますが、できれば上流面と下流面の異なるロック材を俯瞰できる展望所でも作ってくれればピラミッドも実感できるのですが。
 
(追記)
殿ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
2931 殿ダム(1400)
鳥取県鳥取市国府町殿
千代川水系袋川
FNWIP
75メートル
294メートル
12400千㎥/11200千㎥
国交省中国地方整備局
2011年
◎治水協定が締結されたダム

百谷ダム

2018-10-18 11:42:17 | 鳥取県
2018年10月9日 百谷ダム
 
百谷ダムは鳥取県鳥取市百谷の一級河川千代川水系天神川源流部にある鳥取県県土整備部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
建設省(国交省)の補助を受けて建設された補助治水ダムで天神川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給を目的として1973年(昭和48年)に竣工しました。
百谷ダムは日本で最初にクレスト自由越流式洪水吐が採用されたダムです。
今でこそ当たり前のように建設されているゲートレスダムですが、その第一歩となったのが百谷ダムで、日本のダム史において大きな転換点となったダムと言っても過言ではないでしょう。
 
ダム下は私有の農地でダム直下には行けません。
ゲートレス黎明期のダムということで、越流した水を中央に集水させるために導流部は独特の曲線形状となっています。
クレストには扶壁を挟んで2門の自由越流式非常用洪水吐、オリフィスに自然調節式常用洪水吐があります。
 
左岸ダムサイトに上がります。
下流から見た洪水吐はダムの一部で、堤体の右岸寄りに洪水吐が位置しています。
 
導流面はアーチダムのように湾曲
クレスト越流部がセットバックされており、コンジットゲート上の扶壁は逆ハングになっています。
 
天端
ここだけ見ると普通のダム。
 
諸元プレート
目的にかんがいが入っていますが、これは既得取水権への灌漑用水補給、つまり『N』の意味かと思います。
 
減勢工もきれいな扇形、そして導流面はアーチ状
ここだけ見たら紛うことなきアーチダムです。
 
ダム下には農地。
 
総貯水容量は28万立米とため池サイズ。
インレットは湿地になっていてスイセンの群落があるよです。
 
越流堤は円形を描き上流側に大きくセットバックされています。
 
越流部をアーチ状にすることでより大きな放流量を確保するとともに、放流された水を減勢工に収束される意図のようです。
写真では見難いですが、ゲート中央にオリフィスの補助ゲートとしてコースターゲートがあります。
 
余所ではちょっと見られない、異形のゲートレス。
日本初のゲートレスとして紆余曲折、さまざま模索しながらたどり着いたのがこの形だったんでしょうね。
 
(追記)
百谷ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

1683 百谷ダム(1399)
千代川水系天神川
FN
18メートル
79メートル
280千㎥/242千㎥
鳥取県県土整備部
1973年
◎治水協定が締結されたダム


桜溜池

2018-10-18 03:07:47 | 鳥取県
2018年10月9日 桜溜池
 
桜溜池は鳥取県倉吉市桜の天神川水系国府川左支流にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1973年(昭和48年)に鳥取県の事業で竣工と記されており、農水省の補助を受けた県の事業で整備もしくは建設されたものと思われます。
ただ既存の溜池を改修したのか、新たに溜池を新設したのかは不明です。
池の管理は久米ヶ原土地改良区が行っています。

桜溜池という名前から、富山の桜ヶ池のような池公園として整備された小奇麗な池を予想していましたが実際は普通の溜池。
桜地区にあるので桜溜池だそうです。
左岸から
山陰では池の草刈りは稲刈後に行われるのが一般的で、当池もあいにく草刈り前。
 
環境整備の看板。
 
池直下の施設。
池は減圧水槽、建屋は揚水機場になります。
 
総貯水容量54万6000立米。
 
左岸の斜樋。
 
天端は車道になっていますが、見学中1台も車は通りませんでした。
 
上流面はコンクリートブロックで護岸。
 
右岸の越流式洪水吐。
 
上流から。
 
洪水吐導流部。
草刈り後に来ればイメージも変わるんでしょう。
 
1684 桜溜池(1398)
ため池コード
鳥取県倉吉市桜
天神川水系国府川
36.6メートル(ため池データベース23.1メートル)
115メートル(ため池データベース124メートル)
546千㎥(ため池データベース534千㎥)/546千㎥
久米ヶ原土地改良区
1973年