ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

香々美ダム

2018-10-26 16:47:55 | 岡山県
2018年10月13日 香々美ダム
 
香々美ダムは岡山県苫田郡鏡野町越畑の吉井川水系香々美川源流部にある農地防災及び灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
農林省(現農水省)の補助を受け、1967年(昭和42年)に着手された県営香々美川用水改良事業の中核施設として1974年(昭和49年)に竣工しました。
運用開始後は鏡野町が受託管理を行い、香々美川流域農地447ヘクタールの農地防災、受益農地675ヘクタールへの灌漑用水の供給を目的としています。
また1982年(昭和57年)には河川維持放流を利用した岡山県企業局越畑発電所が建設され最大200キロワットの小水力発電を行っています。
 
昭和40年代に作られたダムということで農業用ダムながらクレストにはラジアルゲートを備えています。
また常用洪水吐としてホロージェットバルブ1条があります。
 
ゲートをズームアップ
ゲートは一般的なラジアルゲートの半分程度の大きさです。
 
ホロージェットバルブ。
 
減勢工のエンドシル。
 
左岸下流から。
 
 
天端は立ち入り禁止
ゲート部分だけ上流側に張り出しクランクになっています。
 
上流面
ゲートの右手に取水設備があります。
 
竣工記念碑。
 
上流から遠望
左手の三角屋根は管理事務所、平日は町の職員が駐在しているようです。
貯水池は総貯水容量185万3000立米と農業用ダムとしてはそこそこ大きなサイズ。
 
(追記)
香々美沢ダムには農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
1889 香々美ダム(1424)
岡山県苫田郡鏡野町越畑
吉井川水系香々美川
FA
39メートル
131メートル
1853千㎥/1703千㎥
鏡野町
1974年
◎治水協定が締結されたダム

三成ダム

2018-10-26 16:11:31 | 島根県
2018年10月13日 三成ダム
 
三成ダムは島根県仁多郡奥出雲町の斐伊川水系斐伊川上流部にある島根県企業局が管理する発電および砂防目的のアーチ式コンクリートダムです。
斐伊川は流路延長153キロ、流域面積2540平方キロの一級河川です。
上流域では江戸時代からたたら製鉄が盛んで、砂鉄採取過程の『かんなながし』と呼ばれる人為的な土砂流出が中下流域の洪水被害につながっており。土砂流出抑止が長年の課題となっていました。
一方戦後の復興による電力需要の増加に対処するため、島根県企業局は公営発電事業者として積極的な電源開発を推進していました。
1950年(昭和25年)に当時の建設省中国四国建設局(現国交省中国地方整備局)は斐伊川上流部へ直轄事業として砂防目的のダム建設に着手、これに島根県企業局が発電事業者として事業参加し1953年(昭和28年)に竣工したのが三成ダムです。
運用開始後、管理は島根県企業局に移管され、砂防目的のほか島根県企業局三成発電所で最大2830キロワットのダム水路式発電を行っています。
三成ダムは着工こそ宮崎県の上椎葉ダムに遅れたものの、竣工ベースでは日本初の本格的アーチ式ダムとなっています。
三成ダムは日本100ダムおよび土木学会選奨土木遺産に選定されています。
 
管理所前には土木学会選奨土木遺産認定プレートが埋め込まれた記念碑が建ちます。
 
三成ダムの説明板
この先ダムへの管理道路は立ち入り禁止となり管理事務所のゲートも閉まっています。
この案内板の下に管理事務所の電話番号があり、ここに電話をするとダムカードがもらえるとともにダム天端手前までの立ち入りを認めてもらえます。
 
管理道路を下るとすぐにダムが見えてきます。
 
この先のフェンスまでが立ち入り可能。
左右両サイドに土砂吐ゲートを備えています。
また左右両端は重力式、中央がアーチ式という独特のスタイル。
 
両側の土砂吐から放流しています。
 
よく見ると左岸の土砂吐は2門、右岸は1門
写真では分かりませんがそれぞれローラーゲートを備えています。
 
クレストには8門の洪水吐がありこちらもローラーゲートを装備。
 
ほぼ垂直の導流面。
 
左右両岸が重力式のため、個性的なスタイルのアーチダムとなっています。
叶うならダム下から見上げてみたいものです。
 
(追記)
三成ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

1730 三成ダム (1423)
島根県仁多郡奥出雲町三成
斐伊川水系斐伊川
42メートル
109.7メートル
3438千㎥/1138千㎥
島根県企業局
1953年
◎治水協定が締結されたダム


阿井川ダム

2018-10-26 16:06:34 | 島根県
2018年10月13日 阿井川ダム
 
阿井川ダムは島根県仁多郡奥出雲町河内の斐伊川水系阿井川にある中国電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1942年(昭和17年)に日本発送電によって建設され戦後の電力分割民営化により中国電力が事業継承しました。
ここで取水された水は約3.5キロの導水管で北原発電所に送られ最大出力1万5600キロワットのダム水路式発電を行っています。
 
ダム下流はフェンスに囲まれており、一眼レフではなくスマホでの撮影となりました。
傷ついた導流部のコンクリートが竣工から70年以上経過した時間を表しています。
左岸の排砂口から河川維持放流が行われ、ダム下には小さな副ダムがあります。
 
クレストはローラーゲートが2門
ピアに管理橋が架かり中央にゲート操作室があります。
中国電力でよくみられる扶壁前面にゲート操作が乗るスタイルではありません。
 
対岸に農地があるため天端は開放されています。
 
建設当時の親柱でしょうか?
ドーム状のデザインが戦時中のダムらしさを感じさせます。
 
右岸上流から。
 
左岸に発電所への取水口があります。
スクリーンの先が沈砂池、その奥の建屋に取水ゲートがあります。
 
ゲートピア。
 
ローラーゲート。
 
左岸上流側から。
 
沈砂池。
 
(追記)
阿井川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
1721 阿井川ダム(1422)
島根県仁多郡奥出雲町河内
斐伊川水系阿井川
21.7メートル
96メートル
1085千㎥/855千㎥
中国電力(株)
1942年
◎治水協定が締結されたダム


尾原ダム

2018-10-26 16:00:27 | 島根県
2018 年10月13日 尾原ダム 
 
尾原ダムは島根県雲南市木次町北原の一級河川斐伊川水系斐伊川上流部にある重力式コンクリートダムです。
斐伊川は「ヤマタノオロチ」の起源とされるなど古くから暴れ川として知られ斐伊川の治水は当地を治める為政者にとっては永続的な課題となっていました。
建設省中国地方建設局(現国交省中国地方整備局)は斐伊川・神戸川・宍道湖・中海一帯の治水を柱とした「斐伊川・神戸川総合開発事業」を採択し、長年にわたる補償交渉を経て2010年(平成22年)に竣工したのが尾原ダムです。
尾原ダムは国交省中国地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで、斐伊川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、島根県企業局を通じた松江市・出雲市・雲南市北部への上水道用水の供給を目的としています。
事業計画から建設着手まで長期にわたる補償交渉があったことも踏まえ、本体工事に先立つ2005年(平成17年)に国交省より『地域に開かれたダム事業』の指定を受け、ダムを観光・レジャー拠点として有効活用することとなり、ボート競技施設の開設やダム湖周辺のサイクリングリードの整備が進められました。
一方斐伊川水系の治水については尾原ダム竣工翌年の2011年(平成23年)に神戸川の志津見ダムが、さらに2013年(平成25年)に斐伊川放水路が完成し、流域の治水能力は大きく改善されました。
 
クレストには非常用洪水吐としてラジアルゲートが2門あり、それぞれがジャンプ台を備える特異な形状。
 
最近のダムらしく天端に建屋はなくすっきりしたスタイルとなっています。
また常用洪水吐や利水放流設備などは水中放流方式のため見えなくなっています。
 
右岸から
2門のジャンプ台式洪水吐が並ぶダムは他にはないんじゃないでしょうか?
常用洪水吐や放流設備は水中放流方式のためジャンプ台下の減勢工に直接放流されています。
水中放流方式は騒音低減に大きな効果があるようです。
 
アングルを変えて
竣工から8年、まだまだきれいなコンクリートです。
 
上流からゲートと取水設備をズームアップ
予備ゲートが4門あることから水中放流方式では4門の放流管が使われていることが分かります。
左右の大きなゲートは常用洪水吐、中の小さなゲートは利水放流設備に相当します。
また取水設備は連続サイフォン方式が採用され天端からかなり低い位置への設置となっています。
 
減勢工と副ダム。
 
副ダムは四つの穴のあいた珍しい構造です
穴の大きさや角度がそれぞれ異なっており、減勢工の水位によって放流量が自然調節できるようになっています。
 
天端は管理事務所が開いている間は車での通行が可能です。
 
ダム湖は『さくらおろち湖』で総貯水容量は6080万立米。
『地域に開かれたダム』をコンセプトにボート競技施設やサイクリングロードなどが整備されています。
 
左岸のモニュメントと記念碑。
 
国交省中国地方整備局管理のダムでは新しい技術が積極的に導入されているように思いえますが、当ダムでも水中放流方式や連続サイフォン方式の取水設備、また珍しい2門のジャンプ台式減勢工など余所ではあまり見られない特徴をもっています。
 
(追記)
尾原ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
2964 尾原ダム(1421)
島根県雲南市木次町北原
斐伊川水系斐伊川
FNW
90メートル
440.8メートル
60800千㎥/54200千㎥
国交省中国地方整備局
2010年
◎治水協定が締結されたダム

塩田ダム

2018-10-26 15:54:04 | 島根県
2018年10月13日 塩田ダム
 
塩田ダムは島根県雲南市大東町篠淵の斐伊川水系金谷川源流部にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
農水省の補助を受けて1980年(昭和55年)に事業着手された塩田地区団体営かんがい排水事業の中核施設として1988年(昭和63年)に竣工しました。
運用開始後は当時の大東町が受託管理をしていましたが、その後の市町村合併により現在は雲南市が管理を引き継いでいます。
 
雲南市大東町中心部から県道268号線を南に進み大東町篠淵地区に入ると塩田ダムの標識が現れます。これに従うと塩田ダムに到着します。
右岸ダムサイトに東屋とトイレ、数台分の駐車場がありますが、ダム下へのルートはありません。
 
右岸上流から
 
ゲート付近をズームアップ。
 
木が茂り下流面の撮影もこれが精いっぱい。
洪水吐は自由越流式クレストゲート1門と農業用コンクリートではおなじみのスタイル。
導流壁は直線状。
 
かんがい排水事業とダムの説明板。
 
竣工記念碑。
 
天端から洪水吐導流部と減勢工
も後手の建屋が放流設備
減勢工には副ダムがあります。
 
放流設備をズームアップ
下流から山道が通じているようですが、この時期は草ボウボウ・・・。
 
貯水池は総貯水容量31万立米と溜池サイズ。
 
赤い屋根の建屋はトイレでその下が艇庫になっています。
インクラインはなくクレーンで昇降させるようです。
 
天端。
 
典型的な小規模農業用ダムです。
最近の農業用ダムは漸縮型堤体導流壁が多い気がしますが、塩田ダムは竣工が昭和の終わりということで直線状の導流壁になっています。
 
1761 塩田ダム(1420)
島根県雲南市大東町篠淵
斐伊川水系金谷川
39.7メートル
88メートル
310千㎥/272千㎥
雲南市
1988年