ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

大宮ダム

2018-10-24 01:58:51 | 鳥取県
2018年10月12日 大宮ダム
 
大宮ダムは鳥取県日野郡日南町の日野川水系印賀川にある中国電力が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1940年(昭和15年)に日本発送電によって建設され戦後の電力分割民営化により中国電力が事業継承しました。
ここで取水された水は東方8キロにある鵜ノ池を経由して黒坂発電所に送られ最大出力1万5000キロワットのダム水路式発電を行っています。
 
ダムの敷地へは立ち入りできませんが、フェンスの隙間からダムを見ることができます。
中国電力特有の扶壁前面にゲートハウスが乗っかるスタイル。
ただピアには管理橋が架かり、もう一つの特徴であるにょきにょき感はありません。
 
ローラーゲートが2門のほか、左岸側(写真では向かって右手)に排砂ゲートががあります。
 
天端。
 
上流から。
 
もう一枚。
 
フェンス越しの見学となりますが、戦前の古いダムを堪能することができます。
ここで取水された水は鵜ノ池に送られますが、帰宅後調べると鵜ノ池にも堤高15メートル未満ながら立派なコンクリート堰堤があることが分かりました。
鳥取県はまだ朝鍋ダムが未訪のままですし、島根県はほとんど手付かずとなっていますので、次回山陰遠征の際期にはぜひ訪問してみたいと思います。
 
(追記)
大宮ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
1674 大宮ダム (1419) 
鳥取県日野郡日南町印賀
日野川水系印賀川
16.8メートル
68.5メートル
495千㎥/235千㎥
中国電力(株)
1940年
◎治水協定が締結されたダム

菅沢ダム

2018-10-24 01:53:20 | 鳥取県
2018年10月12日 菅沢ダム 
 
菅沢ダムは鳥取県日野郡日南町菅沢の日野川水系印賀川にある重力式コンクリートダムです。
国交省中国地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで、中国地方最初の建設省(現国交省)直轄ダムとして1967年(昭和42年)に竣工し、印賀川および日野川の洪水調節、流域農地への新規灌漑用水の供給、境港市・米子市及び日吉津村への工業用水の供給、鳥取県企業局日野川第一発電所での最大4300キロワットのダム水路式発電を目的としています。
 
菅沢ダムは国道180号線沿いにあります。
右岸ダムサイトに管理事務所と駐車場があり天端は自由に見学できますが、ダム下は立ち入りできません。
訪問時は工事のため水位が低くなっていました。
ダム上流面に取水設備があり、正面はインクラインと艇庫、左手の赤いトラス橋は国道180号線です。
 
クレスト洪水吐はジャンプ台式で、ジャンプ台の下にコンジットゲートの操作室があります。
下から見てみたい!
 
ダム下をズームアップ
左手の建屋は2013年(平成25年)に増設された放流ゲート操作室で左から灌漑用水向けの利水放流ゲート、小規模放流ゲートとなっています。
 
真上からクレスト洪水吐導流部と減勢工。
 
ジャンプ台式洪水吐
鳥取県営の佐冶川ダムと似たような構造ですが、こちらの方がはるかに大規模。
 
天端は徒歩のみ開放
ダムは古いのですが管理事務所はガラスバリの斬新なデザイン。デザイナーマンションみたい。
右上は受信用アンテナでこちらも一見モニュメント風。
 
下流面。
 
左岸高台に展望台があります。
かなり荒れ気味でクモの巣いっぱい・・・でもなかなかの眺めです。
水位が低いのでこれはこれで貴重な絵柄かも?
 
国道180号線から上流面を正面から見れます。
実は艇庫の左手に発電所の取水口があったのですが見落としてしまいました。
 
ズームアップ
左手は2013年(平成25年)に新設された取水設備、クレストゲートの下にコンジット用の予備ゲートがあるようですがこの日は下ろされたままでした。
右手のコンパスのようなものは従来のヒンジ式取水設備のガイドレールとアーム。
 
工事のために水位が落とされ普段見れない景色を見ることができました。
しかし菅沢ダムの一押しはジャンプ台式減勢工。
是非ダム下から見上げてみたいものです。
毎年地元のお祭りに合わせて見学会が実施されるようですが、遠方のダム故参加するのはなかなか難しいものがあります。
 
(追記)
菅沢ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
1681 菅沢ダム(1418) 
鳥取県日野郡日南町菅沢
日野川水系印賀川
FAIP
73.5メートル
210メートル
19800千㎥/17200千㎥
国交省中国地方整備局
1967年
◎治水協定が締結されたダム

俣野川ダム

2018-10-24 01:42:49 | 鳥取県
2018年10月12日 俣野川ダム
 
俣野川ダムは鳥取県日野郡江府町武庫の日野川水系俣野川上流部にある中国電力が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。 
オイルショックを契機に電力各社は火力偏重の発電体制を見直し、火力や原子力との連携が図れ余剰電力を有効利用できる揚水発電に着目します。
広島や岡山への人口集中や臨海部への工場集積を受けて電力需要のピークが上昇を続けていた中国電力も1980年代より積極的に純揚水式発電所の建設を進め、同電力3番目の純揚水式発電所として1986年(昭和61年)に俣野川発電所が完成します。
俣野川ダムは同発電所の下部調整池として発電所に先立つ1984年(昭和59年)に竣工し、運用開始後は上部調整池である土用ダムとの有効落差489メートルを利用して最大120万キロワットの揚水式発電を行っています。
俣野川発電所は日本で初めて2県に跨る揚水式発電所として完成したほか、上部調整池は瀬戸内海に流れる旭川水系、下部調整池は日本海に注ぐ日野川水系と異なる水系同士での揚水式発電となっています。
また出力120万キロワットは中国電力の水力発電所としてはでは最大出力を誇っています。
このほか俣野川ダムでは落差62.3メートルを利用して俣野川ダム発電所で最大2100キロワットのダム式水力発電もおこなっています。 
 
江府町の国道181号線武庫交差点を東に折れ県道112号を東進すると俣野川ダムサイトに到着します。
ダム下へはダムの2キロほど手前で右手の旧道を進みます。
シミュラクラ現象で眼鏡をかけたおっさん顔に見えます。
 
クレストにはラジアルゲートが2門、コンジットには高圧ラジアルゲートが1門。
さらに放流バルブが2条設置されています。
左右の背の高い導流壁が目立ちます。
 
副ダムの下流の堰。
減勢目的かと思ったら灌漑用水の取水堰でした。
 
ダムサイトに上がります。
右岸から下流面。
 
天端から
右手は一般水力の俣野川発電所です。
 
放流設備
口径の異なるバルブが2条装備されています。
 
揚水式発電の俣野川発電所の取水口。
 
天端
本来は車両通行可能のようですが、ダム湖周回道路が落石のため通行止めになっています。
 
クレストゲートと俣野川発電所取水設備を遠望。
 
ダム湖の名称は猿飛湖。
 
電力会社のダムとしては開放的で見学ポイントが多数ある魅力的なダムです。
また俣野川発電所は予約をすれば見学も可能だったのですが、今は工事のため見学は中止中とのこと。
一方上部池の土用ダムは時間の関係でパスしてしまいましたが、どうやらガードが厳しくフェンス越しに垣間見える程度のようです。
 
(追記)
俣野川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
1486 俣野川ダム(1417)
鳥取県日野郡江府町武庫
日野川水系俣野川
69.3メートル
185メートル
7940千㎥/6700千㎥
中国電力
1984年
◎治水協定が締結されたダム

下蚊屋ダム

2018-10-24 01:24:21 | 鳥取県
2018年10月12日 下蚊屋ダム
 
下蚊屋(さがりかや)ダムは鳥取県日野郡江府町助沢の日野川水系俣野川源流部にある不特定利水・灌漑用水目的のロックフィルダムです。
鳥取県の大山西山麓はもともと陸軍の軍馬補充部の放牧地でしたが、1939年(昭和14年)に西日本を襲った大干ばつをきっかけに国営事業として開拓が進められ昭和40年前半までに約1600ヘクタールの新規農地が開拓されました。
しかし農業用水を天水に頼っていたため安定した灌漑用水源の確保が大きな課題となっていました。
そこで1972年(昭和47年)より国営の大山山麓地区総合農地開発事業が着手されその中核施設として2001年(平成13年)に竣工したのが下蚊屋ダムです。
2005年(平成17年)には農地開発事業全体が竣工し、ダムを含めた施設全体は大山山麓地区土地改良区連合が管理を受託、約400ヘクタールの農地へ特定灌漑用水を供給するほか、俣野川および日野川流域約1600ヘクタールに不特定灌漑用水を補給します。
ダム便覧ではダムの目的は『A』のみとなっていますがこれは誤りで、正しくは『NA』となります。
またに2015年(平成27年)には河川維持放流を利用した下蚊屋発電所が増設され最大出力197キロワットの小水力発電を行っています。
 
下蚊屋ダムは国道482号線沿いにあります。今回は米子道江府インターから国道を東に進みました。
まずはダム下
堤体と洪水吐の間に地山があります。
 
エンドシルの下流にはバッフルブロックが並びます。
 
放流設備としてジェットフローゲート2条を装備。
この放流は不特定灌漑用水向け補給となります。
 
下流面。
 
ダムサイトに上がります。
右岸の横越流式
 
右手の青い屋根の建屋は2015年(平成27年)に新設された下蚊屋発電所で、河川維持放流は発電所経由となります。
 
上流面。
 
天端
車止めがあり徒歩のみ立ち入りできます。
晴れていれば真正面に大山が見えるのですが・・・。
 
ダム湖は総貯水容量386万立米。
 
右岸の斜樋。
 
(追記)
下蚊屋ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
1687 下蚊屋ダム(1416)
鳥取県日野郡江府町助沢
日野川水系俣野川
NA
55.5メートル
650メートル
3860千㎥/3440千㎥
大山山麓地区土地改良区連合
2001年
◎治水協定が締結されたダム

社口ダム

2018-10-24 01:16:49 | 岡山県
2018年10月12日 社口ダム
 
社口(やしろぐち)ダムは岡山県真庭市社の旭川水系旭川本流上流部にある中国電力が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
戦後、岡山県臨海部への工場進出による電力需要増加を受け新たな電源開発を計画していた中国電力は水量豊富な旭川上流域に着目、岡山県との共同事業で湯原ダム建設を進めました。
湯原ダム建設に合わせて同ダム下流3キロ地点に中国電力が着工したのが社口ダムで、湯原ダムと同じ1954年(昭和29年)に竣工しました。
社口ダムは湯原第一発電所の放流水を調整するための逆調整池としての機能を持つほか、ここで取水された水は湯原第二発電所に送られ最大2万3700キロワットのダム水路式発電が行われます。
 
湯原温泉から旭川左岸の旧国道を南下し、県道56号を右折すると社口ダムに到着します。
右岸は自由越流式の越流堤、左岸にはラジアルゲートが3門並びさらにゲートの左岸端(向かって右手)に排砂ゲートがあります。
ラジアルゲートが常用、自由越流堤が非常用洪水吐となります。
 
重厚感のあるゲートピアだと思ったら鋼鉄製。
ピアはコンクリートやトラス製が多く、鋼鉄製は珍しいのでは?
 
 
上流から
左手に湯原第二発電所への取水口があります。
 
余水吐が白く塗装されており、ぱっと見ラバーかと思いました。
ダムの先の高架橋は米子道です。
 
実は米子道上り線からの眺めが一番いいという社口ダム。
もちろん撮影はできませんが・・・
 
(追記)
社口ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
1868 社口ダム (1415)
岡山県真庭市社
旭川水系旭川
16.2メートル
75メートル
960千㎥/854千㎥
中国電力
1954年
◎治水協定が締結されたダム

湯原ダム

2018-10-24 01:10:01 | 岡山県
2018年10月12日 湯原ダム
 
湯原ダムは岡山県真庭市湯原温泉の旭川水系旭川上流部にある岡山県土木部と中国電力が共同管理する多目的重力式コンクリートダムです。
旭川水系では戦前からダムの建設計画が進められていましたが戦争で中断、戦後岡山県は復興の柱として旭川上流での湯原ダム、中流での旭川ダム建設事業に着手します。
湯原ダム建設事業では戦後の電力不足解消のために積極的に新電源開発を進めていた中国電力が発電事業者として事業参加し、わずか3年の工期を経て1954年(昭和29年)に竣工しました。
ダムは岡山県と中国電力が共同管理し、旭川上流域の洪水調節および中国電力湯原第一発電所で最大2万6600キロワット、湯原えん堤発電所で最大360キロワットの発電を目的としています。
さらに下流の社口ダムを取水ダムとする湯原第二発電所で最大2万3700キロワットの発電が行われており、計5万660キロワットの発電能力を有しています。
 
湯原ダム直下には江戸時代からの名湯湯原温泉があり、無料の河川敷駐車場から徒歩5分でダム下に到着します。
ダム直下には有名な露天風呂『砂湯』があります。
人気の露天風呂で、目当てがダムの撮影でもカメラを持ってうろうろしていると盗撮に間違われるので要注意です。
洪水吐はクレストに6門のローラーゲートが並び、直線の導流壁がいかにも1950年代のダムといった風です。
放流設備としてはこれ以外には堰堤発電所経由の放流設備があるだけ、実際には平常時の下流への放流は湯原第一発電所経由が大半となります。
 
ゲートをズームアップ
一番右岸寄り(向かって左手)のゲートだけ色が違っています。
 
県道322号で天端に向かう途中からもダムが見えます。
 
扶壁上部に段差がついています。建設時に歩廊が架けられたんでしょうか?
 
天端は県道で車両が通行できます。
ゲートピア両側に螺旋階段。
 
ダム下
いわゆる減勢工らしきものはなく、ダムの下流がすぐに温泉街となります。
 
貯水池の湯原湖
湛水面積455ヘクタールは中国地方最大、総貯水容量9960万立米は岡山県最大。
 
左岸にある謎の構造物。
 
下流面。
 
上流面
管理事務所もスペースがなく崖にへばり付くように建てられています。
 
温泉街に近いダムということで、ダムのライトアップなどのイベントも多く行われていますが、遠方からでは宿泊しないとなかなかお目に架かることはできません。
なお、右岸上流側に湯原第一発電所への取水口があったのですが予習不足で撮影しませんでした。
 
(追記)
湯原ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
1869 湯原ダム(1414)
岡山県真庭市湯原温泉
旭川水系旭川
FP
73.5メートル
194.4メートル
99600千㎥/86000千㎥
岡山県土木部・中国電力共同管理
1954年
◎治水協定が締結されたダム