歌う介護士

看取りをしたご入居者から「あなたの声は癒される」と。お一人一人を思い浮かべながら、ずっと歌い続けています。

支える杖にはなれないけれど

2011-06-17 23:41:23 | Weblog
どれほど近しくしても、退社したところへは、よほどのことがないと顔を出さないように心がけている。
部外者が行ってなにを言えるものでも聞けるものでもないので。
かえってご入居者の心を乱すことになりかねない、と私は思っているのです。

母一人子一人で支えあってこられた方から連絡を頂いた。


経口から水分も食べ物も受け付けなくなり、
点滴のルート確保もできなくなったらしい。


医療処置は断り、入居している施設に昨日戻られた。
致命的な疾患はなく、経口から受け付けられれば永らえることが出来る、と思った。
偶然、今日休みだったので伺うこととする。

こういうところでタイミングが合う時は、呼ばれているのだろうと私は思う。

私のことはすぐに認識され、驚いた顔で迎えてくださった。
呼吸は乱れがちだったが、お話も普通に交わせる。

嚥下には問題がなかった・・・、良かった。
舌も乾いているのでもっていった冷たい飲み物を吸い飲みで勧める。
「おいしい・・・」
味も分かっている。
好きだったそうめんは昨夜ゆでて出汁につけて置いたもの。
30分ほどかけて、カフエオレ70cc、そうめん二口、プリン二さじ。
(後で娘さんに電話で報告すると、よく食べたほうらしい)

この方がこのような状態になってしまった原因をいまさら追求しても始まらない。
生きていてほしいという娘さんの『願い』を思い起こし、生きたい『意欲』が少しでも出るようにケアが出来るだろうか。
課されている課題は、とても重いものがある。

まず、水分だけでも何でも良いので飲んでもらえれば胃が動く。
ご家族に出来ること、ご家族でないと出来ないこともある。
考え付く限りをお伝えした。

ご本人には、
もう一度家へ帰りたかったのではないのか、
体力をつけるために飲み物だけでも口にしてほしい。
と、諭すように話すと顔をくしゃくしゃにされていた。


傍で見守っていると私の方に寝返りをしたそうなので手伝うと、そのまま静かな呼吸で眠っておられた。
89歳の方が一枚一枚追って作った『鶴』を枕元に置かせてもらった。


感情移入しすぎたので、15日に書いた内容を修正しました。