歌う介護士

看取りをしたご入居者から「あなたの声は癒される」と。お一人一人を思い浮かべながら、ずっと歌い続けています。

生活リハビリでどんなケアが出来るか

2009-04-28 23:42:53 | Weblog
うちの施設は介護保険の「リハビリ加算」は取っていない。
他の拠点は加算を取っているので、リハスタッフの常駐が必要になる。
そのあおりを受けて、週1日赴任していたリハスタッフが半日しか来れなくなった。
それでも、来てくれるのは全くいないのと大違いだ。
有料老人ホームは、老人保健施設とは異なり専門的なリハビリは行わなくてもよく、毎日の生活の起居動作が生活リハビリとなるのだ。

若いスタッフが多いので、リハスタッフの指導の下に移乗動作や体交などを行っている。全ての生活リハは、リハスタッフの指導・評価を受けて行っている。

私は、この縦型指示をあまりヨシとしていない。
なぜなら、全て「あなた任せ」で自分自身の頭を使おうとしなくなるからだ。
評価や指導を受けるのはよいが、その前に、まず自分で「どのようなことが出来るか」「ふさわしいケアか」を考えた上で指導を受けてほしいと思っている。
全ての介護職が受身ではスキルアップは望めないと思う。

だから、自分の守備範囲では、
車椅子の入居者を対象とすれば、
①移動時以外は、フットレストから足を床に下ろす。
 足が少し動くなら、移動時も足を下ろしたまま歩くように声をかける。
②次に、食事は椅子に腰掛けて食べてもらう。
 座位がしっかりしていれば椅子に座れる。そのほうが安定する。
①②を毎日続けているうちに、下肢筋力がついてくる。
ベッド~車椅子の移乗動作も本人の下肢の力で介助が少なくですむ。

自分で洗顔出来ない人も、ホットタオルを渡せば顔を拭ける。
歯ブラシに歯磨き粉をつけて渡すと、磨く動作は出来る(仕上げは手伝う)。
トイレでは、紙を渡して拭いてもらう。(手を洗えばよい)
便失禁の時、ケアが大変で毎回大騒ぎしていた人も、この方法で拒否がなくなった。今でも「自分でやるよ」という。

お茶の湯飲みやカップをこまめに洗う入居者が何人かいる。
よくしたもので、決して仕事は取り合いしない。一人が洗うときは、他の人は手を出さないでいる。食洗機にかけるので、とても助かっている。
テーブルを拭く人もいる。
しかし、これらは「仕事」として押し付けては決してやってくれない。
全てが「自発行為」であり、在駐しているスタッフへの「思いやり」なのだ。


立位が取れなければ、まず自分の足で立つこと。
移乗する回数を増やしていく。
車椅子は椅子ではなく「移動手段道具」なのだ。
食べること、飲むこと、排泄すること、全てがリハビリとなる。
食堂まで歩くこと。
エレベーターで自分のフロアまで移動できること!
食事時間の認識が出来ること!時計のように30分前になると居室からでてくる人がいる。以前は時計が読めなかったのだが・・・。昼食でも夕食でも「おはようございます」。

日付はわからなくても時間は理解できる人もいる。
名前は覚えなくても、顔はわかる人。
日付も時間も曖昧だが、名前と顔が判る人。
今の今話した内容は忘れるのに、部屋は間違えない人。
長谷川式認知症スケール、7~8点~計測できない人でも、部屋もわかるしエレベーター移動も出来る。

その人その人に合わせたリハビリがある。


地方から受け入れ。
痴呆には資産があっても入居できる施設のベッド数が足りなくて待機だそうです。
友達が嘆いていた。
「今の日本は、お金がないとよいケアは受けられない。」
「介護職の地位が低すぎる。」
友人である私が介護現場にいるので、少し身近に考えてくれる。
誰もが介護は避けて通れなくなる。
逃げ場を失う介護者が出ないように、社会全体で対処すべきだろう。
介護は、するほうもされる方も「自己責任」ではない。

施設版「おくりびと」

2009-04-26 01:17:28 | Weblog
その人と家族の「やりたいことをする」「行きたいところへ行く」などを実現するケアを行うようにしている。
ターミナルケアを行っているので、家族とともに最後に立ち会うことになる。

施設のターミナルケアは、自然のままに看取ることを前提にする。
この2年間で7人の方を送り、3人が病院で、4人は施設で看取った。
満床35人の施設では看取りが多いほうだろう。
その4人とも、私が最後を看取ることになった。
これは偶然だが、ご縁なのだと思う。

24日に「早く戻りたい」と退院して大喜びだった方が、あっけなく亡くなった。
退院が決まってから、嬉しくて興奮していたと家族が言う。
退院当日も笑顔で、はっきり判る発語で喋りっぱなしだった。
この方にしては今までなかったこと。
昼食・夕食とも、しっかり食べたという。
「みんなにビールを」
「ご馳走して・・・」
ジャア、一緒に食べましょう。というと自分はいらないと首を振る。
若いときから人にふるまうのが大好きだったと家族が言う。
「昔に戻ったのね。」
しまいには「饅頭を買ってこい」ということになったらしく、たくさん差し入れを頂いた。

翌日午後、出勤し、顔を見に行くと、
しきりに何か話しかけ、手を伸ばして私の手を握る。
残念ながら声がでなくて何を話したかったのか聞き取れなかった。
「後でまた来ますね。」と、申し送りに出るため離れる。
その1時間後、
「危ないです!」とピッチに連絡が。
すぐ階段を降りていくと、すでに下顎呼吸が始まっていた。

受診付き添いで行った時に心肺停止になったときは、一緒に行っていた家族は動転して体が震えておられるほどだったが、今回は、そのとき一度生還しておられるし、ある程度覚悟がついていたらしく、しっかりなさっていた。

「おくりびと」は見ていないが、私たちは死後の看取りまで行う。
医師の死亡確認が済むと、身体を清拭し、家族が希望の衣装を着せる。
化粧をして血色をよくし、義歯があれば義歯も入れる。
旅立ちの準備まで私たちの手で行っている。
中には一緒に化粧を施していただく家族もいる。
今日は、家族は参加せず私たちだけで行った。
葬儀社の手配もするが、これらのことは葬儀社には任せることはしない。
お世話させていただいた方への私たちの思いが籠められる。

この方の最期の衣装は、クリーム色のシャツに濃紺の三つ揃いのスーツ、アスコットタイというダンデイなスタイルだった。

いろいろ話しかけながら着替えを行う。
全て終わると汗びっしょりになる。

「お疲れ様でした、ゆっくりお休みください。ありがとうございました。」

日帰り出張

2009-04-24 23:08:37 | Weblog
交通が便利になると、仕事はハードになるよねえ。
事前面談に宮城県下まで出かけた。

「県下」なので、仙台平野のまっただなか(?)なんだろう。
山が遠くて、平野なんだというのがよくわかる。
同行したナース「チャリなら気持ちよさソー!」
駅を降りる人の姿も少なく、駅の周囲にも人影はなし!
日々、雑踏の中の通勤をしている身には、なんともうらやましい空気の美味しさ。
ホント、空気の味が違うんですよ!

タクシーに乗ること20分。4000円弱の料金。
都内のタクシー料金より60円安い。
タクシーは自動で開けてくれるものと決めていた私。
料金を払い終わっても、開かない「?」
手動!自分で開けないといけなかったのね!(笑い)

ソー言えば、昔々、ローカル線で、
電車のドアは自動と決めて、開くのを待っていたが、手動ドアだった!(笑い)
という地元の人に笑われた思い出があったっけ。

何事も「思い込み」はダメ。

事前情報で得ていたのとは大違いで、コミュニケーション良好の92歳。
ドウ見ても憎めない可愛らしい方。
家族とも親しみを持てる印象だったので一安心。
長距離の移動に、何とかスタッフを迎えに出せるように出来た。
家族だけでお連れするのは負担が大きすぎる。

こちらとしては連休明けに受け入れたかったが、病院側は今月末までに出したい。
退院許可がでれば、そう長くは置いてくれないのが最近の病院。
宮城県下の方が、なぜこちらまで遠距離を無理してくるかといえば、
「入居できる施設がない」からだ。
地方には、有料老人ホームでさえ、待機だそうだ。
地方に施設が少なすぎる。
在宅では介護できない家族も多いと思うが、何を犠牲にして介護をしているのだろうか?矛盾を感じる。

この方の移送費用は、16万である。
お金がないと長生きは出来ない。


先日、受診に付き添っていて心肺停止になった方が退院してこられた。
九死に一生である!
付き添っていた私のおかげだと、家族からずいぶん感謝していただいているが、その方の生きる気力だろう。
「お帰りなさい!」と居室へ行くと、ご本人、やたらテンションが高くて、
「みんなにビールを買ってきて!」
「ご馳走を用意して!食べてもらう!」
盛んに回らない口で話す。
最後には、「お饅頭を買ってこい。」といったとかで、家族が早速持ってこられた。

夕食時間になっても興奮は収まっておらず、再び顔を見に行った私の手を握って、しきりに何か訴えるが、疲れてきていたので言葉が聞き取れなくなっていた。
あまり興奮されると、明日からが気になる。

今後、何が起きても救急搬送はしない、と決まった方である。
一言でも多くおしゃべりが出来、今日のような笑顔が見られるように一日一日を過ごしていただきたい。
そして、大好きなビールも飲んでいただきたい。
但し、トロミつきなのでビールゼリーだけど。
それでもいいじゃない。乾杯!

新たな受け入れ

2009-04-21 00:10:27 | Weblog
昨年11月から、なくなった方が6人、3月に入院が2人あり、1フロアが開店休業状態であったが、2人とも退院が決まり、新たに受け入れが2人あり、この後も続く見込みである。

年末から、スタッフが何人か退社したため受け入れを見合わせていたという事情もある。

勤務先は、比較的近隣の方の入居が多いが、中には地方から親をお連れになるケースもある。
地元に他の兄弟がいるにもかかわらず、どうも娘の手元に引き取るようになっているのが現実。これは近場の方でも同じで、身元引受人は息子でも、実際に訪問して私たちと関わるのは娘か嫁だ。(息子しかいない場合もあるが)
そして、ロウロウ介護してきた、妻。
介護の担い手は、圧倒的に女性なのだ。施設入居しても大して変わりはない。
今の高齢者の子供世代は、女性は専業主婦が多いので仕方ないかもしれないが、これから先はどうなるのだろう?

新たな顔が増えると、これまでの均衡が波立ってくる。
特に周辺への影響が大きいのは暴言の見られる男性入居者だ。
女性たちは何をされるかわからない不安で精神的に大きな影響を受ける。
「取られ妄想がエスカレートする」
「入居者同士の対立が表面化する」

一見、全く関係がないように見えるが、新たな入居者による環境変化が多大に影響しているのだ。
まるで「波紋」である。
自分以外の存在は、全て「環境」である証明。

人間の感覚というのは凄いなあ、と感心しているのが、それまで帰宅願望でしょっちゅう玄関口まで徘徊していた女性が、ズンと徘徊の回数が激減したのだ。
新入居の男性が玄関付近に陣取っているのを本能的に察しているようだ。
この男性、いらついているときは他の入居者に怒鳴るし、暴力的になる。(不思議とスタッフにはないー利害関係がわかってる?)徘徊女性とぶつかると危ないなあ、と思っていたのだが、これが危険予知ということなのか?

家族の見る「その人」と、施設で暮らす「その人」、つまり他人の目で見る「その人」は異なる。いや、家族の中で暮らす、他人の中で暮らす(共同生活)と言い換えてもよい。
まるで性格が違うのだ。
「とても遠慮深い性格」「いや、ごくフツー」「意思ははっきりしている」という具合。

遠方からの受け入れもある。
今週、出張扱いで面談にいく事になった。但し、日帰り・・・。

ニューヨークへ行きましょう!

2009-04-18 16:48:50 | Weblog
誘い言葉の一つ「ニューヨークへ行きましょう!」
ええ、もちろん海を越えて、じゃなく、ついそこの「浴室」。

なぜか認知症が中度になると、入浴を拒む人が増えてくる。
「家で入るからいいよ」(帰宅願望の時)
「毎日入ってるからいいよ」(毎日=10日前?)
「明日かえるから・・・」(帰宅願望)
「こんな時間に入ったら、風邪引いちゃう!」(ごもっともだけど、夜は入浴できない)

入浴拒否(あえて介護用語を書きます)する人は、着替えや清拭にも拒否があるので清潔管理面から言うと、まことに困った存在なのだ。
しかし、内心私は開き直って(別に生死に影響することではなし!)なんて思うこともある。
ただ、放っておいてよいか、というとそれは違う。
努力しても、どうしても入浴していただけないのと、「あ、はいらない?仕方ないじゃない。1人介助が減って楽できた。」と軽く見過ごすのとは大違い。

入浴は、浴室までの誘導がどのように行われるかが影響する。
その人の性格や理解力によっては、直接介助のスタッフだけではダメで(普通と違う格好なのだ)外にいるスタッフがうまく乗らせることも必要なのだ。
私も、このところ2回入浴介助できなかった人がいる。
外にいたスタッフは、強引(と自分が思われる)なケアに拒否的姿勢を持つスタッフだった。(そんなに無理にお風呂へ入れなくてもいいじゃない!)顔が、そういっている。(笑い)
そういいながら、2週間。
このCさんは入浴をしないままである。


介護拒否をする入居者は少なからずある。
拒否されたままでよいのか?というと、決してそうではない。
拒否されたまま=何もしていない。
つまり「放っておいた」と同じ。

スタッフによって(在宅介護出身のスタッフに多いが)、叫ばれたり逃げられたり(あるんです!)、そこまでいかなくても嫌がられたりすると、自分が嫌われるのを恐れてケア介入をしなくなることがある。

私が勤務するのは「老人ホームという施設」。
ケアするのは家族ではない。スタッフだ。
どうしても動かない(手を出さない)スタッフが見られるとき、
「何もできないというのは、何もしないと同じ。それはプロではない。毎日傍にいるのは家族じゃなく私たちスタッフ。その私たちがケアできないと言うのなら、いったい誰がするの!」と話すが、まだ理解してくれてはいない。

入居者は敏感にスタッフの動きを察する。
というか、スタッフの心理の鏡である。
そのフロアにどのスタッフがいるか?で、フロアの空気が微妙に異なるもの。
帰宅願望で落ち着かなくなる入居者の動きが活発になるのは、スタッフによっても変化する。
今日はタイヘンだった!という日に誰が勤務しているか?
たいてい同じスタッフである。
本人の自覚がないのが・・・。

いま、ニュウヨウク飛行を好まない方が3人。
私の担当フロアには、好みすぎで1時間も飛行している方も3人。
脱衣室まで行って、も、戻るという強豪もいる。(笑い)
一度、浴室ロックしたら、なんとロックをはずして逃げてしまった!

認知症と侮るなかれ!
鍵も開けるし、エレベーターボタンも押せる。
脳は、ちゃんと学習能力を秘めているんです!

さて、明日は?ニューヨークへ飛べるか!?