歌う介護士

看取りをしたご入居者から「あなたの声は癒される」と。お一人一人を思い浮かべながら、ずっと歌い続けています。

この世界は私のもの!

2010-06-17 23:03:17 | Weblog
今日、バスに乗った
金髪のかわいい少女に出会った
うらやましいほど、生き生きしていた
あんなふうに綺麗になりたかった

そのとき、急に少女が立ち上がった
足を引きずり、通路を歩いていく
片足を欠き、松葉杖をつき、
少女は私のそばを通り過ぎた
ほほえみを忘れることなく

おお、神よ、女々しい私をお許しください
私には二本とも足があり、この世界は私のもの!

それから、私はお菓子を買おうと立ちどまった
売り子の少年はとても凛々としていた
話をしたあと、彼は言った
「あなたのような人と話せて光栄です
  このとおり、僕は目が見えないのです。」

おお、神よ、女々しい私をお許しください
私には目がふたつともあり、この世界は私のもの!

とある通りを歩いていくと、
青い瞳をした子供が立っていた

ほかの子供が遊んでいるのを見ていた
その子は途方にくれているようだった
しばし立ちどまり、話しかけてみた
「ねえ君、なぜいっしょに遊ばないの?」
その子は無言で前を見ていた
そうか、この子は耳が聞こえないのか

おお、神よ、女々しい私をお許しください
私には耳がふたつともあり、この世界は私のもの!

行きたいところまで歩ける足があり、
知りたいことを聴く耳があり、
輝く夕焼けを見る目がある
神は、女々しい私をお許しくださる
私はほんとうに恵まれている。
この世界は私のもの!

       梅田達夫訳詩(作者不詳、原文は英語)


1991年、54歳でアルツハイマー病と診断され、58歳の時症状を認識し始めてから手記として「私の家はどこですか?(アルツハイマーの終らない旅)」を出版した、ラリー・ローズ氏の著書の中に記載されていた。
邦訳は1998年なので、クリステイン・ボーデン氏の「私は誰になっていくの?」よりも5年早い。

この詩をローズ氏が思い浮かべたのは、心無い人の言葉で傷つけられたときだった。
人は、そこにいる人を見ているが、表面だけである。
介護に関わる方は、谷川俊太郎氏の「わたし」と言う詩をご存知ではないかと思う。
いろんな人が見た「わたし」
いろんな立場の「わたし」を教えてくれる詩である。

「吾知足」
禅の教えだが、私はこの言葉が好きだ。

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