ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

恋におちて -Fall in love-

2009年06月08日 | 名曲


 1980年代に一世を風靡したドラマに「金曜日の妻たちへ」がありましたよね。ぼくはテレビをほとんど観ないのですが、このドラマが「金妻現象」を起こして人気を得ていることは知ってました。たしか、このドラマがきっかけで「浮気」が「不倫」などという婉曲な言葉に言い換えられるようになったんではなかったでしょうか。


 ドラマはパートⅢまであって、パートⅠの主題歌はピーター・ポール&マリーの「風に吹かれて」が使われたり、パートⅡの挿入歌にはバンバンの「いちご白書をもう一度」が使われたりしてたんですよね。そしてパートⅢの主題歌がこの「恋に落ちて」でした。テレビを観ないまでも、この曲は有線放送やラジオでしょっちゅうオンエアされていたし、演奏したことも多かったので、自然に覚えてしまいました。この曲をカラオケの十八番にしていた人も多かったように思いますね。


 ピアノ主体の典型的なバラードで、ミディアム・スローの8ビートです。この手の曲って、たいがいオーバー・プロデュース気味にストリングスやシンセサイザーが施されがちなんですが、この曲のレコードでのアレンジは必要最少限、という感じ。おそらくは「不倫」相手へのつのる想いを託した歌なんでしょうが、そのさりげないアレンジがドロドロになりがちな雰囲気をうまく上品に昇華させているような気がします。
 ドラムやベースもベーシックなパターンに終始していますが、これが却って曲を落ち着かせている効果があると思います。
 ピアノによるイントロもとても印象的ですよね。ぼくも弾いてみたくなって、楽譜を買いましたよ。


     


 小林明子さんは、大学時代はハード・ロック・バンドでキーボードを担当していました。大学卒業後、東大教授の秘書を経て音楽制作会社に勤務することになるのですが、このころブレッド&バターへの楽曲提供などをきっかけにして本格的な音楽活動を開始しました。 
 「恋におちて」は、1984年に書かれたものですが、この曲を歌う予定だった歌手が引退してしまいます。その後偶然ドラマ「金曜日の妻たちへ」の関係者がこの曲を聴いて気に入りました。そして替わりの歌手を探していたのですが、結局小林さん自身が歌っていたデモテープの歌声がいい、ということになり、小林さんの歌手デビューとなったんだそうです。


 もともと歌い手としてのトレーニングを積んでいたのかどうかは寡聞にして知らないのですが、柔らかで心地よい、安定した歌声ですよね。ほどよい力の抜け具合もよく、時折り聴かせるファルセットもきれいです。
 この曲は抑えても抑えてもこみ上げてくる想いを描いた歌だと思うんですけれど、気持ちの高ぶりを抑えた、しんみりと落ち着いた歌いぶりに好感が持てます。
 オリコンでも通算7週1位を獲得してますし、年間チャートでも85年は3位、86年は6位にランクされています。また、85年のレコード大賞では新人賞も受賞しました。


 小林さんはこの曲の大ブレイクをきっかけにシンガー・ソング・ライターとして活躍しました。でものちにプログレッシヴ・ロックのフィールドで活動したい、という希望で渡英したんですよね。元JAPANのメンバーなんかともコラボしたりしていたようです。


 「恋におちて」はJ-POP史上に残る名曲だと思います。近年では徳永英明さんが自己のアルバムでカヴァーして話題になりました。他にも河村隆一さんとか、岩崎宏美さんなんかもカヴァーして愛唱しているようです。


     
     小林明子『FALL IN LOVE』



[歌 詞]


恋におちて -Fall in love-
  ■歌
    小林明子
  ■シングル・リリース
    1985年8月31日
  ■作詞
    湯川れい子(英語部分は山口美江 クレジットなし) 
  ■作曲
    小林明子
  ■編曲
    萩田光雄
  ■チャート最高位
    1985年 週間チャート オリコン1位
    1985年度年間チャート オリコン3位
    1986年度年間チャート オリコン6位
  ■収録アルバム
    FALL IN LOVE
    


コメント (26)
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