【Live Information】
今年の9月は、土曜日の19日から23日の秋分の日まで、5連休でした。
5日間とも気持ちのよい快晴で、イベント目白押しの各地とも大賑わいだったようです。
ちかごろ、安倍政権の方針に危惧を抱く多くの人々が、デモなどで積極的に意思表示をしたり、ネットなどを使って情報を収集・発信したりと、あらためて平和への強い思いを新たにする日々が続いています。
戦争が起きることは絶対に避けなければならないのは言うまでもないことです。
ほとんどの方々は、平和であることを大事に思っていることと思います。
そんな中、9月19日から20日にかけて行われた「第1回 北木島ピース・フェスティバル」で演奏してまいりました。
北木島は、岡山県の最西部にある笠岡市の南約15kmに位置する笠岡諸島にあります。
かつては良質の花崗岩(=北木石)が採れることで知られた北木島ですが、近年は過疎化が進んでいて、人口も1100人あまり。
しかし、なんとか島を興していこうと島に根を張って奮闘している方々もおられます。
「北木島ピース・フェスティバル」は、そんな方々の手によって企画、開催されました。
このイベントは、「非核平和宣言都市」である笠岡市から世界平和を発信するとともに、荒れ果ててしまった島の楠海水浴場の再生を目指したものです。
各地から参加したいろんなミュージシャンやパフォーマーが、島民とともに一夜を過ごし、飲み、語り合いました。
ぼくは、大阪から参加したジャズ・バンド「トルネード・ボンバー!」のリーダーでギタリストの箕作元総(きさく・もとふさ)さんから声をかけていただき、「トルネード・ボンバー!」にベーシストとして参加させていただきました。
笠岡市の伏越港から乗ったフェリーでは、やはりフェスに参加する舞踏家の小谷野哲郎さんと一緒になり、いろいろ珍しい話を聞かせていただきました。
北木島に着くと、車で楠地区まで行きます。
海水浴場には急勾配の細道を通らねばならないのですが、楽器その他の大荷物を抱える身では通行もままなりません。
そこで、島の方の好意で漁船に荷物ごと乗せていただき、海上から楠海水浴場へ上陸します。
コントラバスを抱えて漁船に乗るなんて、生まれてはじめて。
青い海と空を間近に感じ、ワクワクしながら漁船に乗り込みました。
コントラバスを抱いて漁船へ。
楠海水浴場に上陸したのが15時半頃。
すでにステージでは演奏が行われています。
そう広くない楠海水浴場は、三方が海に囲まれています。あちこちに、各地から来た参加者のテントが張られていて、砂浜では子供たちが遊んでいます。
島の方々が、獲れたての海の幸を焼いてくれています。
空はどこまでも青く、海との境目がわからないくらい。
「トルネード・ボンバー!」のステージ。
浜辺にいたヤギと、コントラバスで対話(^^;)
「トルネード・ボンバー!」の出番は23時くらいですが、地元から参加しているバンド「おきしとしん」に急遽加わることになり、薄暮のステージに上がりました。
「おきしとしん」とともに。
フェスの主催者、クニさんも「おきしとしん」のメンバー。
日が落ち、あたりが真っ暗になります。
海の向こうの、ほのかに見える民家らしい灯りが郷愁を誘います。
波打ち際に行くと、かすかに聞こえるステージの音楽と、砂浜を洗う波の音だけ。
真っ暗な砂浜にひとり座っている女性がどこかに電話していました。大事なひとと話していたのかな。
ステージでは、「ぬくだま」「別所誠洋」「SUMI MADZITATEGURU」「中村好伸」「The Famili」「藤條虫丸」「岩本象一」「櫛田寒平」「DJ ROM-PIN」など、さまざまな演者の演奏、パフォーマンスが続きます。
MCでは、平和を訴えるメッセージも聞かれましたが、押しつけがましいものではありませんでした。どなたも淡々と自分の思いを等身大に語っていたように思えました。
出演者には夜食の親子丼がふるまわれました。
22時すぎからは、フェリーで一緒になった小谷野さんのパフォーマンスです。
小谷野さんは、舞台を砂浜の焚火のそばに移し、ユニークなひとり芝居を見せてくれました。
その後、「トルネード・ボンバー!」もステージの上がり、闇の中での演奏を終えました。
すべてのプログラムが終わったのは、25時半。
砂浜を包む、優しい一体感と、心地よい疲れ。
あとは、テントに中で眠るだけです。
演奏は夜中の1時半まで続きました。
深夜4時頃、ふと目覚めました。
外に出てみると、息を呑むような満天の星空。
海からはただ波の音。
時折り聞こえる、語り合う声。
ただ存在するだけのこの島こそ、平和の象徴なんじゃないか、そんな気がしました。
安倍政権擁護派と「戦争反対」を唱える人々のあいだでの口汚い罵り合いには、実はうんざりしています。
平和を語る同じ口の一方から発せられる罵詈雑言、ここからは平和は生まれないんじゃないかな。
声高に平和を押しつけなくても、ここにはすでに平和がある、そんな気持ちでした。
いろんな表現方法があります。どれも正解だと思います。でもぼくは、この深夜の砂浜で感じた、「共に生きる」平和に、静かな感動を覚えました。
翌朝は、スタッフ、演者、参加者すべてが力を合わせての撤収作業。
ぼくは、昼から岡山市内で演奏するため、9時のフェリーで笠岡市に戻りましたが、他のみんなは白石島に場所を移して打ち上げを楽しんだようです。
島の朝日。
朝の浜辺。
願わくは来年、第2回のピース・フェスティバルが行われますように。
そしてその時は、ぜひまたあの星空と深夜の波の音を体感してみたいと思います。
帰りの船上より。