ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

ヴィーナス(Venus)

2007年04月06日 | 名曲

 スターズ・オンの「ショッキング・ビートルズ45」のイントロに使われて1981年にリバイバル・ヒットしたのが、ショッキング・ブルーの「ヴィーナス」です。1986年にはバナナラマがこの曲をリメイクして全米1位の大ヒットを記録しました。日本でも黒沢ひろみや荻野目洋子、長山洋子らのカヴァーがヒットしましたね。
 最近のジレットのCMでも、倖田來未の歌でこの曲が使われています。


 ショッキング・ブルーはオランダで結成されたバンドです。1960年代中頃にオランダ国内で人気のあったモーションズのギタリストだったロビー・ファン・レーヴェンが中心となり、1967年に結成されました。
 デビュー・シングル「ラヴ・イズ・イン・ジ・エアー」は不発に終わりましたが、セカンド・シングル「ルーシー・ブラウン・イズ・バック・イン・タウン」はオランダのチャートで21位に上昇するスマッシュ・ヒットを記録しました。しかしバンドは、成功までにはまだ至っていない状況でした。





 そのころ、レーヴェンたちはマネージャーや音楽出版社の連中と共にあるパーティーに参加しました。そこでひとりの女性歌手の歌を聴いたのですが、彼らはその歌手のパワフルな声とエキゾチックな容貌にすっかり参ってしまいました。そしてマネージャーが、「ショッキング・ブルーのヴォーカルにならないか?」と彼女を誘いました。その歌手こそがマリスカ・ヴェレスだったのです。
 ショッキング・ブルーはマリスカの参加によって新たなスタートを切ることになりました。


 マリスカを加えたショッキング・ブルーは、「センド・ミー・ア・ポストカード」(オランダ10位)と「ロング・アンド・ロンサム・ロード」オランダ17位)の2枚のシングルをリリースし、いずれもスマッシュ・ヒットさせます。そしてその次にリリースした曲が「ヴィーナス」でした。
 「ヴィーナス」はオランダで3位にまで上昇しただけでなく、ヨーロッパ各国のチャートを席巻し、1970年2月7日付でついに全米1位を記録しました。最終的には、ベルギー、フランス、スイス、スペイン、イタリア、ニュージーランド、カナダ、南アフリカ、アメリカの9ヵ国でチャート1位を獲得するという世界的大ヒットを記録したのです。


 「ヴィーナス」は、シンプルなリフをベースとした8ビートの曲です。軽快なギターのカッティングは、ザ・フーの「ピンボールの魔術師」を思い起こさせます。
 マリスカのヴォーカルもパワフルで、エッジの利いた8ビートに乗ってロックしています。作曲したレーヴェンの話によると、音関係はすぐにできあがったものの、作詞にとても苦労したそうですが、歌詞の内容はマリスカの持つ雰囲気とうまくマッチしていますね。





 「ヴィーナス」の大ヒットの後、ショッキング・ブルーはオランダ国内では世界的アーティストとして知られるようになりました。その後も「マイティ・ジョー」と「悲しき鉄道員」をオランダで1位に送り込むなど快進撃を続けるのですが、アメリカでは「ヴィーナス」以外にはTop40に曲を送り込むことができませんでした。
 レーヴェンはアメリカで再び成功しようと焦るようになりますが、それがグループ内に不穏な空気をもたらすことになりました。そして地元オランダではまだ売れていると言うのにメンバー間の軋轢が日ごとに大きくなっていったのです。
 結局彼らは1974年に解散を選択してしまいました。


 ショッキング・ブルーは1971年に来日しています。
 その時前座を務めたのはあの鈴木ヒロミツさんがヴォーカルだったモップス。ショッキング・ブルーの演奏を聴いたモップスのメンバーは、「あんまりうまくないじゃないか」と自信を持った、という話が残っています。
 またオランダの音楽雑誌のインタビューに対してロビーは「日本人は金を持っている猿にすぎない」、マリスカは「猿が住む野蛮な土地でも人気があることをアピールしたかった」と発言しており、ふたりは差別主義者として知られることになってしまったのは残念なことです。


 そのマリスカは、2006年12月にガンのため59歳で亡くなっています。






[歌 詞]
[大 意]
山の頂上に君臨する女神は
銀色の炎のように燃えていた
美しさと愛の頂点
ヴィーナスが彼女の名前

   彼女はそんな魅力的な女
   そうよベイビー、彼女は最高
   さあ、私があなたのヴィーナス
   あなたの欲望に火をつける女

彼女の武器はそのクリスタルのように透き通った瞳
そのまなざしで、どんな男も狂わせる
闇夜のような黒いドレスを身につけて
誰にもない魅力をもっていた



ヴィーナス/Venus
  ■歌・演奏
    ショッキング・ブルー/Shocking Blue
  ■シングル・リリース
    1969年7月
  ■作詞・作曲
    ロビー・ファン・レーヴェン/Robbie van Leeuwen
  ■プロデュース
    ロビー・ファン・レーヴェン、ジェリー・ロス/Robbie van Leeuwen, Jerry Ross
  ■収録アルバム(CD)
    アット・ホーム/At Home
  ■録音メンバー
  ☆ショッキング・ブルー
    マリスカ・ヴェレス/Mariska Veres (vocal)
    ロビー・ファン・レーヴェン/Robbie van Leeuwen (guitar)
    クラーシェ・ファン・ダー・ヴァル/Klaasje van der Wal (bass)
    コーネリアス・ファン・ダー・ビーク/Cornelius van der Beek (drums)
  ★ゲスト
    Cees Schrama (electric-piano)
  ■チャート最高位
    1970年週間チャート  アメリカ(ビルボード)1位、イギリス8位、日本(オリコン)2位、オランダ3位
    1970年年間チャート  アメリカ(ビルボード)33位、オランダ28位



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« さよならバードランド | トップ | ショーシャンクの空に (The... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

名曲」カテゴリの最新記事