【Live Information】
「ニュー・ミュージック」という言葉、あるいは音楽シーンにおけるカテゴリーが定着したのは1970年代半ば頃だと記憶しています。
従来のフォークやロックから政治色・生活臭・メッセージ性・アンダーグラウンド感が薄まったものが「ニュー・ミュージックですが、歌詞やファッションなどの面では歌謡曲へ少し近づいた感もありました。
それでも、自作(あるいはフォーク、ロック畑のコンポーザーへの依頼)曲を自分で演奏するスタイルが中心だったり、発言が比較的自己主張の強いものだったりと、歌謡曲畑のミュージシャンよりもオリジナリティやキャラクターがはっきりしていたので、「歌謡曲」と「ニュー・ミュージック」の間にはぼくなりの境界線がありました。
そんな時期に、ニュー・ミュージック界の新星として現れたのが松原みきでした。
1970年代中盤以降、ニュー・ミュージック系ミュージシャンが雨後の筍のように現れます。
当時は、ざっと思い返すと、1976年に尾崎亜美、1977年に渡辺真知子、石黒ケイ、1978年に八神純子、竹内まりや、水越けいこ、越美晴、上田知華、杏里、1979年に門あさ美、須藤薫、石川優子、久保田早紀、1980年にEPOなど、きらびやかで多彩な面々がデビューし、日本のポピュラー音楽ッシーンを活気づけていました。
松原みきのデビューは1979年。「日本を代表するジャズ・ピアニスト世良譲氏に見出された期待のシンガー」というコメントがメディアのあちこちで見られていました。
「真夜中のドア」は、松原みきのデビュー曲です。洗練された都会的なサウンド作りが指向されています。
おりしもロックとジャズの融合から生まれた「クロスオーヴァー」あるいは「フュージョン」、「ソフト&メロウ」「AOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)」などの、いわゆる「オトナ」なロックなどが当時のポピュラー音楽シーンに広まっていて、その影響を大きく受けているように思います。
松原みき『POCKET PARK』
リチャード・ティーを思わせるエレクトリック・ピアノ。
間奏の、なんとも都会的なサックス・ソロ。
小気味のよい16ビートを刻むドラムやギターのカッティング。
その16ビートにメリハリを付けてグルーヴしまくるベース。とくにエンディング前のギター・ソロを支えるエキサイティングなフレーズの数々には脱帽するしかない感じです。
これらが当時の先端をゆくサウンドを創りあげています。いわゆる「シティ・ポップ」の王道ですね。
「大人」というより、「大人になりかけている」感じがする松原みきの歌声は、その都会的サウンドによくマッチしています。
明るさのあるボーカルなんですが、ぼくとしては、太陽の陽射しの明るさというよりも、夜の都会の街の明るさ、というイメージを抱いています。
発音が明瞭で、よく歌詞が伝わってくるし、臆さず伸び伸び歌っているところも好きでしたね。
エンディングのギター・ソロは、当時渡辺香津美と並んで新世代若手ギタリストの筆頭と目されていた松原正樹です。今剛(guitar)、斎藤ノブ(percussion)、そしてこの曲にも参加している林立夫らと「パラシュート」を組んでいたことでも知られている名手です。
この松原氏のギターが、実に新鮮。伸びやかなトーン、流麗でドライヴするフレーズ、エキサイティングな流れ、ロックな豪快さとジャジーなフィーリング。どこを取ってもカッコよく、カセット・テープに録音したこの曲のエンディングだけを何度も繰り返し聴いたものです。
「真夜中のドア」は、1980年にスマッシュ・ヒット。その年秋の学園祭には、早慶戦前夜祭も含め、早稲田大学学園祭など9つの学園祭に出演するなど、ちょっとした「学園祭の女王」でした。
キュートな前歯と、シャープな視線がとってもチャーミングでしたね。
1990年代以降はすっかり「松原みき」の名を聞くことがなくなり、時々「真夜中のドア」を聴いては懐かしく思っていました。
あとで知ったのですが、当時は歌手活動を休止し、コンポーザーとして活動していたそうです。
久しぶりに松原みきの名を目にしたのは、新聞の訃報欄でした。
記事を目にして、寂しさのまじった残念な気持ちでいっぱいになったのを覚えています。
2004年10月7日、松原みきさんはガンのため44歳の若さで亡くなりました。
[歌 詞]
◆真夜中のドア~Stay With Me
■歌
松原みき
■シングル・リリース
1979年11月5日
■作詞
三浦徳子
■作曲・編曲
林哲司
■録音メンバー
松原正樹 (electric-guitar)
ジェイク・H・コンセプション (sax)
渋井博 (Keyboard)
後藤次利 (bass)
林立夫 (drums)
穴井忠臣 (percussion)
■週間チャート最高位
オリコン28位
■収録アルバム
POCKET PARK (1980年)
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