【Live Information】
なんとなく、なんとな~く「ムーンライト・サーファー」を聴いてみたくなりました。
歌っているのは石川セリ。
1979年にシングル・カットされています。
石川セリといえば、あの井上陽水夫人にして、シンガーの依布サラサの母です。
石川セリはポップス系のシンガーで、1970年代後半から人気を得るようになりました。
1977年に発表した陽水作の「ダンスうまく踊れない」が知られていますが、これは1982年に高樹澪のカバー・ヴァージョンが大ヒット、オリコン・チャートの3位にまで上昇しました。
そのほかにも荒井由実や南佳孝らから曲の提供を受けていますが、ぼくが一番好きな彼女の曲は、なんといっても「ムーンライト・サーファー」です。
もともとは1977年に発表したサード・アルバム「気まぐれ」に収録されていたものですが、2年後にシングル・カットされました。
作詞作曲は中村治雄。
「中村治雄」といってもピンと来ないかもしれませんが、反骨のロッカーとして知られる「PANTA」の本名だと言えば、うなずいたり驚いたりと様々な反応があるのではないでしょうか。
過激なパフォーマンスで知られた頭脳警察を率いていたPANTAとは思えないような作風ですが、どこか胸に染み入るようなセンチメンタリズムが漂っていて、そこを避けては聴けないような気がしていたんです。
曲は三部構成になっています。
キーボードによるアルペジオに導かれて曲が始まります。
バックに流れる波の音のSE。
ボサノバの雰囲気も感じられるシンプルなバラードで歌が始まります。
ボリューム・コントロールを活かしたギターのオブリガードと、抑え気味のシンセサイザーによるバッキングにとてもそそられます。
ミドルはレゲエ風。ベースの太い音色がたくましくうねっていますが、時おり遠吠えするかのような高音でのフィル・インに気持ちを高揚させられますね。
そしてサビは軽快なロックン・ロール。サーフ・ロックそのものの明るいノリで、いわゆる「テケテケ・サウンド」的なギターは潮風と白い波を感じさせてくれるんです。
だけどどこか哀愁が漂っているんです。
歌詞を読むと、思い浮かぶのは海辺でデートを重ねているふたりの姿です。
ボードから落ちた彼を見て、はしゃぎ、明るく笑う彼女。
そんな彼女を笑顔で優しくこづく彼。
歌詞の中の彼女は、失恋して、楽しかった日と海辺の記憶に浸っているのでしょうか。
でも詞を読んでいるうちに、そうではないことが分かってきます。
「星をさがすの あなたの星を」
彼は、決して戻ってくることのできない遠くに行ってしまったんですね。
わずか14字で詞の風景をガラリと変えてしまうこの表現が大好きです。
そして彼女は、涙で彼を悼むかわりに、夜の海で波に乗るのです。
きっと彼がそうしていたように、笑顔で。
ポップで温もりのあるメロディですが、月の光が映える静かな海を思わせるようなアレンジからはなんともいえない哀愁が漂ってきます。
彼女は砂浜に座り、暗い海を、いやそのもっと遠くを、かすかに微笑みながら見つめているのでしょう。
どちらかといえばマイナーな存在の曲、知る人ぞ知る曲、と言った方がいいのかもしれません。
でも石川セリの、感情を胸の奥にしまい込んだようなボーカルがこの曲の良さを引き出しているようにも思うのです。
[歌 詞]
◆ムーンライト・サーファー
■歌
石川セリ
■発表
1977年
■作詞・作曲
中村治雄
■編曲・プロデュース
矢野誠
■シングル・リリース
1979年7月
■収録アルバム
気まぐれ(1977年)
石川セリ『ムーンライト・サーファー』
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