ムール川沿いに位置する大学都市、グラーツ。
古代ローマ帝国の時代に設けられた砦がグラーツの起源で、町の語源は
スラブ語で「砦」を意味する「グラデツ」からきているそうです。
14世紀ハプスブルク家の都だったところで、ハプスブルク家の支配の下、
音楽や大学創立(1585年)など、文化の華が開きました。
イタリア・ルネッサンス風の建物に南欧の明るさを感じる旧市街は1999年
世界遺産に登録されています。

シュロスベルク(城山)と時計塔
丘の上に建つ小さな城はオスマン・トルコの侵略からも町を守り、難攻不落の城塞でしたが、
フランス・ナポレオン軍との戦争後に取り払われました。時計台は地元の人たちがナポレオン
から買ったので現存しているそうです。現在は時計台と鐘楼だけが残る公園となっています。
シュロスベルクへは急勾配の260段の階段を上るか、岩山の中のガラス張りのシュロスベルク
リフト(エレベーター)、もしくは少し離れたところにあるケーブルカーを利用して上がります。
13世紀に建てられた時計台は文字盤が直径5m以上もあり、長針は時間を、短針が
分を指しています。時計台が出来た当時は長針だけあれば用が足りていたのだが、
後に分を示す針が付け足されたためです。5年に一度塗り替えられていて、出来るだけ
冬に修繕していると現地ガイドさんの説明がありました。
時計台の横には時計台のミニチュアもありました。実際に触ってみて、どんな形状のものなの
か分かるようになっていて、眼の不自由な方向けによく考えられてあるなあと思いました。

グラーツの町全体を見渡すことができます。オレンジ色の屋根が並ぶ中に、なまこのような
宇宙船のような奇妙な形をした建物が見えます。クンストハウスと呼ばれる近代美術館です。
そして写真右下辺りにムーア川沿いの巻貝のような浮島(ガラス張りっぽい感じ)はイベント
会場のようでうす。レクリエーション、エンターテイメントなどに使われているみたいですが
人の目を引くオブジェのようでもあります。

フリードリヒ3世が1438年に築いた
王宮。15世紀、ハプスブルク家出身
の神聖ローマ皇帝フリードリヒ3世の
時にグラーツは大きく発展しました。
ハプスブルク家のお家芸と言われる
結婚政策は、この皇帝フリードリッヒ
3世によって始まったそうです。
王宮の壁やフリードリヒ3世の肖像画
などに刻まれている「AEIOU」は
フリードリヒ3世が常に口にしていた
標語で何を表しているのか残ってい
ないため、解釈が色々あるようです。
皇帝フリードリッヒ3世の息子、マキシミリアン1世が王宮を拡張し、1499年に王宮のひと隅に
ゴシック様式の二重螺旋階段を造らせました。極めてユニークで、左右に分かれた螺旋階段
が、半周回るごとに再び交わって、また分かれる設計になっています。
写真中央の緑に覆われた部分が二重螺旋階段がある塔です。王宮の主な部分は19世紀に
撤去され、現在は州知事官邸となっています。
第2次世界大戦中、工業地帯や中央駅を中心に爆撃を受け、町の建物が破壊されたようです。
旧市街は爆撃の被害から免れたようですが、誤爆や流れ弾による被害もあったと思います。
オペラ座のある辺りも激しく爆撃を受けたようです。

入口

階段を上ると

下から見上げた二重螺旋階段

写真左はグラーツ出身の皇帝フェルディナント2世の霊廟であるマウソレウム、
写真右は王宮の向かいにある大聖堂の祭壇を写したものです。
大聖堂は12世紀に建てられた教会の跡に、1438年から1462年にかけて皇帝フリードリッヒ3世
が王宮礼拝堂として、同じ時期に建てられた王宮の向かいに建造させたものです。
建設当初は王宮と教会は通路で繋がっていたそうです。司教座聖堂となっている、この大聖堂
の壁には「国三重苦図」(1485年)があります。1480年シュタイヤマルク州(グラーツは州都)を
襲った、イナゴ、オスマントルコ、ペストを描かれています。この後期ゴシックのフレスコ画は
現存する最古のグラーツ街図だそうです。

鮮やかに装飾された建物が見えます。
旧市街の目抜き通りヘレンガッセは路面電車も走っています。
通りに面したところにハウプト広場があり、写真の右手には豪華は市庁舎、後ろ向きになって
しまいましたがハプスブルク家のヨハン大公像が立っています。ヨハン大公は産業や文化の
発展に貢献した人で、皇位継承権を放棄して平民の娘アンナ・プロッフルと結婚したそうです。
そういったことでも今でも民衆に慕われているそうでう。

ハウプト広場の露店(
2012-10-15の記事)
色鮮やかな果物や野菜が目に飛び込んできます。
旅先で野菜や果物などの食材を見るのも楽しみの
一つです。スーパーマーケットを覗くのも好きです。

ハウプト広場からシュポアガッセを上がっていって、
ホーフガッセへ右折すると宮廷御用達のパン屋さん
「Edegger-Tax」が見えてきます。
ホーフベッケライ・エーディッガー・タックスは創業1569年の
老舗のパン屋さんで、私たちが訪れる少し前に銀座か日本橋
のどっちだったか忘れてしまいましたが、三越の催し物で出店
したとその時の冊子をお店の方が見せてくれました。
クッキーを2種類買いました。(
2012-10-28の記事)
お店のHP