いずれも公開当時観に行こうかどうしようか迷った映画で、ギンレイホールで
今日から上映とあって、早速行って参りました。
今年に入ってまだ13本しかまだ観ていませんが、「クレアモントホテル」は静かに
じわーっと温かい空気に包んでくれる作品で、今のところ「冬の小鳥」と1位を争う
くらいに良かったです。
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最愛の夫に先立たれ、娘から自立した生活を送る為、長期滞在型のクレアモントホテルに
やってきた老婦人サラ・パルフリー。テレビドラマ「セックス・アンド・シティ」が刺激的な娯楽と
いうホテルの住人たちの関心事は誰が訪問してくるかと掛かってくる電話。
パルフリー夫人はロンドンに住む孫デズモンドへ電話をしますが留守電で、その後も彼から
電話が掛かってくることはありませんでした。夫人のところには娘も孫も訪ねてくることはなく、
孤独な暮らしをしています。ある日、郵便局へ行った帰りにつまずいて転倒したところを
小説家志望の青年ルードヴィック・メイヤーに助けられます。孫と同じ26歳のその青年に、
孫のふりをお願いし、ホテルの住人が見ている前で一緒に食事を取ります。
お互いに詩が好きだったり、家族と折り合いが悪く孤独な生活を送っていたりと似た者同士で
気も合い、その後も夫人とルードヴィックは頻繁に会って本音を語りあうようになります。
印象に残った素敵なシーンはいくつかあるのですが、上のルードヴィックが手料理で家に
招待した場面もそのひとつです。夫と観た映画「逢びき」の思い出を話したり、またルード
ヴィックが夫人が好きな「For All I Know」をギターで弾きながら歌ったりしながら、楽しい
ひとときを過ごします。亡き夫アーサーの好きだったウィリアム・ブレイクが好きな詩人だと
いうルードヴィックを夫の若き日を重ねて懐かしんでいる様子にじーんときてしまいました。
階段で転び腰の骨を折って入院してしまったパルフリー夫人を見舞いに病院に駆けつけた
ルードヴィックが彼女の好きなワーズ・ワーズの詩をつっかえながらも諳んじてあげるシーン
も印象的でした。偶然出会って1ヶ月も一緒に過ごしていないのに肉親以上の結びつきが築かれ、
お互いの人生を大きく変えてしまう。そういう出会いってあるのかなあ、と。
ルードヴィックに扮したルパート・フレンド。どっかで観たんだけれど思い出せず
「
ヴィクトリア女王 世紀の愛」でアルバート公に扮した人でした。
2004年「
リバティーン」で映画デビューし、翌年「
プライドと偏見」に出演し、
同年「クレアモントホテル」で主役に抜擢。
「リバティーン」も「プライドと偏見」も観たんだけれど、何の役で出ていたのかなあ
。
興味はあったんだけれど見逃した「わたしの可愛い人―シェリ」にも出ていたみたいだし。
今後注目したい俳優さんです。
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「しあわせの雨傘」の原題「POTICHE」は壺。何でこんな邦題付けちゃったのかな。
まさか「シェルブールの雨傘」に引っ掛けて?
結婚してからずっと夫の言いなり、お嬢様育ちの専業主婦のスザンヌ。
「お飾りの妻」の生活を送っていた彼女が心臓発作になった夫の代わりに父から受け継いだ
雨傘工場を経営することになり、これを契機に周りに自分の価値を認めさせ、自分の居場所を
勝ち取って行く。スザンヌの持ち前の度胸と明るさは魅力的だし、そんな女性を応援する映画
と思いきや・・・。これはフランソワ・オゾン監督の作品であり、フランス映画。
娘からは「飾り壷」と呼ばれ、「(窮屈な生活を送っている)ママのようになりたくない」と
言われてしまうスザンヌですが、彼女はただの観賞用の壺なんかではなく、自由奔放で実は
したたかに人生を楽しんでいて、単に家族が知らないだけ。というちょっと毒のあるコメディでした。
「クレアモントホテル」のパルフリー夫人はホテルに滞在している男性からプロポーズを
受けた際に「生まれてから誰からの娘、誰かの妻、誰かのお母さんで来たけれど、残りの
人生は私のために過ごしたい」と言って断ります。印象的な場面でした。
かたやスザンヌは周りが自分のことをどう言おうとお構いなし。言いたい人には言わして
おけば、って。で自分は自由気ままに人生を謳歌している。
スザンヌの強さを見習って、自分のやりたいように突き進めればなあとちょっと惹かれました。