『ポルタティーフオルガン』とは「ポータブルなオルガン」という意味で、中世ヨーロッパの11世紀頃から作られた小型のパイプオルガンです。
新宿パークタワーリビングデザインOZONEにある『TOKYO MOKUNAVI』のイベントで東京の木を使った楽器を作るというお題を頂きました。
東京にも森はあるのでいろんな樹種の木はあると思いますが、今回のお話で使える材は杉と檜だけということです。
最初はギターは作れないかとのことでしたが、弦の張力に耐えるネックは針葉樹では作れないと思い、ウクレレとポルタティーフオルガンとカホンを作ることにしました。
3つの各楽器ごとに分けてブログを書きます。
材を仕入れるための材木店を3店紹介して頂き、ウェブサイトを見てからお電話をしてお話をし、日の出町の沖倉製材所を訪ねました。

広い敷地の奥にある天井の高い倉庫に長い材が立てて保管されています。すぐに使える乾燥材を買いに来る人に小売りをするために豊富に用意されている様です。その倉庫の中で自由に材木を選ばせてもらえました。

持ち帰り並べてみました。
柾目の杉材はウクレレのボディーとオルガンのパイプとカホンの打面、少し厚めの板目の杉はカホンの箱、檜は緻密な細工をする必要があるオルガンの心臓部と強度のいるウクレレのネック、とあらかじめ用途別に構想を練っておき選び出した材達です。

オルガンはまずパイプ作りから始めます。これは「核」とか「ケルン」という歌口の部品です。

パイプは音の高さに適した長さと太さが必要で、厳密には全てのパイプのサイズを作るべきですが、手間が大変になるので今回は3種類の太さでつくります。

3種類の太さのパイプです。必要な数より多めに作り、鳴りの良いものを採用します。

オルガンの心臓部と言えるサウンドボードの組み立て前の写真です。
鍵盤を押すとその鍵盤に割り当てたパイプが鳴る仕組みです。何枚かの板に溝を掘って接着することでその空気の経路を作ります。1番下が鍵盤を押すと開く弁の穴、2枚目がその穴からパイプの立つ位置まで空気を導くトンネル、上の2枚がパイプが立つ穴の板となります。

これは「パレット」と呼ばれる鍵盤の下に付く弁です。鍵盤を押すとピンが押されて開く仕組みで、皮のパッキンが接着してあります。

接着したサウンドボードに「パレット」を付けました。これは裏返しにして見てるアングルになります。パレットを抑えるバネは自分で曲げたピアノ線です。

サウンドボードを筐体に付けてみました。メンテナン性を鑑みて、サウンドボードは取り外せるようになっています。

鍵盤です。オルガンでは「マニュアル」と呼ぶみたい。手鍵盤という意味ですね。
ローズウッドのナチュラルキー、象牙などの白いシャープキーの物をよく見ますが、今回のお題は杉檜限定なので、檜の白と杉の赤身の赤でコントラストを付けてます。
ちなみに鍵盤は1枚の板からその形を切り出して作らないと綺麗に揃った鍵盤にはならないようです。

『ベロー』、「フイゴ」を作ります。フイゴを作るのには柔らかくて薄いラムスキンを使います。
このオルガンはフイゴで空気を送りパイプの笛を鍵盤で演奏するという仕組みです。

これはフイゴの外骨ともいえる部品です。これに革を貼ってフイゴを作ります。

このオルガンを作るのにあたり、30年ぶりに膠を使いました。水に溶かした膠を湯煎して塗ります。湯煎はミルクウォーマーで。

フイゴを組みました。
あらためて使ってみて、膠は優秀な接着剤だと再認識しました

鍵盤を付けてパイプを立てるとオルガンぽくなりました、嬉しい。
さて実は、パイプをオルガン本体に付けてフイゴで鳴らしたところ、ちゃんと音が鳴りません。息を吹き込むとちゃんと鳴ります。今回作ったフイゴの空気圧とパイプとの相性があるらしいです。
土壇場の試行錯誤の末、予定になかった「閉管パイプ」に変更しました。
パイプは「開管」と「閉管」があります。パイプの歌口の反対が開いているのが開管で、そこを閉じると1オクターブ下の音が出ます。鳴らすための空気も少なくてすみ、やや籠もった音になります。その閉管で試したところ、発音がよくフイゴの空気も長持ちし1オクターブ下の落ち着いた音になり、全ての点で結果オーライとなりました。開管パイプにパッキンのようなものを詰めて塞ぐと閉管になり、そのパッキンを抜き差ししてチューニングが出来ます。


だいぶはしょりましたが完成です。
いろいろ学びました。
妻による演奏をご紹介します。
Estanpie
Magnificat
BWV1006のメヌエット
1曲目は現存する最古の鍵盤楽器譜面です。このオルガンが奏されていた時代に合った曲を選びました。
2曲目は15世紀のドイツの曲。
3曲目はバッハのBWV1006の中のメヌエットです。
このイベントは2025年5月6日まで。水曜日休みです。
新宿パークタワーリビングデザインOZONEにある『TOKYO MOKUNAVI』のイベントで東京の木を使った楽器を作るというお題を頂きました。
東京にも森はあるのでいろんな樹種の木はあると思いますが、今回のお話で使える材は杉と檜だけということです。
最初はギターは作れないかとのことでしたが、弦の張力に耐えるネックは針葉樹では作れないと思い、ウクレレとポルタティーフオルガンとカホンを作ることにしました。
3つの各楽器ごとに分けてブログを書きます。
材を仕入れるための材木店を3店紹介して頂き、ウェブサイトを見てからお電話をしてお話をし、日の出町の沖倉製材所を訪ねました。

広い敷地の奥にある天井の高い倉庫に長い材が立てて保管されています。すぐに使える乾燥材を買いに来る人に小売りをするために豊富に用意されている様です。その倉庫の中で自由に材木を選ばせてもらえました。

持ち帰り並べてみました。
柾目の杉材はウクレレのボディーとオルガンのパイプとカホンの打面、少し厚めの板目の杉はカホンの箱、檜は緻密な細工をする必要があるオルガンの心臓部と強度のいるウクレレのネック、とあらかじめ用途別に構想を練っておき選び出した材達です。

オルガンはまずパイプ作りから始めます。これは「核」とか「ケルン」という歌口の部品です。

パイプは音の高さに適した長さと太さが必要で、厳密には全てのパイプのサイズを作るべきですが、手間が大変になるので今回は3種類の太さでつくります。

3種類の太さのパイプです。必要な数より多めに作り、鳴りの良いものを採用します。

オルガンの心臓部と言えるサウンドボードの組み立て前の写真です。
鍵盤を押すとその鍵盤に割り当てたパイプが鳴る仕組みです。何枚かの板に溝を掘って接着することでその空気の経路を作ります。1番下が鍵盤を押すと開く弁の穴、2枚目がその穴からパイプの立つ位置まで空気を導くトンネル、上の2枚がパイプが立つ穴の板となります。

これは「パレット」と呼ばれる鍵盤の下に付く弁です。鍵盤を押すとピンが押されて開く仕組みで、皮のパッキンが接着してあります。

接着したサウンドボードに「パレット」を付けました。これは裏返しにして見てるアングルになります。パレットを抑えるバネは自分で曲げたピアノ線です。

サウンドボードを筐体に付けてみました。メンテナン性を鑑みて、サウンドボードは取り外せるようになっています。

鍵盤です。オルガンでは「マニュアル」と呼ぶみたい。手鍵盤という意味ですね。
ローズウッドのナチュラルキー、象牙などの白いシャープキーの物をよく見ますが、今回のお題は杉檜限定なので、檜の白と杉の赤身の赤でコントラストを付けてます。
ちなみに鍵盤は1枚の板からその形を切り出して作らないと綺麗に揃った鍵盤にはならないようです。

『ベロー』、「フイゴ」を作ります。フイゴを作るのには柔らかくて薄いラムスキンを使います。
このオルガンはフイゴで空気を送りパイプの笛を鍵盤で演奏するという仕組みです。

これはフイゴの外骨ともいえる部品です。これに革を貼ってフイゴを作ります。

このオルガンを作るのにあたり、30年ぶりに膠を使いました。水に溶かした膠を湯煎して塗ります。湯煎はミルクウォーマーで。

フイゴを組みました。
あらためて使ってみて、膠は優秀な接着剤だと再認識しました

鍵盤を付けてパイプを立てるとオルガンぽくなりました、嬉しい。
さて実は、パイプをオルガン本体に付けてフイゴで鳴らしたところ、ちゃんと音が鳴りません。息を吹き込むとちゃんと鳴ります。今回作ったフイゴの空気圧とパイプとの相性があるらしいです。
土壇場の試行錯誤の末、予定になかった「閉管パイプ」に変更しました。
パイプは「開管」と「閉管」があります。パイプの歌口の反対が開いているのが開管で、そこを閉じると1オクターブ下の音が出ます。鳴らすための空気も少なくてすみ、やや籠もった音になります。その閉管で試したところ、発音がよくフイゴの空気も長持ちし1オクターブ下の落ち着いた音になり、全ての点で結果オーライとなりました。開管パイプにパッキンのようなものを詰めて塞ぐと閉管になり、そのパッキンを抜き差ししてチューニングが出来ます。


だいぶはしょりましたが完成です。
いろいろ学びました。
妻による演奏をご紹介します。
Estanpie
Magnificat
BWV1006のメヌエット
1曲目は現存する最古の鍵盤楽器譜面です。このオルガンが奏されていた時代に合った曲を選びました。
2曲目は15世紀のドイツの曲。
3曲目はバッハのBWV1006の中のメヌエットです。
このイベントは2025年5月6日まで。水曜日休みです。