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ヤマアカガエルの産卵に春を知る日

山里の日々の生活と自然、そして稼業の木工の話

ポルタティーフオルガンの制作

2025年03月14日 | 楽器
『ポルタティーフオルガン』とは「ポータブルなオルガン」という意味で、中世ヨーロッパの11世紀頃から作られた小型のパイプオルガンです。



新宿パークタワーリビングデザインOZONEにある『TOKYO MOKUNAVI』のイベントで東京の木を使った楽器を作るというお題を頂きました。



東京にも森はあるのでいろんな樹種の木はあると思いますが、今回のお話で使える材は杉と檜だけということです。

最初はギターは作れないかとのことでしたが、弦の張力に耐えるネックは針葉樹では作れないと思い、ウクレレとポルタティーフオルガンとカホンを作ることにしました。



3つの各楽器ごとに分けてブログを書きます。



材を仕入れるための材木店を3店紹介して頂き、ウェブサイトを見てからお電話をしてお話をし、日の出町の沖倉製材所を訪ねました。




広い敷地の奥にある天井の高い倉庫に長い材が立てて保管されています。すぐに使える乾燥材を買いに来る人に小売りをするために豊富に用意されている様です。その倉庫の中で自由に材木を選ばせてもらえました。





持ち帰り並べてみました。

柾目の杉材はウクレレのボディーとオルガンのパイプとカホンの打面、少し厚めの板目の杉はカホンの箱、檜は緻密な細工をする必要があるオルガンの心臓部と強度のいるウクレレのネック、とあらかじめ用途別に構想を練っておき選び出した材達です。







オルガンはまずパイプ作りから始めます。これは「核」とか「ケルン」という歌口の部品です。




パイプは音の高さに適した長さと太さが必要で、厳密には全てのパイプのサイズを作るべきですが、手間が大変になるので今回は3種類の太さでつくります。







3種類の太さのパイプです。必要な数より多めに作り、鳴りの良いものを採用します。






オルガンの心臓部と言えるサウンドボードの組み立て前の写真です。


鍵盤を押すとその鍵盤に割り当てたパイプが鳴る仕組みです。何枚かの板に溝を掘って接着することでその空気の経路を作ります。1番下が鍵盤を押すと開く弁の穴、2枚目がその穴からパイプの立つ位置まで空気を導くトンネル、上の2枚がパイプが立つ穴の板となります。






これは「パレット」と呼ばれる鍵盤の下に付く弁です。鍵盤を押すとピンが押されて開く仕組みで、皮のパッキンが接着してあります。





接着したサウンドボードに「パレット」を付けました。これは裏返しにして見てるアングルになります。パレットを抑えるバネは自分で曲げたピアノ線です。





サウンドボードを筐体に付けてみました。メンテナン性を鑑みて、サウンドボードは取り外せるようになっています。







鍵盤です。オルガンでは「マニュアル」と呼ぶみたい。手鍵盤という意味ですね。

ローズウッドのナチュラルキー、象牙などの白いシャープキーの物をよく見ますが、今回のお題は杉檜限定なので、檜の白と杉の赤身の赤でコントラストを付けてます。

ちなみに鍵盤は1枚の板からその形を切り出して作らないと綺麗に揃った鍵盤にはならないようです。





『ベロー』、「フイゴ」を作ります。フイゴを作るのには柔らかくて薄いラムスキンを使います。

このオルガンはフイゴで空気を送りパイプの笛を鍵盤で演奏するという仕組みです。





これはフイゴの外骨ともいえる部品です。これに革を貼ってフイゴを作ります。





このオルガンを作るのにあたり、30年ぶりに膠を使いました。水に溶かした膠を湯煎して塗ります。湯煎はミルクウォーマーで。





フイゴを組みました。

あらためて使ってみて、膠は優秀な接着剤だと再認識しました 





鍵盤を付けてパイプを立てるとオルガンぽくなりました、嬉しい。




さて実は、パイプをオルガン本体に付けてフイゴで鳴らしたところ、ちゃんと音が鳴りません。息を吹き込むとちゃんと鳴ります。今回作ったフイゴの空気圧とパイプとの相性があるらしいです。


土壇場の試行錯誤の末、予定になかった「閉管パイプ」に変更しました。


パイプは「開管」と「閉管」があります。パイプの歌口の反対が開いているのが開管で、そこを閉じると1オクターブ下の音が出ます。鳴らすための空気も少なくてすみ、やや籠もった音になります。その閉管で試したところ、発音がよくフイゴの空気も長持ちし1オクターブ下の落ち着いた音になり、全ての点で結果オーライとなりました。開管パイプにパッキンのようなものを詰めて塞ぐと閉管になり、そのパッキンを抜き差ししてチューニングが出来ます。










だいぶはしょりましたが完成です。

いろいろ学びました。



妻による演奏をご紹介します。



Estanpie

Magnificat

BWV1006のメヌエット


1曲目は現存する最古の鍵盤楽器譜面です。このオルガンが奏されていた時代に合った曲を選びました。

2曲目は15世紀のドイツの曲。

3曲目はバッハのBWV1006の中のメヌエットです。




このイベントは2025年5月6日まで。水曜日休みです。




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新作~ロッキングチェア2台

2024年11月02日 | 木工
最近ブログは休みがちですが、仕事はしております。


ロッキングチェアの引き合いが多いので、2台まとめて作りました。






背もたれは頭まで支える高さがあります。

材はケヤキ、ペーパーコード。


ケヤキは最近人気がありませんが、強度のあるきれいな木です。

もっとお求め頂きたい樹種です。








こちらもケヤキ材、拭き漆塗り仕上げ。

座面も木です。


重くはなりましたが、持ち上げて使う椅子ではないのでこれでいいと思います。

ケヤキと漆の組み合わせは最高です。
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新作2点

2024年05月08日 | 木工
催事用に家具を作りました。








ブラックウォールナットのロッキングチェアです。
木の座面。

実は肘掛けは国産の鬼胡桃ですが、コブのような部位でウォールナットにも負けないような色と木目です。











仏壇です。材はマカバ。扉の鏡板はウォールナット。

仏壇の無い家で育ったので、正直使い勝手がよくわかりません。

でもよくご注文を頂くのでお客様に教わって作ってます。


中の壇の扉は「ケンドン扉」です。

引き出せる台があり仏具やお供え物が置けます…



猫足風で軽快な感じにしてあります。
収納を重視する場合は床まで箱の物をお作りします。
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花台の製作

2024年04月24日 | 木工
玄関ポーチに置くための花鉢を飾る台をつくりました。









高さが140cm程で、てっぺん中央に1つ、螺旋状に腕を伸ばしながら4段、鉢を置くための丸い板が付いています。

ちょっと樹木の様な姿です。

材はブラックウォールナット。





上から見たところ。


丸い板は下に行くにしたがって少しづつ大きくしてあります。
見た目の安定感のためです。



十字の足は指物的な作りです。





ぶっちがい部分はこうで、





こう組んで、





これが柱の下の部分で、





ここに刺さって組み上がります。



木組みで出来たの物は丈夫です。



細かい話をしますと、柱から水平に延びている腕の組み方にも工夫があります。

鉢の重さを支えるためには腕を柱にしっかりと取り付ける必要がありますが、この腕は丸い板を付けるために上に向かって曲げてます。

しっかりと組み立てるためにはホゾをきつくして強く叩き込みますが、曲がったところを叩いても力が逃げてしまい、強く叩けません。


そのためにしたことは

①曲げて切る前の腕が真っ直ぐのままで柱に強く叩き込む

②その腕を機械で曲げ切る 

③切断面を手加工で綺麗に仕上げる

④それを4本の腕で加工 〈柱にくっついてるのでやりにくい…〉


そんな感じです。


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定番の椅子をハイチェアに

2024年03月07日 | 木工
長年製作してきた定番商品の椅子を基にハイチェアを作りました。









普通は座面高は42cmくらいです。今回は100cmのカウンターに合わせるために座面高を70cmにし、足のせもつけました。

座面は若干小さくし、脚も少し外に広げて安定性を高めています。

足のせをつける工作は難しいかったですが、うまくいきました。

材はマカバです。





村内でこの春から始めるカフェのための椅子です。暖かくなったら座りに来て下さい。
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