ヤマアカガエルの産卵に春を知る日

山里の日々の生活と自然、そして稼業の木工の話

椅子作りの治具

2012年11月17日 | 木工
霜が降りました。
いつもの年より遅いかな。









だんだん冬の風情。
工房の庭の向こうはずれにふるーい車が打ち捨てられています。
三菱のミニカでしょうか。





新羽神社の銀杏も葉を落とし始めています。




椅子を作っています。




帯鋸(バンドソー)という機械でアールを切ります。


上下に大きな輪車があり、その輪車に掛けた帯状の刃がぐるぐる回っているのが帯鋸。
細い刃を使えば曲線が切れます。
木工ミシン(スクロールソー)よりも厚い材が切れ、どんどん加工ができます。
切れ肌は荒いです。
私の家具の曲線はみなこの機械から生まれるといっていいでしょう。
へんな言い回しですが、好きな機械です。
直線から解放されて、曲線のある躍動する世界に誘ってくれる気がするから。

この機械は中古で大変安く買ったものです。でもその後のチューニングにはお金がかかっています。
刃がぶれないように支えている、ベアリングが付いているガイドはアメリカから買ったもの。
バンドソーのグレードアップの部品ばかり作っているCarter Productsという会社の製品。
そんな会社があるなんて、アメリカさんは奥が深い。





椅子の座面が前広がりの台形なので、ほぞにも角度が付いています。
この角度が付いたほぞを加工するために、角度を決めた治具を使います。

治具とは英語のjigの訳語で、加工を正確にする助けをする装置のことです。
要はそれに乗っけて加工するガイドのようなもの。
写真のものはフェンス側のクサビ状のものが治具で、
刃で切られるものが加工材になります。





加工が済んだものがこれ。角度の付いたほぞができています。
当然左右があります。





これは肘掛が付く凹みを加工する治具。





この機械(トリマー)でその凹みを掘ります。(ピンボケ失礼)
中央の刃が回って木を切ります。刃の外周にガイドがあります。
そのガイドが合板でできた治具に沿って動き凹みを加工します。





分かりにくいでしょうが、見れば一目瞭然。
治具を加工材に乗っけて機械を当てて切削すれば、





このように加工ができます。





その凹みの位置を決めるのには、ほぞ穴の墨を基準にしています。
治具の印と穴の墨を合わせるだけ。
単純な方法ですが、柔軟性があります。
椅子を作るときには毎回お客様と相談して肘掛の高さなどを決めます。
高さが変わってもこの治具の位置を変えるだけで済みます。
小さい工房ならではの細やかな注文に応じるための工夫です。




ほぞの穴の中もきれいにします。
当然見えなくなりますが、精度を出し、強度を高めるためのこだわりです。








仕口の加工が終わると、面取りや磨きなどして、部品の加工は終わります。
組み立てを待つ部材。
やれやれ。完成までもう少し。