ヤマアカガエルの産卵に春を知る日

山里の日々の生活と自然、そして稼業の木工の話

お蕎麦屋さんの椅子の制作 その1

2015年05月02日 | 木工
打ち合わせに行ってきました。





一日に何十万人もの人が見ている景色でありましょう。

いつもあえて山の風景ばかり載せていますが、実はわりと都会の仕事にも行っているのです。


東京に行って帰ってきて思うのは、まるでタイムマシンに乗ったように感じるということです。

山からは片道たったの3時間。
人気の少ない鬱蒼とした山里と、夜でも煌々と光り輝くビルの谷間を多くの人が行きかう都会。
そのあまりの違いに頭がくらくらします。
同じ国の同じ時代とは信じられません。
その違いにはだいぶ慣れたし、むしろ楽しんでます。








さてその打ち合わせですが、お蕎麦屋の改装に伴う家具の制作です。



7月半ばの納期とのことでお話が進んでいたのですが、急遽6月半ばに早まることに決まりました。


本当は2か月ほどの工期を考えていたので、あわてました。
もう一月半しかありません。

これから大変かも~(涙)





帰って、さっそく作業を開始しました。







蓄積してきた材を倉庫から引っ張り出し、検分します。

作るのは椅子が約40脚、テーブルが大小含めて12台ほど。




材はすべて「栓(セン・ハリギリ)」という木です。


付き合いのある材木屋さんが栓が入る度に声をかけてくれる。
特に使うあてもなく、買っておく。
あるいはなにかに使ったときに残っていたもの。
そうな風に集めてあった材です。

なにしろ最近は思ったように材木が買えなくなってしまい、まとまった仕事のために材を揃えることが困難になりつつあります。
一昔前なら、何軒か材木商に電話をかければ買えたようなものなのですけど。






この板には「せん 耳付き材 JAS 北海道 エビナ」と印字されています。

エビナというのは材木業者の名前で、大きな会社だったが今はないと聞きます。
板の色から判ずるに、製材してからだいぶ経っています。
どこかの倉庫に長くあったものなのでしょうか。
北海道産らしく、目の詰んだよい木です。




広いものはテーブルに、細いものは椅子になどと、適材適所を考えて部材を揃えていきます。
なんにせよ、手持ちの材で足りるか、が最大の問題です。




40脚分の椅子の部材が取れました。足りてよかった。

これでもまだ座枠と座面がありません。
それには少し薄い板を使います。

ご注文は37脚なのですが、少し余分に作っときます。
組み立ての時に破損してしまうこともあるので、個数ぴったりというのはキケンです。






端材が出ます。
椅子の部材はへの字に曲がっているのでどうしても三角形の端材が出てしまう。

これでもまだ歩留まりがいい方です。

用意できた材の品質が良かったからでしょう。





で、前回や前々回に木取っていたあの椅子やあの椅子やらは、と思われる方もいますでしょうか?






このように工房の隅に積み上げられて出番を待っております。

こうして時間をかけて作った方がいい製品になるし!って?