ベースギターを2台作りました。
あるきっかけがあって、2年ほど前から楽器(主にベース)を作りたいと思い立ち、本を買ったりネットで調べたりしていましたが、いよいよ製作を始め、こつこつと3ヶ月ほどかけて完成しました。
いろいろ調べていると、世の中には様々な楽器があり、こんなものを作ってみたい、とアイデアも浮かびます。こんな木を使ってこう組んだらどんな音がなるのだろうか、などと想像は膨らみます。
それはいずれまた作ることができたらお知らせします。
世にあまりない自分なりの楽器が作れたらいいなあと思っています。
「資料」と称していろいろ楽器を買ってみましたが、ある時老舗のメーカー東海楽器が出している『SEB構造』という物に目が留まりました。
下のリンクをご覧ください。
東海楽器SEB
ギターのボディーの表と裏には薄い板を張り、芯は表裏に木口が向く様な向きで木を使っています。
木の繊維方向は音の伝達が4倍早いので、表裏の板に音が反射し、音が良くなるという発明です。特許取得済み。
これは木工屋としても今まで聞いたことのない木の使い方ですので興味が湧き、取り寄せて弾いてみたところ、謳い文句の通りの音の粒立ち、サスティーン、和音の響き、ハンマリングやハーモニクスの美しさなど、明らかに他にはない音がします。これは素晴らしい!
しかしです、この現代において、この楽器の情報がほとんどみつかりません。特にべースはネット検索しても買ったという人弾いてみたという人がほとんど出てきません。まず楽器そのものもほとんど見かけません。
そのあまりに変わった構造のせいか、中には「東海楽器は端材でギターを作りだした」と悪口を書く人もいます。
いえいえ、木工の仕事をする私からすれば、この構造を製作するのはとても面倒くさく手間のかかることです。
しかし、SEB構造のベースギターはなんと最新の東海楽器のカタログ(2020年 vol.31)から落ちています。ただし注文では作るらしいです。
メールや手紙でラブレターも書きましたが、東海楽器さんはもうあまりこの楽器を積極的に作る気がないような感触です。
ましてや私はできるなら5弦の24フレット仕様のベースが欲しいのですが、もともとそんな型はメーカーにも無いので注文に応じてくれそうにありません。
これは作るしかないか…
そしてベース1号2号は自分の弾きたいこの仕様で決まりました。
* この構造のギターは東海楽器が特許を持つものだということは承知しています。これを個人的に真似して作ることが特許に触れることなのかは、私には判断がつきません。いずれ東海楽器にはちゃんと話したいと思っています。いたずらに特許権を侵害するつもりはなく、むしろこの構造の楽器が世に知られて東海楽器の利益にもなることを願っています。余計なお世話でしょうけど。また、作り方工程は私の考えたもので、東海楽器でどのようにしているかはもちろん知りません。*
何よりもまず設計です。原寸大の図を描いてベニヤで型を作ります。
24フレットで、ハイポジションもストレスなく指が届き抱え易い型にします。スタンドがなくても置けるようにボディーの下側は平にします。
ヘッドは線対称型に、トレードマークを付けるために大きめに、など。
工作を始めます。
まず、手持ちの材木で、よく乾いた厚めの板を選びます。
東海楽器のSEB構造の説明イラストにある「木口を上下にした中層板」はざっくり言えば丸太を薄く輪切りにすれば得られます。
しかし実際にはそんな訳にはいきません。
丸太をただ輪切りにすれば、割れるわ狂うわでその後必要な工作に耐えるものにはなりません。そもそもそんな大きな木は手に入りません。
ではどうするべきかというと、まずは普通に板に製材して乾燥させるしかありません。
しかし、あまり厚く製材するとやはり割れる確率が上がりますし薄くしたものは寄せて広い板状にするのに手間がかります。
私の考えでは60mm厚くらいがバランスの良いところです。
ストックの中からキハダという材を選びました。
これがいい音がするはず、みたいなことではなく適切なサイズの板だったからです。
これをボディーの寸法になるように長さと巾を計算して、まず横方向に剥ぎます。
細かく説明しますと、巾はそのままボディーの巾で、長さはというと、切ってまた剥いでボディーの長さになる寸法となります。
分かりにくい説明ですが、後に出てくる写真を見れば一目瞭然です。
接ぎ合わせた厚い板を削って平に仕上げ、今度はボディーの「中層板」の厚さより少し厚めにスライスします。
それを90度倒した向きでまた貼り合わせてボディーの寸法にします。
貼る前に型を置いて確認。
ここまで来て写真で見て頂ければ、ここまでの工作の意図がわかって頂けると思います。
輪切り状のものを並べて接着しているのでこんな木目になります。
ここに見えているのは木口、生えてる木を切り倒した切り株に見られる木目です。
細かい材を貼り足してこれを作ることも可能ですが、それはとても手間食いで経済的ではありません。
また、効率を考えればある程度厚い材を用意しなければなりません。
切って貼って切って貼っての作業の繰り返しなので、時間もかかり加工の精度も必要です。
実は木工作業では、短く切った端材はどうしても出てしまい、これらは本来もう使い物にならないものとして捨てられています。
端材工作ではない、と上で書きましたが、大きな工場などで効率的にこの「端材」を利用する仕組みを構築すれば低コストでこの構造のボディーを作ることは可能かもしれません。
②に続く。
あるきっかけがあって、2年ほど前から楽器(主にベース)を作りたいと思い立ち、本を買ったりネットで調べたりしていましたが、いよいよ製作を始め、こつこつと3ヶ月ほどかけて完成しました。
いろいろ調べていると、世の中には様々な楽器があり、こんなものを作ってみたい、とアイデアも浮かびます。こんな木を使ってこう組んだらどんな音がなるのだろうか、などと想像は膨らみます。
それはいずれまた作ることができたらお知らせします。
世にあまりない自分なりの楽器が作れたらいいなあと思っています。
「資料」と称していろいろ楽器を買ってみましたが、ある時老舗のメーカー東海楽器が出している『SEB構造』という物に目が留まりました。
下のリンクをご覧ください。
東海楽器SEB
ギターのボディーの表と裏には薄い板を張り、芯は表裏に木口が向く様な向きで木を使っています。
木の繊維方向は音の伝達が4倍早いので、表裏の板に音が反射し、音が良くなるという発明です。特許取得済み。
これは木工屋としても今まで聞いたことのない木の使い方ですので興味が湧き、取り寄せて弾いてみたところ、謳い文句の通りの音の粒立ち、サスティーン、和音の響き、ハンマリングやハーモニクスの美しさなど、明らかに他にはない音がします。これは素晴らしい!
しかしです、この現代において、この楽器の情報がほとんどみつかりません。特にべースはネット検索しても買ったという人弾いてみたという人がほとんど出てきません。まず楽器そのものもほとんど見かけません。
そのあまりに変わった構造のせいか、中には「東海楽器は端材でギターを作りだした」と悪口を書く人もいます。
いえいえ、木工の仕事をする私からすれば、この構造を製作するのはとても面倒くさく手間のかかることです。
しかし、SEB構造のベースギターはなんと最新の東海楽器のカタログ(2020年 vol.31)から落ちています。ただし注文では作るらしいです。
メールや手紙でラブレターも書きましたが、東海楽器さんはもうあまりこの楽器を積極的に作る気がないような感触です。
ましてや私はできるなら5弦の24フレット仕様のベースが欲しいのですが、もともとそんな型はメーカーにも無いので注文に応じてくれそうにありません。
これは作るしかないか…
そしてベース1号2号は自分の弾きたいこの仕様で決まりました。
* この構造のギターは東海楽器が特許を持つものだということは承知しています。これを個人的に真似して作ることが特許に触れることなのかは、私には判断がつきません。いずれ東海楽器にはちゃんと話したいと思っています。いたずらに特許権を侵害するつもりはなく、むしろこの構造の楽器が世に知られて東海楽器の利益にもなることを願っています。余計なお世話でしょうけど。また、作り方工程は私の考えたもので、東海楽器でどのようにしているかはもちろん知りません。*
何よりもまず設計です。原寸大の図を描いてベニヤで型を作ります。
24フレットで、ハイポジションもストレスなく指が届き抱え易い型にします。スタンドがなくても置けるようにボディーの下側は平にします。
ヘッドは線対称型に、トレードマークを付けるために大きめに、など。
工作を始めます。
まず、手持ちの材木で、よく乾いた厚めの板を選びます。
東海楽器のSEB構造の説明イラストにある「木口を上下にした中層板」はざっくり言えば丸太を薄く輪切りにすれば得られます。
しかし実際にはそんな訳にはいきません。
丸太をただ輪切りにすれば、割れるわ狂うわでその後必要な工作に耐えるものにはなりません。そもそもそんな大きな木は手に入りません。
ではどうするべきかというと、まずは普通に板に製材して乾燥させるしかありません。
しかし、あまり厚く製材するとやはり割れる確率が上がりますし薄くしたものは寄せて広い板状にするのに手間がかります。
私の考えでは60mm厚くらいがバランスの良いところです。
ストックの中からキハダという材を選びました。
これがいい音がするはず、みたいなことではなく適切なサイズの板だったからです。
これをボディーの寸法になるように長さと巾を計算して、まず横方向に剥ぎます。
細かく説明しますと、巾はそのままボディーの巾で、長さはというと、切ってまた剥いでボディーの長さになる寸法となります。
分かりにくい説明ですが、後に出てくる写真を見れば一目瞭然です。
接ぎ合わせた厚い板を削って平に仕上げ、今度はボディーの「中層板」の厚さより少し厚めにスライスします。
それを90度倒した向きでまた貼り合わせてボディーの寸法にします。
貼る前に型を置いて確認。
ここまで来て写真で見て頂ければ、ここまでの工作の意図がわかって頂けると思います。
輪切り状のものを並べて接着しているのでこんな木目になります。
ここに見えているのは木口、生えてる木を切り倒した切り株に見られる木目です。
細かい材を貼り足してこれを作ることも可能ですが、それはとても手間食いで経済的ではありません。
また、効率を考えればある程度厚い材を用意しなければなりません。
切って貼って切って貼っての作業の繰り返しなので、時間もかかり加工の精度も必要です。
実は木工作業では、短く切った端材はどうしても出てしまい、これらは本来もう使い物にならないものとして捨てられています。
端材工作ではない、と上で書きましたが、大きな工場などで効率的にこの「端材」を利用する仕組みを構築すれば低コストでこの構造のボディーを作ることは可能かもしれません。
②に続く。