金星探査機“あかつき”の観測により、
金星にこれまで知られていなかったジェット気流が発見されました。
大きさが地球に近く、公転軌道も比較的近いことから地球の双子星と呼ばれる金星。
その謎に迫る情報が“あかつき”から得られると期待されているんですねー
謎の気象現象“スーパーローテーション”
金星で有名な気象現象に“スーパーローテーション”があります。
“スーパーローテーション”は金星の自転よりも速く金星を一周する風で、
太陽系惑星の気象現象の中では最大の謎とも言われています。
ただ、自転より速くと言っても、そもそも金星の自転は遅く1年は地球の224日。
でも自転周期は243日なので自転の方が遅いんですねー
さらに自転の向きが逆なので、金星上での1日の長さは地球の117日になってしまいます。
これほど遅いと金星は片面だけが太陽に加熱され、反対の面は夜になって冷えてしまうことに…
すると地球の赤道と北極・南極のように、
昼側と夜側の空気を入れ替えるような風が吹きそうに思えますよね。
でも、実際には金星を東から西へ一周する風が、
地球時間で4日前後という金星の自転よりも速い速度で吹いています。
なぜ、ほとんど止まっているような金星の自転の向きに、
自転よりはるかに速い速度で風が吹いているのか? いまも謎のままなんですねー
“スーパーローテーション”より速い気流の発見
“スーパーローテーション”のことはこれまでの金星探査で分かっていました。
でも“あかつき”は新しい現象も観測していたんですねー
それは、赤道付近の低層大気に“スーパーローテーション”とは異なる流れがあることでした。
金星は大気が濃く雲も厚く、雲の表面の高さは高度70キロもあります。
地球では、ほとんど真空になる高さです。
この高度では“スーパーローテーション”の風が吹いていて、
風速は秒速100メートル程度で時期や場所による違いはあまりありません。
今回“あかつき”は赤外線カメラ“IR2”を使って高度40キロ以下の雲の下の風を観測。
“IR2”は下層大気の熱放射による赤外線が雲を透過する際にできる“影絵”を観測して、
高度約45~60キロにある分厚い中・下層雲を可視化することができる。
金星探査機“あかつき”の5つの観測機器が定常観測へ移行

すると2016年7月の観測データから、高度45~60キロの中・下層雲領域に、
赤道付近に軸をもつジェット状の風の流れ“赤道ジェット”が世界で始めて見つかります。
“赤道ジェット”はその後少なくとも2か月継続し、
赤道付近では80メートル以上の強風が吹き、赤道から離れると風が弱まるという現象でした。
過去にも2007年から2008年にヨーロッパ宇宙機関の金星探査機“ビーナス・エクスプレス”が、
同様の観測をしていたのですが、このような強い風は見つかっていません。
金星探査機“ビーナスエクスプレス” 最後の軌道上昇へ

また、“あかつき”で観測されたのも2016年7月~8月で、それ以前には観測されず…
なので、この風は“スーパーローテーション”と違い、吹いているときと吹いていないときがあるようです。
増えた謎と解き明かされる謎
この新しいジェット気流がなぜ起きているのかは、
まだ分かっていないません。
そもそも金星の“スーパーローテーション”自体が、
なぜ起きているのか分かっていない謎の現象です。
さらに、赤道付近にだけ強い風が吹くのは、力学の常識から考えても不思議な事になります。
フィギュアスケートのスピンで手足を縮めると回転が速くなるように、
回転する物体は半径を小さくすると回転が速まります。
地球でも、赤道上の渦が北半球や南半球に移動すると回転が強まり、台風などの現象になります。
なので、回転が赤道上で最も強いというのは逆の現象になるんですねー
金星大気の研究は地球の役に立つ?
金星の謎が明らかになったら何かの役に立つのでしょうか?
金星大気のシミュレーションプログラムは、
基本的に地球上の天気予報に使われているものと同じ原理になります。
もちろん実物の金星も物理法則は地球と同じです。
なのに、どうしてこれほどまでに違う環境になっているのか。
私たち地球人は地球の気象現象が当たり前だと思っています。
でも、宇宙には様々な星があり気象現象も異なります。
そう、地球の気象は当たり前ではなく、たまたまこうなっているだけかもしれないんですねー
なので、地球ではありえない金星の気象現象を調べることは、
今までは思いもよらなかった気象の原理発見につながるかもしれません。
そして、それは気付いていなかっただけで実は地球にもあるとすると、
今まで解明されていなかった気象現象が解明されるかもしれないということですね。
こちらの記事もどうぞ
金星の“巨大な弓状模様”はどうやって作られたの?

金星にこれまで知られていなかったジェット気流が発見されました。
大きさが地球に近く、公転軌道も比較的近いことから地球の双子星と呼ばれる金星。
その謎に迫る情報が“あかつき”から得られると期待されているんですねー
![]() |
“あかつき”による金星の夜面観測(イメージ図) |
謎の気象現象“スーパーローテーション”
金星で有名な気象現象に“スーパーローテーション”があります。
“スーパーローテーション”は金星の自転よりも速く金星を一周する風で、
太陽系惑星の気象現象の中では最大の謎とも言われています。
![]() |
でも自転周期は243日なので自転の方が遅いんですねー
さらに自転の向きが逆なので、金星上での1日の長さは地球の117日になってしまいます。
これほど遅いと金星は片面だけが太陽に加熱され、反対の面は夜になって冷えてしまうことに…
すると地球の赤道と北極・南極のように、
昼側と夜側の空気を入れ替えるような風が吹きそうに思えますよね。
でも、実際には金星を東から西へ一周する風が、
地球時間で4日前後という金星の自転よりも速い速度で吹いています。
なぜ、ほとんど止まっているような金星の自転の向きに、
自転よりはるかに速い速度で風が吹いているのか? いまも謎のままなんですねー
“スーパーローテーション”より速い気流の発見
“スーパーローテーション”のことはこれまでの金星探査で分かっていました。
でも“あかつき”は新しい現象も観測していたんですねー
それは、赤道付近の低層大気に“スーパーローテーション”とは異なる流れがあることでした。
金星は大気が濃く雲も厚く、雲の表面の高さは高度70キロもあります。
地球では、ほとんど真空になる高さです。
この高度では“スーパーローテーション”の風が吹いていて、
風速は秒速100メートル程度で時期や場所による違いはあまりありません。
今回“あかつき”は赤外線カメラ“IR2”を使って高度40キロ以下の雲の下の風を観測。
“IR2”は下層大気の熱放射による赤外線が雲を透過する際にできる“影絵”を観測して、
高度約45~60キロにある分厚い中・下層雲を可視化することができる。
金星探査機“あかつき”の5つの観測機器が定常観測へ移行

すると2016年7月の観測データから、高度45~60キロの中・下層雲領域に、
赤道付近に軸をもつジェット状の風の流れ“赤道ジェット”が世界で始めて見つかります。
“赤道ジェット”はその後少なくとも2か月継続し、
赤道付近では80メートル以上の強風が吹き、赤道から離れると風が弱まるという現象でした。
過去にも2007年から2008年にヨーロッパ宇宙機関の金星探査機“ビーナス・エクスプレス”が、
同様の観測をしていたのですが、このような強い風は見つかっていません。
金星探査機“ビーナスエクスプレス” 最後の軌道上昇へ

また、“あかつき”で観測されたのも2016年7月~8月で、それ以前には観測されず…
なので、この風は“スーパーローテーション”と違い、吹いているときと吹いていないときがあるようです。
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IR2による金星夜面の雲の模様(擬似カラー)。 より多くの雲粒子が大気下層から来る赤外線を遮るため雲が厚いところほど暗い。 画像左側の白いところは昼面。 |
増えた謎と解き明かされる謎
この新しいジェット気流がなぜ起きているのかは、
まだ分かっていないません。
そもそも金星の“スーパーローテーション”自体が、
なぜ起きているのか分かっていない謎の現象です。
さらに、赤道付近にだけ強い風が吹くのは、力学の常識から考えても不思議な事になります。
フィギュアスケートのスピンで手足を縮めると回転が速くなるように、
回転する物体は半径を小さくすると回転が速まります。
地球でも、赤道上の渦が北半球や南半球に移動すると回転が強まり、台風などの現象になります。
なので、回転が赤道上で最も強いというのは逆の現象になるんですねー
金星大気の研究は地球の役に立つ?
金星の謎が明らかになったら何かの役に立つのでしょうか?
金星大気のシミュレーションプログラムは、
基本的に地球上の天気予報に使われているものと同じ原理になります。
もちろん実物の金星も物理法則は地球と同じです。
なのに、どうしてこれほどまでに違う環境になっているのか。
私たち地球人は地球の気象現象が当たり前だと思っています。
でも、宇宙には様々な星があり気象現象も異なります。
そう、地球の気象は当たり前ではなく、たまたまこうなっているだけかもしれないんですねー
なので、地球ではありえない金星の気象現象を調べることは、
今までは思いもよらなかった気象の原理発見につながるかもしれません。
そして、それは気付いていなかっただけで実は地球にもあるとすると、
今まで解明されていなかった気象現象が解明されるかもしれないということですね。
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