地球から640光年離れた系外惑星を観測してみると、摂氏2400度に達する昼側の大気に、蒸発した鉄が含まれることが分かりました。
ただ、1500度と比較的“涼しい”夜側の大気には鉄が含まれていないので、昼から夜に切り替わる部分では、鉄の蒸気が雨となって降り注いでいるようです。
質量は木星よりもやや小さいガス惑星。中心星の周りをわずか1.8日で公転しているホットジュピターです。
太陽系で一番内側を回る水星でも公転周期は88日になる。
中心星から惑星までの距離が、約500万キロ(太陽から地球までの30分の1)しか離れていないので、“WASP-76 b”は潮汐力によって主星にいつも同じ面を向けて公転しているようです。月が地球に同じ面を向けているのと同じですね。
この現象を“潮汐ロック”といい、主星と向き合う昼側と反対の夜側が固定されることで、“WASP-76 b”は昼側と夜側とで極端な温度差が生じる環境になります。
このため、昼側は摂氏2400度に達し、鉄のような金属も気体になっていると考えられています。
観測には、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡“VLT”と、この望遠鏡に搭載されたばかりの分光器“ESPRESSO”が用いられました。
観測の結果、“WASP-76 b”の昼側の大気から検出されたのが大量の鉄の蒸気でした。
今回の観測のポイントは、惑星の昼と夜の側に加え、昼から夜に切り替わる“夕方”の部分と、夜から昼に切り替わる“朝”の部分における大気組成をそれぞれ調べたことにあります。
このうち、“夕方”の側では昼と同じように、大気中に多くの鉄が蒸発していることを示すデータが得られています。
一方、夜から朝にかけては、鉄の蒸気は観測されなくなっています。
なぜ、鉄の蒸気は観測されなくなったのでしょうか?
その理由は“WASP-76 b”の極端な温度差にあります。
“WASP-76 b”では、“潮汐ロック”により昼側と夜側の温度差が摂氏1000度以上もあります。
この温度差により、昼側から夜側へ時速18,000キロという猛烈な風が発生しているんですねー
この風により、高温の昼側にある鉄の蒸気が“夕方”の境界を越えて低温の夜側に移動。
そこで凝縮して雨となって降ることで、もう片方の“朝”の部分に当たる境界では、鉄の蒸気が検出されなかったというわけです。
雨として降った鉄は、大気循環を介して昼側の面で再び鉄の蒸気になります。
“WASP-76 b”では、このような鉄の循環が繰り返していると考えられています。
本来、“ESPRESSO”は地球のような岩石型系外惑星を見つけることを目指して設計された観測装置です。
でも、今回の研究では、系外巨大ガス惑星における化学的組成の変化を初めて検出することに成功しています。
“ESPRESSO”は期待以上に様々な用途に役立つ装置なのかもしれません。今後の活躍が楽しみですね。
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3つの太陽をもち、空から鉄の雨が降る奇妙な惑星
ただ、1500度と比較的“涼しい”夜側の大気には鉄が含まれていないので、昼から夜に切り替わる部分では、鉄の蒸気が雨となって降り注いでいるようです。
主星にいつも同じ面を向けて公転する惑星
鉄の雨が降っているとされるのは、うお座の方向約640光年彼方に位置する系外惑星“WASP-76 b”。質量は木星よりもやや小さいガス惑星。中心星の周りをわずか1.8日で公転しているホットジュピターです。
太陽系で一番内側を回る水星でも公転周期は88日になる。
中心星から惑星までの距離が、約500万キロ(太陽から地球までの30分の1)しか離れていないので、“WASP-76 b”は潮汐力によって主星にいつも同じ面を向けて公転しているようです。月が地球に同じ面を向けているのと同じですね。
この現象を“潮汐ロック”といい、主星と向き合う昼側と反対の夜側が固定されることで、“WASP-76 b”は昼側と夜側とで極端な温度差が生じる環境になります。
このため、昼側は摂氏2400度に達し、鉄のような金属も気体になっていると考えられています。
大気循環を介して鉄も循環している
今回の研究では、スイス・ジュネーブ大学の研究チームが“WASP-76 b”の大気組成を調査しています。観測には、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡“VLT”と、この望遠鏡に搭載されたばかりの分光器“ESPRESSO”が用いられました。
観測の結果、“WASP-76 b”の昼側の大気から検出されたのが大量の鉄の蒸気でした。
今回の観測のポイントは、惑星の昼と夜の側に加え、昼から夜に切り替わる“夕方”の部分と、夜から昼に切り替わる“朝”の部分における大気組成をそれぞれ調べたことにあります。
このうち、“夕方”の側では昼と同じように、大気中に多くの鉄が蒸発していることを示すデータが得られています。
一方、夜から朝にかけては、鉄の蒸気は観測されなくなっています。
なぜ、鉄の蒸気は観測されなくなったのでしょうか?
その理由は“WASP-76 b”の極端な温度差にあります。
“WASP-76 b”では、“潮汐ロック”により昼側と夜側の温度差が摂氏1000度以上もあります。
この温度差により、昼側から夜側へ時速18,000キロという猛烈な風が発生しているんですねー
この風により、高温の昼側にある鉄の蒸気が“夕方”の境界を越えて低温の夜側に移動。
そこで凝縮して雨となって降ることで、もう片方の“朝”の部分に当たる境界では、鉄の蒸気が検出されなかったというわけです。
雨として降った鉄は、大気循環を介して昼側の面で再び鉄の蒸気になります。
“WASP-76 b”では、このような鉄の循環が繰り返していると考えられています。
系外惑星“WASP-76 b”の夜側(イメージ図)。昼側から運ばれた鉄の蒸気が、低温の夜側で冷えて雨粒となって降り注ぐ様子が描かれている。(Credit:ESO/M. Kornmesser) |
でも、今回の研究では、系外巨大ガス惑星における化学的組成の変化を初めて検出することに成功しています。
“ESPRESSO”は期待以上に様々な用途に役立つ装置なのかもしれません。今後の活躍が楽しみですね。
中心星“WASP-76”を巡る“WASP-76 b”の軌道(緑)を再現した動画。(Credit:ESO) |
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