今回発見されたのは、公転周期がわずか20分という白色矮星同士の連星。
将来、宇宙空間から重力波を観測する時に重要な天体になるんですねー
2030年代に稼働予定の宇宙重力波望遠鏡で、動作検証用に使える重力波源天体になると期待されているようです。
地上で検出できないタイプの重力波
2015年、アメリカで重力波望遠鏡“LIGO”が初めて重力波の直接検出に成功。
以来、現在では“LIGO”とヨーロッパの検出器“Virgo”で日常的に重力波が検出されるようになっています。
昨年の秋には日本の重力波望遠鏡“KAGRA”が完成し、今年の2月から連続運転を開始している。
これら地上の重力波望遠鏡は、主に周波数が10~10kHzの重力波をとらえる設計になっています。
10~10kHzは波の振動回数が毎秒10~1万回。
一般に、2個の天体が回り合う連星が重力波を放出する場合、その重力波の周波数は公転の周波数の2倍になります。
つまり、“LIGO”や“Virgo”がターゲットにしているのは、互いの周りを回るような激しい公転天体からの1秒間に数十回から数千回もの重力波なんですねー
これまでの検出例では、質量が太陽の10~30倍程度のブラックホール連星や中性子星同士の連星が、猛烈に公転しながら合体する最終段階で出る重力波がキャッチされています。
一方、宇宙にはもっとゆっくり震動する重力波も存在すると考えられています。
たとえば、極めて接近した白色矮星同士の連星や、質量が太陽の数百万倍から数十億倍という超大質量ブラックホール同士の連星です。
これらは公転周期が数分~数時間という長さになるので、発生する重力波の周波数は0.0001~1Hz(1~1万秒に1回振動)という比較的ゆっくりとしたものになるんですねー
このようなゆっくりとした重力波は、地震波のような地面の振動の周波数に近くなります。
そう、地面の振動の周波数に埋もれてしまい、地上の重力波望遠鏡で観測することが非常に難しくなります。
重力波を宇宙空間で観測する
なので、宇宙空間に検出器を打ち上げて、こうした低周波の重力波を検出しようという計画が進められています。
代表的なものが、ヨーロッパ宇宙機関が2034年に打ち上げを予定しているレーザー干渉計宇宙アンテナ“LISA”や、日本で計画されている0.1ヘルツ帯干渉計型重力波天文台“DECIGO”です。
そこで、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究チームは、白色矮星同士の近接連星に着目。
“LISA”が稼働した際に動作検証に使えるような白色矮星連星の候補を、位置天文衛星“ガイア”の恒星データから選び出して詳細な観測を行っていました。
その結果、うお座の方向約2400光年彼方にある天体“SDSS J232230.20+050942.06”が、“LISA”で重力波の検出を期待できそうな白色矮星連星であることを突き止めます。
研究チームが分光観測を行って分かってきたのは、“SDSS J232230.20+050942.06”は質量が太陽の0.27倍と0.24倍の白色矮星からなる連星系で、2つの星の距離は13万5000キロ(地球から月までの距離の約1/3)、公転周期はわずか1201秒(約20分)ということ。
観測には、アメリカにあるフレッド・ローレンス・ホイップル天文台のMMT望遠鏡、南米チリのラスカンパナス天文台のマゼラン望遠鏡、アメリカ・ハワイのジェミニ北望遠鏡が使われた。
これは、2つの星の表面同士が接触していない分離型の近接連星としては、これまでに発見された中で3番目に公転周期が短いものになります。
“SDSS J232230.20+050942.06”は公転周期が非常に短く、連星系としての寿命の最期にさしかかっています。
重力波を放出することでエネルギーを失い、連星の軌道がだんだん近づいているんですねー
600万~700万年後には2つの星は合体して1個の大きな白色矮星になるようです。
新たなタイプの検証用連星
比較的軽い星が核融合反応の燃料を使い果たした燃えカスの天体が白色矮星です。
単独の恒星の場合、一生の最期に炭素・酸素からなる白色矮星になります。
でも、近接連星の場合には、片方の星が赤色巨星へと進化した段階で、膨らんだ外層のガスが相手の星に向かって流れ出し、ヘリウムでできた中心核だけが残って“ヘリウム白色矮星”というタイプの白色矮星になることがあります。
今回の研究で、“SDSS J232230.20+050942.06”は2つの星が共に“ヘリウム白色矮星”という連星系であることが明らかになっています。
これまでの理論で予測されていたのは、“ヘリウム白色矮星”の連星はたくさん存在するということ。
今回の発見は、この理論を支持するもので、将来こうした連星系をさらに発見し、その存在数を決める上での基礎となる結果でもあります。
“SDSS J232230.20+050942.06”は公転周期が極めて短く、また地球からは連星系の公転面をほぼ真上から観測する向きになっています。
この向きは、公転面を横から見る“食連星”の配置になっている場合に比べて、地球に届く重力波が2.5倍も強くなるんですねー
そのため、地球から見て最も強い重力波源になる可能性もあり、将来“LISA”で重力波検出の確認に使われる検証用連星として格好の天体になりそうです。
“LISA”が稼働を始めれば、数週間以内に確実に信号を検出できることが明らかな天体が検証用連星です。
非常に重要なものですが、今のところ数個しか見つかっていません。
そう、“ヘリウム白色矮星”の連星という新たなタイプの検証用連星になりうる天体が見つかったこと。
このことは“LISA”にとって期待以上の追い風になるようですよ。
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将来、宇宙空間から重力波を観測する時に重要な天体になるんですねー
2030年代に稼働予定の宇宙重力波望遠鏡で、動作検証用に使える重力波源天体になると期待されているようです。
地上で検出できないタイプの重力波
2015年、アメリカで重力波望遠鏡“LIGO”が初めて重力波の直接検出に成功。
以来、現在では“LIGO”とヨーロッパの検出器“Virgo”で日常的に重力波が検出されるようになっています。
昨年の秋には日本の重力波望遠鏡“KAGRA”が完成し、今年の2月から連続運転を開始している。
これら地上の重力波望遠鏡は、主に周波数が10~10kHzの重力波をとらえる設計になっています。
10~10kHzは波の振動回数が毎秒10~1万回。
一般に、2個の天体が回り合う連星が重力波を放出する場合、その重力波の周波数は公転の周波数の2倍になります。
つまり、“LIGO”や“Virgo”がターゲットにしているのは、互いの周りを回るような激しい公転天体からの1秒間に数十回から数千回もの重力波なんですねー
これまでの検出例では、質量が太陽の10~30倍程度のブラックホール連星や中性子星同士の連星が、猛烈に公転しながら合体する最終段階で出る重力波がキャッチされています。
一方、宇宙にはもっとゆっくり震動する重力波も存在すると考えられています。
たとえば、極めて接近した白色矮星同士の連星や、質量が太陽の数百万倍から数十億倍という超大質量ブラックホール同士の連星です。
これらは公転周期が数分~数時間という長さになるので、発生する重力波の周波数は0.0001~1Hz(1~1万秒に1回振動)という比較的ゆっくりとしたものになるんですねー
このようなゆっくりとした重力波は、地震波のような地面の振動の周波数に近くなります。
そう、地面の振動の周波数に埋もれてしまい、地上の重力波望遠鏡で観測することが非常に難しくなります。
重力波を宇宙空間で観測する
なので、宇宙空間に検出器を打ち上げて、こうした低周波の重力波を検出しようという計画が進められています。
代表的なものが、ヨーロッパ宇宙機関が2034年に打ち上げを予定しているレーザー干渉計宇宙アンテナ“LISA”や、日本で計画されている0.1ヘルツ帯干渉計型重力波天文台“DECIGO”です。
そこで、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究チームは、白色矮星同士の近接連星に着目。
“LISA”が稼働した際に動作検証に使えるような白色矮星連星の候補を、位置天文衛星“ガイア”の恒星データから選び出して詳細な観測を行っていました。
その結果、うお座の方向約2400光年彼方にある天体“SDSS J232230.20+050942.06”が、“LISA”で重力波の検出を期待できそうな白色矮星連星であることを突き止めます。
研究チームが分光観測を行って分かってきたのは、“SDSS J232230.20+050942.06”は質量が太陽の0.27倍と0.24倍の白色矮星からなる連星系で、2つの星の距離は13万5000キロ(地球から月までの距離の約1/3)、公転周期はわずか1201秒(約20分)ということ。
観測には、アメリカにあるフレッド・ローレンス・ホイップル天文台のMMT望遠鏡、南米チリのラスカンパナス天文台のマゼラン望遠鏡、アメリカ・ハワイのジェミニ北望遠鏡が使われた。
これは、2つの星の表面同士が接触していない分離型の近接連星としては、これまでに発見された中で3番目に公転周期が短いものになります。
今回発見された白色矮星連星“SDSS J232230.20+050942.06”(イメージ図)。2030年代に稼働予定のヨーロッパ宇宙機関の宇宙重力波望遠鏡“LISA”で、動作検証用に使える重力波源天体になると期待されている。(Credit: M. Weiss) |
重力波を放出することでエネルギーを失い、連星の軌道がだんだん近づいているんですねー
600万~700万年後には2つの星は合体して1個の大きな白色矮星になるようです。
新たなタイプの検証用連星
比較的軽い星が核融合反応の燃料を使い果たした燃えカスの天体が白色矮星です。
単独の恒星の場合、一生の最期に炭素・酸素からなる白色矮星になります。
でも、近接連星の場合には、片方の星が赤色巨星へと進化した段階で、膨らんだ外層のガスが相手の星に向かって流れ出し、ヘリウムでできた中心核だけが残って“ヘリウム白色矮星”というタイプの白色矮星になることがあります。
今回の研究で、“SDSS J232230.20+050942.06”は2つの星が共に“ヘリウム白色矮星”という連星系であることが明らかになっています。
これまでの理論で予測されていたのは、“ヘリウム白色矮星”の連星はたくさん存在するということ。
今回の発見は、この理論を支持するもので、将来こうした連星系をさらに発見し、その存在数を決める上での基礎となる結果でもあります。
“SDSS J232230.20+050942.06”は公転周期が極めて短く、また地球からは連星系の公転面をほぼ真上から観測する向きになっています。
この向きは、公転面を横から見る“食連星”の配置になっている場合に比べて、地球に届く重力波が2.5倍も強くなるんですねー
そのため、地球から見て最も強い重力波源になる可能性もあり、将来“LISA”で重力波検出の確認に使われる検証用連星として格好の天体になりそうです。
“LISA”が稼働を始めれば、数週間以内に確実に信号を検出できることが明らかな天体が検証用連星です。
非常に重要なものですが、今のところ数個しか見つかっていません。
そう、“ヘリウム白色矮星”の連星という新たなタイプの検証用連星になりうる天体が見つかったこと。
このことは“LISA”にとって期待以上の追い風になるようですよ。
こちらの記事もどうぞ
宇宙には“物質”はあるけど“反物質”は存在しない? この謎は重力波を観測すれば解明できるようです。