2017年10月にハワイのパンスターズ望遠鏡で発見されたのは、史上初の恒星間天体でした。
名前はハワイ語で「遠方からやってきた最初の使者」を意味する“オウムアムア”。
ただ、その起源や性質をめぐっては、今も議論が続いているんですねー
そんな中出てきたのが、“オウムアムア”の不思議な性質を説明する仮説でした。
分子雲で誕生した“水素ガスの氷山”としているのですが、検証してみると、どうも違うようです。
巨大分子雲で形成された水素分子の氷が豊富な天体
2017年、観測史上初めて太陽系外から飛んで来たことを示す軌道を描いて、太陽に接近した恒星間天体“オウムアムア”。
当初は、金属や岩石が主成分だと考えられていました。
その後、太陽から遠ざかる“オウムアムア”が、重力の影響だけでは説明できない、ガスを噴出したかのような加速をしていたことが判明するんですねー
このことから、“オウムアムア”は彗星のように氷を多く含み、その氷が蒸発したことで加速したのではないかという説が出てきます。
ところが、NASAの赤外線天文衛星“スピッツファー”などの観測では、彗星から蒸発したガスに豊富に含まれるはずの炭素を含む分子は、“オウムアムア”からは検出できませんでした。
そして2020年6月のこと、アメリカ・イェール大学の研究チームが、“オウムアムア”は巨大な分子雲で形成された“水素分子の氷山”のような天体だとする仮説を発表します。
仮に“オウムアムア”が分子雲コアで成長した水素分子の氷山だった場合、太陽に加熱されて揮発した水素分子が放出されることで“オウムアムア”は加速を受けることに。
さらに、水素ガスであれば“オウムアムア”を加速するほど噴出しても、“スピッツファー”では観測することができないというわけです。
また、“オウムアムア”は全長およそ400メートルの細長い天体と見られていますが、もともとこれよりも大きなサイズだった“オウムアムア”が太陽に接近したことで水素分子が急速に揮発して失われたとすれば、その特徴的な形も説明できるはずです。
巨大分子雲では水素分子の氷が成長できない可能性が高い
“水素分子の氷山”説の検証により、その可能性が低いとする研究成果も発表されています。
この仮説は、水素の氷が高密度の分子雲で形成されうるという前提に基づいています。
ただ、前提が正しいかどうかは、まだ分かっていません。
水素の氷山はすぐに蒸発するので、数億年を要するであろう“オウムアムア”の長旅で生き残れないのでは? っという疑問も出ています。
さらに、分子雲の中で形成されるということも懐疑的に受け止められていました。
そこで、地球に近い巨大分子雲の一つで1万7000光年の距離に位置する“W51”を“オウムアムア”の故郷と考えて研究を実施。
その結果、分かってきたのは、水素の氷がバラバラにならずに太陽系に辿り着くのは無理だろうということでした。
調べられたのは、恒星間を飛び交う電磁波、宇宙線、ガスなどによる影響… とりわけ壊滅的だったのは恒星からの熱でした。
さらに、分子雲の中でガスが衝突することにより天体が加熱され、水素が蒸発してしまうことにより、“オウムアムア”は分子雲を脱出することすらできないこと。
それどころか、水素の氷がマイクロメートル級の小さなチリ粒に集まった時点で、分子雲中のガスとの衝突により蒸発することに…
なので、そもそも“オウムアムア”のように大きな水素分子の氷山は誕生できないことになります。
“オウムアムア”は発見された時点で、すでに太陽から遠ざかりつつあったので、観測できた期間が限られていて、どのような性質の天体であるのかは今も議論が続いています。
でも、“オウムアムア”が唯一の独特な天体でなければ、その答えが得られるまでに、それほどの時間は必要ないと考えられています。
それに必要なのは、様々な軌道を持つ“オウムアムア”の仲間のが存在。
そこで、期待されるのが、来年の観測開始が予定されている南米チリのヴェラ・ルービン天文台です。
この天文台の大型シノプティック・サーベイ望遠鏡“LSST”は、口径が8.4メートルもあり非常に広視野・高感度なので、1か月に1個くらいのペースで“オウムアムア”のような天体の検出が可能なようです。
今年の4月に発表された仮説には「恒星の潮汐力で破壊された天体の破片から形成された」というものもあります。
もし、“オウムアムア”に似た恒星間天体を見つけることができれば、どのような性質の天体なのかも分かるはず。
そして、新しい発見にも期待してしまいますね。
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名前はハワイ語で「遠方からやってきた最初の使者」を意味する“オウムアムア”。
ただ、その起源や性質をめぐっては、今も議論が続いているんですねー
そんな中出てきたのが、“オウムアムア”の不思議な性質を説明する仮説でした。
分子雲で誕生した“水素ガスの氷山”としているのですが、検証してみると、どうも違うようです。
巨大分子雲で形成された水素分子の氷が豊富な天体
2017年、観測史上初めて太陽系外から飛んで来たことを示す軌道を描いて、太陽に接近した恒星間天体“オウムアムア”。
当初は、金属や岩石が主成分だと考えられていました。
その後、太陽から遠ざかる“オウムアムア”が、重力の影響だけでは説明できない、ガスを噴出したかのような加速をしていたことが判明するんですねー
このことから、“オウムアムア”は彗星のように氷を多く含み、その氷が蒸発したことで加速したのではないかという説が出てきます。
ところが、NASAの赤外線天文衛星“スピッツファー”などの観測では、彗星から蒸発したガスに豊富に含まれるはずの炭素を含む分子は、“オウムアムア”からは検出できませんでした。
恒星間天体“オウムアムア”のイメージ図。その性質については今も議論が続いている。(Credit: ESO/M. Kornmesser) |
この仮説では、水素分子の集まりである分子雲の中でも高密度で低温な分子コアでは、6ケルビン(摂氏およそマイナス267度)で昇華してしまう水素分子も固体のまま集まって成長することが可能だとしている。
仮に“オウムアムア”が分子雲コアで成長した水素分子の氷山だった場合、太陽に加熱されて揮発した水素分子が放出されることで“オウムアムア”は加速を受けることに。
さらに、水素ガスであれば“オウムアムア”を加速するほど噴出しても、“スピッツファー”では観測することができないというわけです。
また、“オウムアムア”は全長およそ400メートルの細長い天体と見られていますが、もともとこれよりも大きなサイズだった“オウムアムア”が太陽に接近したことで水素分子が急速に揮発して失われたとすれば、その特徴的な形も説明できるはずです。
巨大分子雲では水素分子の氷が成長できない可能性が高い
“水素分子の氷山”説の検証により、その可能性が低いとする研究成果も発表されています。
この仮説は、水素の氷が高密度の分子雲で形成されうるという前提に基づいています。
ただ、前提が正しいかどうかは、まだ分かっていません。
水素の氷山はすぐに蒸発するので、数億年を要するであろう“オウムアムア”の長旅で生き残れないのでは? っという疑問も出ています。
さらに、分子雲の中で形成されるということも懐疑的に受け止められていました。
そこで、地球に近い巨大分子雲の一つで1万7000光年の距離に位置する“W51”を“オウムアムア”の故郷と考えて研究を実施。
その結果、分かってきたのは、水素の氷がバラバラにならずに太陽系に辿り着くのは無理だろうということでした。
調べられたのは、恒星間を飛び交う電磁波、宇宙線、ガスなどによる影響… とりわけ壊滅的だったのは恒星からの熱でした。
さらに、分子雲の中でガスが衝突することにより天体が加熱され、水素が蒸発してしまうことにより、“オウムアムア”は分子雲を脱出することすらできないこと。
それどころか、水素の氷がマイクロメートル級の小さなチリ粒に集まった時点で、分子雲中のガスとの衝突により蒸発することに…
なので、そもそも“オウムアムア”のように大きな水素分子の氷山は誕生できないことになります。
“オウムアムア”は発見された時点で、すでに太陽から遠ざかりつつあったので、観測できた期間が限られていて、どのような性質の天体であるのかは今も議論が続いています。
でも、“オウムアムア”が唯一の独特な天体でなければ、その答えが得られるまでに、それほどの時間は必要ないと考えられています。
それに必要なのは、様々な軌道を持つ“オウムアムア”の仲間のが存在。
そこで、期待されるのが、来年の観測開始が予定されている南米チリのヴェラ・ルービン天文台です。
この天文台の大型シノプティック・サーベイ望遠鏡“LSST”は、口径が8.4メートルもあり非常に広視野・高感度なので、1か月に1個くらいのペースで“オウムアムア”のような天体の検出が可能なようです。
今年の4月に発表された仮説には「恒星の潮汐力で破壊された天体の破片から形成された」というものもあります。
もし、“オウムアムア”に似た恒星間天体を見つけることができれば、どのような性質の天体なのかも分かるはず。
そして、新しい発見にも期待してしまいますね。
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