多波長で初期宇宙の銀河を探索する初めての大規模探査プロジェクトが“ALPINE”です。
今回、“ALPINE”の研究チームが調査したのは、初期宇宙で成長途中にある118個の銀河。
用いられたのは、国立天文台も運用に参加している南米チリのアルマ望遠鏡でした。
その結果分かってきたのは、調査した銀河の多くは大量のチリや金属元素を含んでいて、すでに回転円盤銀河になる兆候を示していること。
これまでの予想に反して、はるかに銀河が成熟していたことが明らかになったんですねー
銀河がどのようにして急速な成長を遂げ、なぜ一部の銀河はすでに回転円盤を持っているのでしょうか?
研究チームではさらなる解析を行い、初期宇宙における銀河進化の謎の解明に挑むようです。
例えば、私たちの属する天の川銀河の形成が始まったのは、136億年前だと考えられています。
そして、多くの銀河が急速に成長したのが、宇宙が誕生してから10~15億年後(138億年前)の初期宇宙。
この成長期間で、現在の宇宙で見られる銀河の特徴になる大量の星や星間チリ、大量の金属、渦巻円盤構造といったものが出来上がったと考えられています。
なので、天の川銀河のような銀河が、どのように形成されたかを知るには、この初期宇宙にある銀河を研究することが重要になってきます。
すると、研究チームが予想していたよりも、はるかに銀河が成熟していることが明らかになったんですねー
銀河に多くの星間チリや重元素が含まれていると、その銀河は成熟しているとみなされます。
そのチリや重元素は、銀河内で作られた星が最期を迎えるときに、副産物として銀河内に放たれたものになります。
ただ、初期宇宙の銀河は、宇宙誕生から十分な時間もなく、多くの星を作る時間がありません。
なので、この時代の銀河からは、少量のチリや金属元素しか観測できないと考えられてきました。
でも、今回分かってきたのは、初期宇宙における銀河のうち約20%は、すでに非常に多くのチリを含んでいて、生まれたばかりの星から発せられる紫外線の多くが星間チリによって吸収されていることでした。
後の時代の銀河のチリと比べて、初期宇宙における銀河の星間チリは光を吸収する性質が異なっているという証拠も見つかっていて、銀河におけるチリの特性の「進化」の様子がうかがえるようです。
さらに示されたのは、宇宙誕生後10~15億年の間に、急速にチリが銀河を覆い隠す様子でした。
このことから、この時代が初期宇宙の銀河におけるチリの成長にとって、重要な時期だということを明らかにしています。
一般的に初期宇宙の銀河は頻繁に衝突することから、きれいな構造を持たずにまるで塊同士の衝突事故が起きたように見えると予想されていました。
でも、今回観測した銀河は違っていました。
分かってきたのは、衝突している銀河はたくさんあるけど、それら銀河の多くは衝突の影響を受けずに規則正しく回転していること。
その中には、星で見えている銀河円盤の4倍にも至る巨大な重元素ガスが、銀河を大きく包み込みながら回転しているものもあったそうです。
このような銀河は初期宇宙で特殊な存在なのでしょうか?
それとも一般的なものなのでしょうか?
残念ながら、これまでの観測からは明らかにされていません。
ただ“ALPINE”は、研究者が初期宇宙にある多数の銀河の観測を可能にした最初の探査プロジェクトであり、今回の研究結果は銀河がこれまで考えられていたよりも速く進化する可能性があることを示しています。
一方、これらの銀河がどのようにして急速な成長を遂げ、なぜ一部の銀河がすでに回転円盤を持っているのかは分かりませんでした。
そうすれば、チリが銀河の中でどう分布しているのか、ガスがどのように銀河の中を運動しているのかを詳しく知ることができるはずです。
また、チリの多い銀河とそうでない銀河を比較し、初期宇宙において銀河周囲の環境がどのように影響を及ぼすのかなども調べる必要があります。
ここで、アルマ望遠鏡による観測が、初期宇宙における銀河進化の謎を調べようとする“ALPINE”の研究チームにとって重要な役割を果たすことになります。
それは、アルマ望遠鏡のような電波を使った観測では、星間チリに覆い隠されている星形成の様子を確かめ、放出されるガスの動きを追跡することができるからです。
これまで、初期宇宙における銀河の探索には、可視光望遠鏡や赤外線望遠鏡が使われてきました。
でも、これらの波長の光は星間チリに隠されていない銀河の星形成の様子や恒星質量の測定のみ有効で、チリに濃く覆われた銀河の領域を観測することはできなかったんですねー
アルマ望遠鏡を使うことで、ハッブル宇宙望遠鏡ですら見つけられなかった“ハッブルダーク”と呼ばれるチリに濃く覆われた銀河も発見できています。
“ALPINE”は、初期宇宙における銀河を多波長で調べる初めての大規模プロジェクトです。
銀河のサンプルデータを大量に集めるため、研究チームが収集しているのは、アルマ望遠鏡の電波による観測データのほか、ハッブル宇宙望遠鏡やハワイのケック望遠鏡、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTなどによる可視光データ、NASAの天文衛星“スピッツファー”による赤外線データといった、初期宇宙における銀河の多波長データです。
多波長での研究は、銀河がどのように成長してきたのかを完全に把握するのに必要です。
そして、このような大規模で複合的な探査調査を可能にするのが、世界中の複数の研究機関の協力になります。
今後、アルマ望遠鏡や他の望遠鏡を用いて収集した多波長のデータにより、さらなる解析が進んでいくはず。
初期宇宙における銀河進化の謎の解明が待ち遠しいですね。
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今回、“ALPINE”の研究チームが調査したのは、初期宇宙で成長途中にある118個の銀河。
用いられたのは、国立天文台も運用に参加している南米チリのアルマ望遠鏡でした。
その結果分かってきたのは、調査した銀河の多くは大量のチリや金属元素を含んでいて、すでに回転円盤銀河になる兆候を示していること。
これまでの予想に反して、はるかに銀河が成熟していたことが明らかになったんですねー
銀河がどのようにして急速な成長を遂げ、なぜ一部の銀河はすでに回転円盤を持っているのでしょうか?
研究チームではさらなる解析を行い、初期宇宙における銀河進化の謎の解明に挑むようです。
多くの銀河が急速に成長した時代
ほとんどの銀河は、宇宙がまだ非常に若いときに形成されました。例えば、私たちの属する天の川銀河の形成が始まったのは、136億年前だと考えられています。
そして、多くの銀河が急速に成長したのが、宇宙が誕生してから10~15億年後(138億年前)の初期宇宙。
この成長期間で、現在の宇宙で見られる銀河の特徴になる大量の星や星間チリ、大量の金属、渦巻円盤構造といったものが出来上がったと考えられています。
なので、天の川銀河のような銀河が、どのように形成されたかを知るには、この初期宇宙にある銀河を研究することが重要になってきます。
非常に多くのチリを含む初期宇宙の銀河
今回、大規模探査プロジェクト“ALPINE”が行ったのは、アルマ望遠鏡を用いた初期宇宙で成長途中にある118個の銀河の調査。すると、研究チームが予想していたよりも、はるかに銀河が成熟していることが明らかになったんですねー
“ALPINE(ALMA Large Program to Investigate C+ at Early Times)”は、多波長で初期宇宙の銀河を探索する初めての大規模探査プロジェクト。
南米チリのアタカマ砂漠(標高5000メートル)に建設されたのが、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(Atacama Large Millimeter/submillimeter Array = ALMA:アルマ望遠鏡)。高精度パラボラアンテナを合計66台設置し、それら全体をひとつの電波望遠鏡としてミリ波・サブミリ波を観測することができる。
南米チリのアタカマ砂漠(標高5000メートル)に建設されたのが、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(Atacama Large Millimeter/submillimeter Array = ALMA:アルマ望遠鏡)。高精度パラボラアンテナを合計66台設置し、それら全体をひとつの電波望遠鏡としてミリ波・サブミリ波を観測することができる。
銀河に多くの星間チリや重元素が含まれていると、その銀河は成熟しているとみなされます。
そのチリや重元素は、銀河内で作られた星が最期を迎えるときに、副産物として銀河内に放たれたものになります。
重元素は、恒星内部の核融合で生成された水素やヘリウムより重い元素。
ただ、初期宇宙の銀河は、宇宙誕生から十分な時間もなく、多くの星を作る時間がありません。
なので、この時代の銀河からは、少量のチリや金属元素しか観測できないと考えられてきました。
でも、今回分かってきたのは、初期宇宙における銀河のうち約20%は、すでに非常に多くのチリを含んでいて、生まれたばかりの星から発せられる紫外線の多くが星間チリによって吸収されていることでした。
後の時代の銀河のチリと比べて、初期宇宙における銀河の星間チリは光を吸収する性質が異なっているという証拠も見つかっていて、銀河におけるチリの特性の「進化」の様子がうかがえるようです。
さらに示されたのは、宇宙誕生後10~15億年の間に、急速にチリが銀河を覆い隠す様子でした。
このことから、この時代が初期宇宙の銀河におけるチリの成長にとって、重要な時期だということを明らかにしています。
銀河は考えられていたよりも速く進化する
今回観測した銀河の多くは、回転円盤銀河になる兆候を含む多様な構造を示していることから、“ALPINE”の研究チームは比較的成熟していると考えています。この回転円盤銀河は、天の川銀河のような渦巻き構造を持った銀河へと後に成長する可能性がある。
一般的に初期宇宙の銀河は頻繁に衝突することから、きれいな構造を持たずにまるで塊同士の衝突事故が起きたように見えると予想されていました。
でも、今回観測した銀河は違っていました。
分かってきたのは、衝突している銀河はたくさんあるけど、それら銀河の多くは衝突の影響を受けずに規則正しく回転していること。
その中には、星で見えている銀河円盤の4倍にも至る巨大な重元素ガスが、銀河を大きく包み込みながら回転しているものもあったそうです。
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初期宇宙における大量のチリを含んだ回転円盤銀河のイメージ図。このイメージ図では、アルマ望遠鏡を使った電波での観測で示されるように、赤色部分はガス、青/茶色部分はチリを表す。背景には超大型望遠鏡VLTやすばる望遠鏡の可視光観測データに基づく多数の他の銀河が表現されている。(Credit: B. Saxton NRAO/AUI/NSF, ESO, NASA/STScI; NAOJ/Subaru) |
このような銀河は初期宇宙で特殊な存在なのでしょうか?
それとも一般的なものなのでしょうか?
残念ながら、これまでの観測からは明らかにされていません。
ただ“ALPINE”は、研究者が初期宇宙にある多数の銀河の観測を可能にした最初の探査プロジェクトであり、今回の研究結果は銀河がこれまで考えられていたよりも速く進化する可能性があることを示しています。
一方、これらの銀河がどのようにして急速な成長を遂げ、なぜ一部の銀河がすでに回転円盤を持っているのかは分かりませんでした。
電波を使った初期宇宙における銀河の探索
遠方銀河についてより詳しく知るため、“ALPINE”の研究チームが考えているのは、個々の銀河をより長時間詳細に観測すること。そうすれば、チリが銀河の中でどう分布しているのか、ガスがどのように銀河の中を運動しているのかを詳しく知ることができるはずです。
また、チリの多い銀河とそうでない銀河を比較し、初期宇宙において銀河周囲の環境がどのように影響を及ぼすのかなども調べる必要があります。
ここで、アルマ望遠鏡による観測が、初期宇宙における銀河進化の謎を調べようとする“ALPINE”の研究チームにとって重要な役割を果たすことになります。
それは、アルマ望遠鏡のような電波を使った観測では、星間チリに覆い隠されている星形成の様子を確かめ、放出されるガスの動きを追跡することができるからです。
これまで、初期宇宙における銀河の探索には、可視光望遠鏡や赤外線望遠鏡が使われてきました。
でも、これらの波長の光は星間チリに隠されていない銀河の星形成の様子や恒星質量の測定のみ有効で、チリに濃く覆われた銀河の領域を観測することはできなかったんですねー
アルマ望遠鏡を使うことで、ハッブル宇宙望遠鏡ですら見つけられなかった“ハッブルダーク”と呼ばれるチリに濃く覆われた銀河も発見できています。
“ALPINE”は、初期宇宙における銀河を多波長で調べる初めての大規模プロジェクトです。
銀河のサンプルデータを大量に集めるため、研究チームが収集しているのは、アルマ望遠鏡の電波による観測データのほか、ハッブル宇宙望遠鏡やハワイのケック望遠鏡、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTなどによる可視光データ、NASAの天文衛星“スピッツファー”による赤外線データといった、初期宇宙における銀河の多波長データです。
多波長での研究は、銀河がどのように成長してきたのかを完全に把握するのに必要です。
そして、このような大規模で複合的な探査調査を可能にするのが、世界中の複数の研究機関の協力になります。
今後、アルマ望遠鏡や他の望遠鏡を用いて収集した多波長のデータにより、さらなる解析が進んでいくはず。
初期宇宙における銀河進化の謎の解明が待ち遠しいですね。
こちらの記事もどうぞ