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天の川銀河の中心に存在する超大質量ブラックホールの周りを回る低温ガスのリングを発見

2019年06月19日 | ブラックホール
アルマ望遠鏡による観測から、天の川銀河の中心に位置する超大質量ブラックホールの周囲に低温ガスが存在することが明らかになったんですねー

このガスはリング状の構造をしていて、ブラックホールの周りを回っているようです。


天の川銀河の中心部に存在する超大質量ブラックホール

天の川銀河の中心は太陽系から約2万6000光年の距離にあり、そこには太陽質量の400万倍もの超大質量ブラックホール“いて座A*(いて座エースター)”が存在しています。

“いて座A*”の周辺の領域には、その周りを運動する恒星や星間チリの雲のほか、大量のガスもあり、ガスはブラックホールへと落ち込む降着円盤を形成していると考えられています。

これまでのX線観測により、降着円盤のうち“いて座A*”から約0.1光年ほどの範囲に摂氏1000万度にも達する希薄な高温ガスが存在することが知られていました。

また、“いて座A*”から数光年程度の距離では、相対的に低温である摂氏1万度ほどの水素ガスが、電波の一種であるミリ波の観測によって大量に検出されています。

“いて座A*”は比較的穏やかなブラックホールなんですが、水素を電離させるには十分なほど強く放射していて、これによって電離した水素が電子と再結合する際に発生するミリ波が観測できるんですねー

でも、こうした低温ガスがブラックホールに流れ込む様子はこれまで知られていませんでした。


ブラックホールとその周辺領域の相互作用

今回、アメリカ・プリンストン高等研究所のチームは、アルマ望遠鏡を用いて“いて座A*”から0.01光年ほど離れた場所からのミリ波を観測。
  0.01光年はだいたい太陽から地球までの距離の約1000倍。

そして、この場所にも低温ガスが存在することや、ガスがリング状構造をしていることを初めて明らかにします。
○○○
低温ガスのリング状構造を表したイラスト。
リングに含まれる水素ガスの総量の見積りは太陽質量の1万分の1ほど。

さらに分かってきたのが、このリングが“いて座A*”の周りを回っていること。
○○○
低温ガスの動きを色で表したもの。
赤は遠ざかるガス、青は近づくガス。
これらの動きからリングが、
“いて座A*”(白い十字で示した位置)の周りを回っていることが分かる。
このことは、ブラックホールへ物質がどのように落ち込むのか?
さらに、ブラックホールとその周辺領域との複雑な相互作用に関する新たな見識になるんですねー

天の川銀河の中心に存在する超大質量ブラックホール“いて座A*”には、その周りを回っている隠れたリングがあることが初めてとらえられました。

私たちに最も近い重要な天体なんですが、物質がどのように落ち込むのかついては、これまでよく分かっていません。
今後行われるアルマ望遠鏡による高解像の観測により、ブラックホールの謎の解明がさらに進むといいですね。


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見かけでは判断できない? 銀河での星形成活動

2019年06月17日 | 銀河・銀河団
銀河の形の違いが星形成効率の差を生み出す。
っというこれまでの定説を覆す結果が国立天文台野辺山の電波観測で得られました。

今後、星形成の止まった銀河には楕円銀河が多い っという銀河の性質を説明するには、別の理論が必要になるのかもしれません。


星形成活動に影響を及ぼすメカニズム

宇宙に存在する銀河は、新たな星を活発に生み出している銀河(星形成銀河)と、星形成がほぼ止まっている銀河(非星形成銀河)の2種類に分かれます。

星形成銀河の中で星を生み出す活動が止まると、その銀河は非星形成銀河へと進化すると考えられているのですが、銀河の星形成活動がどのようにして衰えたり止まったりするのかは完全には解明されていませんでした。

ただ、銀河の星形成が止まる仕組みを考える上で、銀河の“形”が重要な要素の1つになっているようです。

それは、星形成銀河の多くは円盤上で渦巻構造を持つ“円盤銀河”で、非星形成銀河はのっぺりした楕円型で細かい構造を持たない“楕円銀河”がほとだと知られているからです。

このことから、銀河の形と星形成活動の間には密接な関係がると考えることができるんですねー
星形成活動に何らかの影響を及ぼすメカニズムが、銀河の“形”に存在しているのかもしれません。


楕円銀河では星形成活動が抑制されやすい

こうしたメカニズムの候補として、“形態による星形成の抑制”というモデルが提唱されています。

楕円型の銀河では、銀河の星々は円盤銀河の場合よりも銀河中心部により集中して分布しています。

この場合、楕円銀河の中心にあるガス雲には、ガス雲自身の自己重力よりも銀河全体の重力の方が強く働き、ガス雲が分裂・収縮して星になる作用が円盤銀河の場合よりも効きづらくなります。

このため、楕円銀河では同量の分子ガスから星を生み出す割合“星形成効率”が円盤銀河よりも低くなり、星形成活動が抑制されやすい っというのが“形態による抑制”説です。

実際の観測でも、楕円銀河の星形成効率は円盤銀河に比べて低いというデータが得られています。

でも、これまでの観測研究では“星形成をしている円盤銀河”と“星形成をしていない楕円銀河”でしか星形成効率を比べていませんでした。
銀河の形の影響だけを抜き出して正しく見積もることが出来ていないのかもしれません。


円盤型と楕円型の両方を含む銀河

今回、愛媛大学宇宙進化研究センターのチームは、銀河の形と星形成効率の関係を正しく評価するため、“グリーンバレー銀河”と呼ばれる銀河のグループに着目しました。

それは、“グリーンバレー銀河”が星形成銀河から非星形成銀河への進化途中にある銀河だと考えられていたからです。
青っぽい星形成銀河と赤っぽい非星形成銀河の中間的な性質を持っているので、グリーンバレー(緑色の谷間)と名付けられています。

円盤型と楕円型両方の銀河を含んでいる“グリーンバレー銀河”は、銀河の形と星形成効率の関係を調べるのに適しているといえます。
○○○
(左)銀河に含まれる星の質量と星形成率(1年間に作られる星の質量)の関係。
銀河には大きく分けて“星形成銀河”と“非星形成銀河”の2種類が存在し、
矢印の方向に進化すると考えられている。
“グリーンバレー銀河”は両者の中間的な性質を持っている。
(右)今回電波観測を行った“グリーンバレー銀河”を可視光線でとらえた画像。
円盤型の銀河には平べったい渦巻構造が見られる。
一方、楕円型は特徴があまりなく、ぼんやりとした楕円球のような姿をしている。


形の違いによる星の形成効率の差はほとんど無い

研究チームは“グリーンバレー銀河”の中から円盤型の銀河を13個、楕円型の銀河を15個選出。
国立天文台野辺山宇宙電波観測所の45メートル電波望遠鏡を用いて、一酸化炭素(CO)輝線の強さを測定しています。

CO輝線の強さを測ると、星の材料になる分子ガスがその銀河にどれくらい存在していたかを知ることが出来ます。

このCO輝線の強度データと、スローンデジタルスカイサーベイでこれらの銀河を可視光線で観測したデータから、各銀河の星形成率(1年間に新たに生み出す星の総質量)を求めています。

さらに導き出したのは、これら2つの情報を組み合わせた各銀河の“星形成効率”(銀河の星形成率をその銀河に含まれる分子ガスの質量で割った値)。
○○○
(上段)スローン・デジタル・スカイ・サーベイで得られた円盤型(左)と
楕円型(右)の“グリーンバレー銀河”の可視光線画像。
(下段)野辺山45メートル電波望遠鏡でとらえた各銀河のCO輝線。
こうして求めた各銀河の星形成効率を比べてみると、調査した銀河のサンプルは全体的に星形成効率が低いものの、形の違いによる星形成効率の差はほとんどないことが分かります。

つまり、“グリーンバレー銀河”の星形成効率は形とは関係無く低い状態にあるということになるんですねー

これは、近年支持されてきた“形態による抑制”説を覆す結果…
銀河の星形成活動が止まるのに形の変化は必ずしも必要でないことを示唆するものでした。
○○○
研究チームが調査した円盤型と楕円型の“グリーンバレー銀河”の星形成効率。
両者の平均的な星形成効率には違いがなく、形によらずどちらの銀河でも同じ量の分子ガスからは、
同じ効率で新たな星が生み出されている。
今回の結果を踏まえると、銀河に見られる“形と星形成の活発さ”の関係は、何か別の原因によって作り出されていることになります。

楕円銀河では銀河内の分子ガスの量自体が、円盤銀河よりも少なくなってしまうような何らかのメカニズムがあるのでしょうか?

そこで研究チームが計画しているのが、より分解能の高いアルマ望遠鏡を観測に使うこと。
“グリーンバレー銀河”の内部で分子ガスが、どのように分布しているのかを詳細に調べるそうですよ。


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地球と月の成分構成がほぼ同じなのはなぜ? 月の誕生には地球のマグマオーシャンが関わっているから

2019年06月15日 | 月の探査
月はどうやって誕生したのでしょうか?
これまで月が形成される起源については、いくつかの仮説が提唱されてきました。

有力なのは、地球に火星くらいの大きさの天体“テイア”が斜めに衝突し、バラバラになった“テイア”と地球の一部がまとまって月になったという“ジャイアントインパクト説”。

ただ、この説は地球の一部と“テイア”から形成されたはずの月が、地球と成分が似すぎているという問題を抱えることに…

今回、この問題を解決するために“ジャイアントインパクト説”の数値シミュレーションを実施。
“テイア”との衝突が起こった際に、原始地球にマグマオーシャンが存在していれば問題の解決は可能なようです。

ジャイアントインパクト説

私たちにとって最も身近な天体の1つになる月は、太陽系の歴史の中でいつ頃どのように地球の衛星になったのでしょうか?

偶然地球の近くを通りかかったときに地球にとらえられた?
それとも、地球とほぼ同時に形成された?

まだ、はっきりとは分かっていませんが、最も有力と考えられているものに“ジャイアントインパクト(巨大衝突)説”があります。

この説によると、48億年ほど前の地球に火星サイズの天体“テイア”が衝突。
岩石は蒸発し地球の周りにばら撒かれ、やがて円盤状に原始地球を取り巻き、それらが重力によって集まり月になったとされています。

“ジャイアントインパクト説”だと地球と月の様々な特徴を説明することができるのですが、説明できない観測結果もあるんですねー

この説によると、月の成分の5分の1は地球の物質で、残る5分の4が衝突した天体の物質ということになります。
でも、実際にはそうならず… アポロ計画で月から持ち帰られた岩石中の元素の同位体比が地球のものとほぼ一致。

そう、このことが意味しているのは、月を構成する岩石が元々地球のものだったということです。
このことは、ジャイアントインパクト説の支持者たちを長く困惑させてきた矛盾点でした。

衝突時にはマグマの海が地球の表面を覆っていた

今回、海洋研究開発機構の研究チームは、理論と観測の矛盾を解決する要素として地球のマグマオーシャンを提案。

マグマオーシャンとは、大昔の地球の表面を覆っていたとされるマグマの海のこと。
液体の岩石は、固体の岩石と性質が大きく異なるので、これまでのシミュレーションとは違った結果が予想されました。

研究チームでは、理化学研究所のスーパーコンピュータ“京”を用いて大規模な数値シミュレーションを実施。
巨大衝突の直後に形成される月の材料になる円盤の中で、原始地球由来の物質がどの程度の割合になるか?
また、その割合がマグマオーシャンの有無によりどの程度変わるのかを調べます。

その結果示されたのが、マグマオーシャンが衝突時の地球に存在していれば、そのマグマオーシャンが円盤の形成に大きく寄与すること。
衝突後、地球のマグマオーシャンからマグマが噴出して、原始地球由来の物質の割合が多い円盤構造が形成されるそうです。

この円盤から月が形成されるので、月に原始地球由来の物質が多くなるというわけです。
月の材料になる物質の質量とその起源の時間進化。赤は原始地球のマグマオーシャン由来の成分、青は衝突した天体由来の成分、グレーは原始地球および衝突した天体の金属コアの成分。
月の材料になる物質の質量とその起源の時間進化。
赤は原始地球のマグマオーシャン由来の成分、青は衝突した天体由来の成分、
グレーは原始地球および衝突した天体の金属コアの成分。
さらに、天体が地球に衝突する際の角度と速度を様々に変化させたシミュレーションも実施。
このシミューレーションからは、マグマオーシャンが存在していれば、円盤中における原始地球由来の物質の割合が約7割以上にもなることが示されます。
様々な衝突角度と衝突速度のシミュレーションで得られた円盤の質量と、そのうちの原始地球からの物質の割合。赤はマグマオーシャンが存在する場合、青は存在しない場合の結果。
様々な衝突角度と衝突速度のシミュレーションで得られた円盤の質量と、
そのうちの原始地球からの物質の割合。
赤はマグマオーシャンが存在する場合、青は存在しない場合の結果。
これらの結果は、原始地球に巨大衝突が起こった際、原始地球にマグマオーシャンが存在していれば、地球と月の同位体比問題の解決が可能であることを示唆するものです。

“ジャイアントインパクト説”は、現在の地球と月を考える上で極めて重要な仮説であり、それを元に地球のその後の熱進化などが考えられてきました。

今回の計算結果は、これまで考えられてきた初期地球とは異なる結果をもたらすことになります。
なので、現在の地球がどのように形成されたかを知る上で、大きな手掛かりになると考えられるんですねー

また、巨大衝突は原始地球だけでなく太陽系内の他の惑星でも起こったと考えられているので、惑星の多様性を説明する上でも、今回の研究成果が役立つといいですね。


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銀河は自身の星形成によって構造を成長させている? 遠方宇宙で成長中の銀河の内部を高解像度で観測して分かったこと

2019年06月13日 | 銀河・銀河団
110億年前の宇宙に存在する銀河が、すばる望遠鏡により観測されました。

この観測で用いられたのは、補償光学装置と狭帯域フィルターとを組み合わせた新しい手法。
これにより、成長中の銀河の内部を高解像度でとらえることができ、銀河の星形成領域が星の分布よりも外側まで広がっていることが明らかになったようです。


銀河内部の様子を明らかにする

今回、東北大学のチームが行ったのは、銀河内部の様子を明らかにする研究。
約110億年前の宇宙に存在する、へび座の方向の原始銀河団“USS 1558-003”をすばる望遠鏡で観測しています。
○○○
原始銀河団“USS 1558-003”。
全体像(視野約1分角×1分角)は補償光学装置無し、
拡大図は原始銀河団に属する銀河の高解像度狭帯域フィルター画像(視野3秒角×3秒角)。
観測で用いられたのは、地球大気の影響による画像のボケを補正する補償光学装置と、一部の波長のみを透過する狭帯域フィルターとを組み合わせた新しい手法。
すばる望遠鏡の大口径と合わせることによって高解像度を達成することに成功しています。

これにより、遠方銀河に存在する銀河内部の星の分布だけでなく、星形成領域の分布も0.2秒角(視力300相当)という高解像度でとらえているんですねー
○○○
(左)すばる望遠鏡の観測装置“MOIRCS”による狭帯域フィルター画像、補償光学装置無し。
(右)観測装置“IRCS”による狭帯域フィルター画像、補償光学装置有り。
各画像右下の白い丸がそれぞれの解像度を示している。


より外側に新しい星を作ることで銀河は構造を変えている

今回の観測では、一度に11個の星形成銀河について、星と星形成領域の分布も明らかにしています。
このうち、星質量の大きい星形成領域では、星形成領域が星の分布に対してより広がっていることが分かりました。

この結果が示唆していることは、外側に新しい星を作ることによって銀河の構造(星の分布)は内側から外側へと広がっていき、銀河のサイズが大きくなっていくということ。
○○○
太陽の100~1000億倍の質量をもつ星形成銀河内部における星質量密度(破線)と、
星形成率密度(実線)の平均的な半径方向の分布。
星質量密度の分布と比較して、星形成率密度の分布は穏やかな傾きを持ち、
星形成領域が銀河本体の星の構造よりもさらに外側まで分布していることを示している。
この傾向が見られたのは、銀河同士の相互作用や銀河外縁部のガスの剥ぎ取りといった周辺環境からの影響を受けない、孤立した同時代の銀河でした。

つまり、約110億年前の宇宙では、銀河が高密度で存在する原始銀河団領域であっても、大質量の星形成銀河は周囲から何らかの影響を受けて進化しているというよりは、むしろ自身の星形成によって主にその構造を成長させていることを示唆するものでした。

銀河内部の星形成領域の分布は、銀河に働く物理過程を理解する上でカギになる情報です。
より詳細な研究のためには、銀河の平均的な構造を調べるだけでなく、個々の銀河について星形成領域の構造を調べる必要があるんですねー

そこで期待されているのが次世代広視野近赤外線装置“ULTIMATE-Subaru”。
この装置が完成すれば、様々な環境に属するより多くの銀河について、個々の構造成長の様子を詳細に捉えることができるそうですよ。


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全て解けると火星が深さ1.5メートルの水で覆われる? 北極の地下に大量の氷を発見

2019年06月11日 | 火星の探査
火星の北極の地下に氷の層が存在することが確認されました。
太古の極冠の名残りと考えられ、火星で最大級の水源の1つかもしれないそうです。


北極の地下に大量の水の氷

今回、火星の北極の地下に広がる氷の層を発見したのは、テキサス大学地球物理学研究所とアリゾナ大学月惑星研究所のチーム。
研究で用いられたのは、NASAの火星探査機“マーズ・リコナサンス・オービター”に搭載されている浅部レーダー“SHARAD”で観測したデータでした。

この氷の層がある深さは地下約1500メートルで、砂と氷が交互に堆積した互層になっていて、場所によっては水分を90%も含んでいます。
この氷の層が全て融けると、火星の全球が深さ1.5メートルの水で覆われるほどの量になるそうです。
○○○
火星の北極にある極冠。垂直方向の凸凹を強調している。
火星の北極の地下に、これほど大量の水の氷が見つかることは予想していなかったこと。
南北の極冠に次ぐ、火星で3番目に豊富な水源と考えられているんですねー


水の氷は氷河期に作られていた

研究チームが考えているのは、太古の火星で氷河期に極域に堆積した氷が、この層の元になったということ。

火星の氷河期は、火星の公転軌道や自転軸の傾きが周期的に変動することがで生じます。
なかでも自転軸の傾きは、約5万年の周期で大きくなったり小さくなったりします。

自転軸が立つと赤道での日射が増え、極域の日射は減って極冠が成長。
自転軸の傾きが大きくなると逆に極冠は小さくなり、ときには完全に消滅することもあったはずです。

温暖な時代には極冠は砂で覆われてしまい、この砂の層は氷が日射で蒸発するのを防ぐ働きをすることになります。

これまで、温暖な時代には極冠は消滅したと考えられてきました。
でも、今回の研究で、かなり大量の氷床の名残りが地下で生き残っていて、氷と砂の交層の中に閉じ込められていることが明らかになったんですねー
○○○
“マーズ・リコナサンス・オービター”の高解像度カメラ“HiRISE”で撮影された、
火星表面に露出している砂と氷の互層。
白っぽい色の層が水の氷、濃い青色の層が砂を表している。
火星の北極域の地下にもこのような互層の形で水の氷が存在することが明らかになった。


太古の火星に生命が存在できる環境はあったのか?

極の地下の堆積物に閉じ込められている水の総量は、驚くべきことに火星の低緯度地域に存在する氷河や地下氷床の量とほぼ同じで、できた年代も同じだそうです。

氷の層は木の年輪と同じように、火星の過去の気候を記録しています。

なので、氷の層の厚さや面積、分布範囲、組成などを調べることで、火星の昔の気候が生命の存在に適していたかどうかを知ることが出来るんですねー

さらに、過去の火星全体にどのくらいの水が存在していたか、またどのくらいの水が極域に閉じ込められているかを知ることは、火星の表面で生命が液体の水を利用できるかどうかという点で重要になってきます。

仮に生命が生きられる条件がすべて揃ったとしても、水の大半が極域に閉じ込められていれば、赤道付近の領域で十分な量の液体の水を得るのは難しくなるからです。

太古の火星に生命は存在したのでしょうか? 過去の気候や水の分布が気になりますね。


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