宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

初代星による超新星爆発が予想以上に大きく球形でなかったから、たくさんの重元素が宇宙に放出された。

2019年06月07日 | 宇宙 space
宇宙で最初に生まれた“初代星”が一生を終えるときに起こした大規模な爆発現象“超新星爆発”。

この現象が球対象ではなく、非対称なジェットを伴う激しい現象だったらしいことが、観測とシミュレーションから明らかになったようです。


ビッグバンの後、最初に生まれた恒星

138億年前のビッグバンで誕生したばかりの宇宙には、水素とヘリウムとごくわずかな量のリチウムしか存在しませんでした。

これらの元素から最初に恒星が生まれたのはビッグバンの数億年後と考えられていて、その星々は“第一世代星”や“初代星(first star)”と呼ばれています。

水素やヘリウムしか含まない原始ガス雲は光を出して冷えることがあまりないので、重力が圧力に打ち勝って収縮して星になるためには、ガス雲の質量が大きい必要があるんですねー

なので、初代星は太陽質量の100倍くらいの非常に重い星が多く、わずか1000万年程度で超新星爆発を起こしていたと考えられています。

リチウムより重いすべての元素(重元素)は、こうした初代星の内部で最初に合成され、超新星爆発でばらまかれることになります。

ばらまかれた残骸のガスから第二世代の星が作られ、その星が爆発して星間ガスに還る っという過程が繰り返されることで、宇宙の中で重元素が次第に増えていきす。

このため、初代星は初期宇宙の進化を理解する上で非常に重要な天体なんですが、確実に初代星だといえる天体は観測ではまだ見つかってないんですねー

ただ、鉄の量が極めて少ない星がいくつか見つかっているので、それらのうちのいくつかは、初代星の残骸から生まれた“第二世代”目の恒星だと考えられています。


実は大きかった初代星による超新星爆発

2005年にうみへび座の方向約5000光年の彼方で見つかった恒星“HE 1327-2326”は、第二世代星だと考えられている星の1つです。

この恒星“HE 1327-2326”を、マサチューセッツ工科大学の研究チームが2016年5~7月にわたって観測。
観測にはハッブル宇宙望遠鏡の紫外線分光装置“Cosmic Origins Spectrograph”が使われました。

スペクトルから様々な重元素の存在量を調べてみると、この星に含まれる亜鉛の量が太陽での値に比べて6倍以上も多いことが分かります。
○○○
(上)重元素が少ない星での鉄と亜鉛の存在量を示したグラフ。
横軸が水素に対する鉄の含有率で、左に行くほど鉄が少ない。
縦軸は鉄に対する亜鉛の含有率で、上に行くほど亜鉛が多い。
青い星印の“HE 1327-2326”は鉄が極端に少なく、亜鉛を多く含んでいる。
(下)“HE 1327-2326”で観測された各元素の存在量(赤丸)と、
超新星爆発シミュレーションで生成された元素の存在量(実線)を比べたもの。
質量が25太陽質量でジェットを吹き出すという超新星爆発モデル(黒の実線)の場合に、
炭素や亜鉛の量を最もよく再現できた。
そこで研究チームは、超新星爆発や第二世代星形成のシミュレーションを専門とする東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の研究チームと共同研究を行うことにします。

東大チームが調べたのは、初代星がどのような超新星爆発を起こせば、亜鉛の多い第二世代星が生まれるのか。条件を様々に変えて1万回以上もの爆発シミュレーションを行います。

シミュレーションの結果分かったのは、初代星が単純な球対象の爆発をした場合には、多量の亜鉛は撒き散らされないことでした。

初代星のような極めて質量の大きな星が超新星爆発を起こすとブラックホールができます。
そうなると初代星で合成された重元素の大半は、ブラックホールに吸い込まれてしまい外に出て来れないんですねー

一方、初代星がジェットを噴き出すような球対象でない超新星爆発を起こすと、たくさんの重元素がジェットによって中心核から運ばれ、外に放出されることが明らかになりました。
○○○
初代星の超新星爆発をシミュレーションした画像。
爆発の50秒後の様子を表していて、
上下に吹きだすジェットの中に見える緑色の点に亜鉛が豊富に含まれている。
これまで初代星の超新星爆発は、小規模なものだったと考えられてきました。

でも、今回研究チームは、初代星の超新星爆発はこれまで考えられていたより5~10倍もエネルギーが大きく、ジェットによって隣の銀河にまで重元素が撒き散らされるほどのものだったと推定しています。


宇宙が晴れ渡ったのは初代星の超新星爆発によって中性水素の霧が電離したから

今回の研究成果は、“宇宙の再電離”という現象を理解する上で大きな影響を与えるのかもしれません。

“宇宙の再電離”とは、ビッグバンで宇宙に電子と陽子が生まれ、両者が結びついて中性の水素原子ができた後、何らかの原因で銀河間物質が再び電離した現象のこと。
  宇宙に広がっていた中性水素の“霧”が、
  宇宙誕生から2~9億年後の時代に電離されて晴れたことにより、
  空間を通り抜けられるようになった“宇宙最初の光”が、
  現在の空に広がる“宇宙マイクロ波背景放射”として観測されている。


再電離は、初代星が放射する紫外線や超新星爆発のエネルギーによって引き起こされたと考えられているのですが、詳細は謎のまま…

これまでの観測からは、初代星が放つ紫外線はそれほど強くなく、初代星の超新星爆発も宇宙の再電離にはあまり寄与しなかったと考えることもできました。

それが今回の研究では、初代星の超新星爆発はこれまで考えられていたよりも大きいことが分かってきます。
初代星の超新星爆発は再電離を引き起こし、周辺の矮小銀河にも影響を及ぼした有力な候補になってきたんですねー

水素とヘリウムしか含まない原子ガスに重元素が混ざると、星の形成はずっと簡単に起こるようになり、特に質量の小さな星が生まれやすくなります。

初代星の強力な超新星爆発が、まだ星が誕生していなかった周辺の原始銀河雲に重元素を供給するといった役割を果たしていたとすると。
第二世代目の星は、初代星と同じ原始銀河の中で生まれたのではなく、むしろ初代星の爆発によって重元素で“汚染”された周囲の原始銀河雲の中で生まれたと考える方が自然なのかもしれません。

そう、今回の研究成果により宇宙初期における星形成の新たなルートが見えてきましたね。


こちらの記事もどうぞ
  遠くを探さなくても近くにあった! 天の川銀河を公転する宇宙最古の銀河
    

なぜ冥王星の内部にある海は凍らないの? それはメタンハイドレートがあるからかも…

2019年06月04日 | 冥王星の探査
○○○

なぜ、冥王星の内部にある地下海は凍結しないのでしょうか?

衛星のエウロパやエンケラドスなら木星や土星から受ける潮汐力が熱源になるのですが、冥王星には大きな熱源は無いはず…

今回、数値シミュレーションから示されたのは、地下にメタンハイドレートが存在していれば説明が可能だということ。
他にも、巨大な盆地や窒素の大気の存在も説明できるようですよ。


冥王星も地下に海を持っている

木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドス。

これら氷を主成分とする氷衛星のいくつかには地下に厚い氷があり、その下に“地下海”と呼ばれる凍らない海を持つことが、惑星探査機やハッブル宇宙望遠鏡による観測などから明らかになっています。
  この地下海には生命が存在している可能性があると考えられている。

ただ、地下海が存在しているのは巨大ガス惑星の衛星だけではありません。
地表温度がマイナス220度と極寒の氷天体である冥王星にも地下海が存在していることが、NASAの探査機“ニューホライズンズ”の観測データから示されているんですねー

冥王星のハート型模様に見える地域の左半分は、窒素の氷河で覆われた白い巨大な盆地になっています。

この盆地が赤道付近に存在するということが示しているのは、盆地の地下の氷が薄く地下海が厚いということ。
厚い地下海が存在していなければ、この盆地は極に向かうように冥王星が回転してしまうそうです。
○○○
(左)冥王星の自転軸、赤道、軌道方向の関係。
白いハート型は赤道付近にある。
(右)地形データを元に作成された冥王星表面の高度図。
ハート型の左半分は周りよりも高度が低く盆地になっている。


なぜ海は凍らない?

それでは、氷衛星よりも冷たく熱源にも乏しい冥王星の地下海がなぜ凍結しないのでしょうか?

この謎について、北海道大学の研究チームは新しいアイディアを提唱。
主にメタンを閉じ込めたガスハイドレートが、地下海と氷地殻の間に存在しているとして、数値シミュレーションを行っています。

水分子でできた“かご”の中に気体分子を閉じ込めた氷のような物質がガスハイドレートです。
  特にメタンを閉じ込めたメタンハイドレートは地球の海底にもあり、
  天然資源として近年注目されている物質。


研究チームでは、メタンハイドレートが通常の氷と比べて、熱伝導性が悪く高い粘性を持つことに注目します。
○○○
今回のシミュレーションで用いた冥王星内部構造のモデル。
氷の厚い地殻と地下海との間にメタンハイドレート層が存在する。
まず、行ったのが、太陽系が形成されてから現在までの約46億年間に及ぶ冥王星内部の熱・構造進化シミュレーション。

メタンハイドレートが存在しない場合は何億年も前に地下海は完全に凍結するのですが、メタンハイドレートが存在する場合には断熱材として機能し、表面は極寒でも地下海はほとんど凍結しないことが分かります。
○○○
冥王星内部の熱・構造シミュレーションの例。
横軸は時間経過、縦軸は冥王星中心からの距離、色は温度を示す。
(左)メタンハイドレートが存在しない場合、地下海は10億年ほど前に完全に凍結してしまう。
(右)メタンハイドレートが存在する場合、地下海は凍結しない。
また、氷地殻の厚さが均一化するのにかかる時間も算出。
すると、メタンハイドレートが存在しない場合には100万年程度、存在する場合には10億年以上もかかることが分かります。

盆地の地下にある薄い氷の下にある厚い地下の海は、長期間維持できるようです。


地下に海を持っている天体は特徴的な大気構成をしている

地下にガスハイドレート層が存在すると考えると、もう一つ説明がつくことがあります。

それは、冥王星の大気に窒素が多く一酸化炭素が少ないこと。
メタンや一酸化炭素はガスハイドレート層に取り込まれやすく地表にあまり出ませんが、窒素分子は取り込まれにくいので表面に出てくることが出来るんですねー

ガスハイドレート層がいわば分子吸着フィルターのような役割を果たすということです。

今回、地下海の長期維持メカニズムを新たに提唱することができ、地下海を持つ氷天体が想定以上に多く存在する可能性を示すことになりました。

また、地下海の存在が大気組成を特徴的なものにし、それは観測可能なことも示すことに…

これらのことは、宇宙における海や生命の研究において重要なことになります。
地球外生命の探査という点でも大きな成果になりますね。


こちらの記事もどうぞ
  凍りついた天体“冥王星”… でも氷が絶えず湧きあがる場所がある
    

月で地震が発生するのはなぜ? 月は熱を失い続けて収縮し、今はより高密度になるという変形を続けているから。

2019年06月01日 | 月の探査
○○○
火山やプレート運動などは存在せず、地質学的には死んだ天体のように見える月。

でも、アポロ計画で設置された地震計のデータから、月でも地震(月震)が発生していることが知られています。

また、月面には断層地形が数多く存在していて、これらは月の内部が冷えることで月全体が収縮して生じたものだと考えられています。

こうした月の冷却と収縮が現在も続いていることを示す、新たな研究成果が相次いで発表されたんですねー


月では今も断層で地震が発生している

月が冷えて収縮すると、地殻の一部が他の部分の上に乗り上げる“衝上断層”と呼ばれる地形が現れることがあります。
こうした断層はしばしば、高さ数十キロ、幅数キロにわたる階段状の断層崖を形成しているんですねー

今回の研究を進めたのはスミソニアン協会地球惑星研究センターのチーム。
月震の震源をこれまでよりも正確に求めるため、アポロ12号から16号までのミッションで月面に設置された4台の地震計のデータを新たな手法で解析しています。
  この4台の地震計は1969年から1977年までの間に、震源の浅い月震を計28回観測していて、
  その規模はマグニチュード2から5の範囲にわたっている。

研究チームでは、これらの月震の震源位置を、NASAの月探査機“ルナー・リコナサンス・オービター”でこれまでに発見されている3500か所以上の断層崖の位置と比較。
○○○
“ルナー・リコナサンス・オービター”で撮影された断層崖の例。
崖は階段状になっている(左向きの矢印)。
崖の上には岩塊が広がる平原や明るい色の土壌や砂が見られる領域が存在する(右向きの矢印)。
すると、28回の浅発地震のうち8回は、“ルナー・リコナサンス・オービター”の画像に写っている断層から30キロ以内の位置で発生していることが分かります。

そう、このことは浅発月震が断層と関係していることをうかがわせる強い証拠になるんですねー
月が今も徐々に冷えて縮み続けているので、こうした断層が今も活動していて月震を引き起こしているという証拠が初めて得られたことになります。

さらに、この8回の地震のうち6回は月が地球から最も遠い場所“遠地点”付近にある時期に発生。
遠地点では、月が地球から受ける潮汐力に由来する応力が最も強くなるので、断層が動く現象が起こりやすいのかもしれません。

月の断層が今も活動しているという証拠は他にもあります。

“ルナー・リコナサンス・オービター”が撮影した画像には、断層崖の斜面やその近くに比較的明るい色の領域があり、そこに地滑りや岩塊が写っていることがあります。

月面の物質は太陽風や宇宙線によって風化を受け、しだいに暗い色になっていきます。
なので、明るい色の領域は最近新たに表面に露出した場所ということになります。

ごく最近に月震が起こって表面の物質が地滑りを起こしたとすれば、こうした地形ができるはずです。

また、しばしば撮影されているのが、断層崖の近くで岩塊が転がり落ちた跡。
これも断層で発生した月震によって岩が谷底へ転がったものと考えられています。

月面にはたくさんの微小隕石が衝突し続けているので、こうした転石の跡は地質学的な時間スケールを見ると比較的短期間で消えてしまうはず…
それでも、こうした地形が残っているということは、断層で今も月震が起こっているという証拠になるんですねー

50年近く前のアポロ計画のデータと“ルナー・リコナサンス・オービター”のデータとを組み合わせることで、新しい発見があり月についての理解が深まったといえますね。


若いリンクルリッジを月の海で発見

衝上断層による断層崖と同じく、月が冷えて収縮することで生じる地形があります。
その地形は曲がりくねった尾根と浅い地溝からなり“リンクルリッジ”と呼ばれています。

“リンクルリッジ”は長いものでは400キロに及び、高さは300キロを超えることも…
これまで月の高地でしか発見されていなかったので、海には存在しないと考えられてきた地形なんですねー

この研究でNASAのジェット推進研究所のチームが着目したのは、月の北極付近にある“氷の海”と呼ばれる領域。
この領域を詳細に調べるために用いたのは、“ルナー・リコナサンス・オービター”が撮影した1万2000枚以上もある画像でした。

そして発見したのが、“リンクルリッジ”のような地殻変動に由来する地形が、氷の海に数千か所も存在すること。
この数は、月の高地に地殻変動地形が存在する割合とほぼ同じでした。
○○○
“ルナー・リコナサンス・オービター”の画像から“氷の海”で新たに見つかったリンクルリッジの例。
こうした地形の年代はクレーターを利用することで推定できます。
  スミソニアン協会地球惑星研究センターの研究チームが、
  転石の痕跡の年代推定で使ったのと同じ手法。

月面には絶えず微小な隕石が衝突しているので、衝突で飛散した物質が周囲に降り積もる“インパクト・ガーデニング”という過程によって次第に地形が変わっていきます。

クレーターなどの凹んだ地形は時代とともに飛散物質によって埋められ、サッカー場くらいのサイズのクレーターは10億年程度で埋まるそうです。

そして、研究チームは“ルナー・リコナサンス・オービター”の画像から、まだ埋まっていない小さなクレーターを横切るようにしてリンクルリッジが出来ている例を見つけます。

このことから、“氷の海”に見られるリンクルリッジは10億年前よりも新しい時代に作られ、推定ではこの中に4000万年前より新しいものもあるようです。

この地形は地質学的には比較的新しいものになります。
ただ、これまでの研究では、“月の海”は数十億年前に形成され、12億年前には冷却に伴う収縮は止まったと考えられてきました。

では、どうして新しい地形が作られたののでしょうか?

月は数十億年にわたって熱を失い続けることで収縮し、今はより高密度になるという変形を続けています。
そう、この変形により断層が活動し月震が引き起こされ、新しい地形が作られているんですねー


こちらの記事もどうぞ
  アポロ14号によって月から持ち帰えられたのは地球最古の岩石かもしれない