The J.B.'s / These Are The J.B.'s
2017年2月18日、ジェイムズ・ブラウンの黄金時代を支えた名ドラマー、クライド・スタブルフィールドが亡くなられました。享年73歳。腎不全でした。これまで腎臓病による長い闘病生活を続けていました。
1964年、ジェイムズ・ブラウンは「Out Of Sight」により、リズム&ブルースをファンクへと進化させました。それを皮切りに「I Got You」、「Papa's Got A Brand New Bag」と、革新的なファンク名曲を連発します。この頃、ドラムセットにはメルヴィン・パーカーが座ってました。メイシオ・パーカーのお兄さんですね。しかしメルヴィン・パーカーは65年末頃に兵役に取られてしまいます。その穴を埋めたのがジョン・ジャボ・スタークスと、クライド・スタブルフィールドでした。2人は同時期にジェイムズ・ブラウンのオーケストラに在籍し、その役割を分け合いました。それは60年代後半から70年代初頭にかけて。まさにジェイムズ・ブラウン黄金時代を支えたその両輪が、ジャボとクライドでした。
ジャボは「Licking Stick-Licking Stick」、「Get Up (I Feel Like Being A) Sex Machine」、「Soul Power」、「Hot Pants」等でドラムを叩き、一方のクライドは「Cold Sweat」、「I Got The Feeln'」、「Say It Loud - I'm Black And I'm Proud」、「Mother PopCorn」、「Funky Dramer」、「Get Up, Get Into It And Get Involved」等にファンク・ビートを提供しました。
特筆すべきは「Cold Sweat」です。ドラム、ベース、ギター、ホーンの絡み合いが一種独特のポリリズミックなファンク・グルーヴを生み出し、そこには明確な曲展開があるとは言え、ワン・コードによる中毒性の萌芽も見られる。そのリフはおそらく数あるファンク曲のなかでも最も有名なリフと言えるでしょう。これぞ、ザ・ファンクです!! その根幹を成すのはもちろんクライドのドラム。タメてつんのめってを繰り返し、グルーヴに吸い付くような粘りを持ったビートは見事としか言いようがありません。それにバーナード・オーダムのベース、ジミー・ノーランのギター、ピー・ウィー・エリスやメイシオ・パーカー等のホーン隊がまるでパーカッションのように絡み合う。リリース当時このグルーヴがどれだけ斬新だったか、それは現在ではなかなか実感出来ないかもしれませんが、おそらくは相当な衝撃だったことは間違いなく、まさに新しいJBファンクの時代の幕開けとなった名曲です。またこの曲は、シングル・リリースに際し、JBお得意のAB面に股がってのパート1、2収録になっておりまして、そのパート2ではメイシオ・パーカーのサックス・ソロに続いてクライドのドラム・ソロも収められているんです。それは”ソロ”と言うより”ブレイクビーツ”と呼んだ方がしっくり来る代物でして、まさに元祖ヒップホップです。
この後も、スピード感たっぷりに刻みまくるビート・パターンがリフ化している「I Got The Feelin'」、鋭角的な切れ味が楽曲の鋭さを物語る「Say It Loud, I'm Black And I'm Proud」、スウィンギーにハネまくる「Mother Popcorn」など、クライドのドラム無しには語れないJBファンクの名曲目白押しですが、やはり”ブレイクビーツ”という点で避けて通れないのが「Funky Dramer」です。
「Funky Dramer」という曲名からしてクライド・スタブルフィールドの為に作られた曲としか思えませんし、そのまま彼の名詞代わりともなったこの曲。「Cold Sweat」のおよそ3年後、1970年のリリース。もはや曲展開らしい展開は存在せず、7分間に渡ってジャジーなファンクの垂れ流しです。しかしこれこそJBファンクの極致!! そしてやはり後半にクライドのドラム・ブレイクが入ってまして、それこそヒップホップ界隈を中心に最もサンプリングされた曲の一つと言われる名演中の名演です。ブレイクになった瞬間にハッとさせられる程、シンプル且つクールなビートに内包された黒いグルーヴ。演奏から何十年という間、ブラック・ミュージック及びダンス・ミュージックにサンプリングされ続け(その回数は1,000回を超えるとも)、その発展に寄与した、まさにファンク・ビートの代名詞です。
さて、いつの時代のファンクが好きか? という話になると、人それぞれの好みがあるかと思いますが、私はクライド・スタブルフィールドが活躍した60年代後半のJBファンクが一番好きです。ファンクがファンキーだった時代。そこに果たしたクライドの功績は大き過ぎる程大きいことは言うまでもありません。まさにミスター・ファンキー・ドラマー!!
近年は、マスターズ・オブ・グルーヴや、ファンクマスターズといったプロジェクトで来日していたクライド・スタブルフィールド。私は1999年に、フレッド・ウェスリーがJB’s名義でジャボ・スタークスとクライド・スタブルフィールドのツイン・ドラムを伴って来日した際に見に行きました。もう既に記憶の彼方へとなりつつありますが、目の前で繰り広げられるビート・マスター達の競演に感激したのを覚えています。
クライド・スタブルフィールドさん、安らかに。
*写真のアルバムは、2014年のBLACK FRIDAY/RECORD STORE DAY 限定商品としてアナログオンリーでリリースされた、The J.B.'s の未発表アルバム。録音は1970年。The J.B.'s というと、その後にフレッド・ウェスリーを中心にしたバックバンドとして名を馳せますが、そもそもオリジナルのThe J.B.'s は、70年に新規加入したブーツィー・コリンズやキャットフィッシュ・コリンズを中心としたバンドでした。このアルバムは、そのオリジナルのThe J.B.'s による録音で、KINGからリリースされる予定だったもののお蔵入りになっていた幻の盤。レコーディング・メンバーは以下のような感じ。
Bass – William "Bootsy" Collins
Guitar – Phelps "Catfish" Collins
Drums – Clyde Stubblefield, Frank "Kash" Waddy
Congas – Johnny Griggs
Flute, Baritone Saxophone – St. Clair Pinckney
Tenor Saxophone – Robert McCullough
Trumpet – Clayton "Chicken" Gunnels, Darryl "Hasaan" Jamison
Organ – James Brown
Piano – Bobby Byrd
James Brown - Cold Sweat / Ride the Pony (medley)
こちらは68年のライヴから「Cold Sweat」。JBによる名文句 "give the drummer some" の掛け声に呼応するが如く、スタジオ録音よりは若干ソロらしいソロを叩く若きクライド・スタブルフィールドの勇姿は6分過ぎから。
2017年2月18日、ジェイムズ・ブラウンの黄金時代を支えた名ドラマー、クライド・スタブルフィールドが亡くなられました。享年73歳。腎不全でした。これまで腎臓病による長い闘病生活を続けていました。
1964年、ジェイムズ・ブラウンは「Out Of Sight」により、リズム&ブルースをファンクへと進化させました。それを皮切りに「I Got You」、「Papa's Got A Brand New Bag」と、革新的なファンク名曲を連発します。この頃、ドラムセットにはメルヴィン・パーカーが座ってました。メイシオ・パーカーのお兄さんですね。しかしメルヴィン・パーカーは65年末頃に兵役に取られてしまいます。その穴を埋めたのがジョン・ジャボ・スタークスと、クライド・スタブルフィールドでした。2人は同時期にジェイムズ・ブラウンのオーケストラに在籍し、その役割を分け合いました。それは60年代後半から70年代初頭にかけて。まさにジェイムズ・ブラウン黄金時代を支えたその両輪が、ジャボとクライドでした。
ジャボは「Licking Stick-Licking Stick」、「Get Up (I Feel Like Being A) Sex Machine」、「Soul Power」、「Hot Pants」等でドラムを叩き、一方のクライドは「Cold Sweat」、「I Got The Feeln'」、「Say It Loud - I'm Black And I'm Proud」、「Mother PopCorn」、「Funky Dramer」、「Get Up, Get Into It And Get Involved」等にファンク・ビートを提供しました。
特筆すべきは「Cold Sweat」です。ドラム、ベース、ギター、ホーンの絡み合いが一種独特のポリリズミックなファンク・グルーヴを生み出し、そこには明確な曲展開があるとは言え、ワン・コードによる中毒性の萌芽も見られる。そのリフはおそらく数あるファンク曲のなかでも最も有名なリフと言えるでしょう。これぞ、ザ・ファンクです!! その根幹を成すのはもちろんクライドのドラム。タメてつんのめってを繰り返し、グルーヴに吸い付くような粘りを持ったビートは見事としか言いようがありません。それにバーナード・オーダムのベース、ジミー・ノーランのギター、ピー・ウィー・エリスやメイシオ・パーカー等のホーン隊がまるでパーカッションのように絡み合う。リリース当時このグルーヴがどれだけ斬新だったか、それは現在ではなかなか実感出来ないかもしれませんが、おそらくは相当な衝撃だったことは間違いなく、まさに新しいJBファンクの時代の幕開けとなった名曲です。またこの曲は、シングル・リリースに際し、JBお得意のAB面に股がってのパート1、2収録になっておりまして、そのパート2ではメイシオ・パーカーのサックス・ソロに続いてクライドのドラム・ソロも収められているんです。それは”ソロ”と言うより”ブレイクビーツ”と呼んだ方がしっくり来る代物でして、まさに元祖ヒップホップです。
この後も、スピード感たっぷりに刻みまくるビート・パターンがリフ化している「I Got The Feelin'」、鋭角的な切れ味が楽曲の鋭さを物語る「Say It Loud, I'm Black And I'm Proud」、スウィンギーにハネまくる「Mother Popcorn」など、クライドのドラム無しには語れないJBファンクの名曲目白押しですが、やはり”ブレイクビーツ”という点で避けて通れないのが「Funky Dramer」です。
「Funky Dramer」という曲名からしてクライド・スタブルフィールドの為に作られた曲としか思えませんし、そのまま彼の名詞代わりともなったこの曲。「Cold Sweat」のおよそ3年後、1970年のリリース。もはや曲展開らしい展開は存在せず、7分間に渡ってジャジーなファンクの垂れ流しです。しかしこれこそJBファンクの極致!! そしてやはり後半にクライドのドラム・ブレイクが入ってまして、それこそヒップホップ界隈を中心に最もサンプリングされた曲の一つと言われる名演中の名演です。ブレイクになった瞬間にハッとさせられる程、シンプル且つクールなビートに内包された黒いグルーヴ。演奏から何十年という間、ブラック・ミュージック及びダンス・ミュージックにサンプリングされ続け(その回数は1,000回を超えるとも)、その発展に寄与した、まさにファンク・ビートの代名詞です。
さて、いつの時代のファンクが好きか? という話になると、人それぞれの好みがあるかと思いますが、私はクライド・スタブルフィールドが活躍した60年代後半のJBファンクが一番好きです。ファンクがファンキーだった時代。そこに果たしたクライドの功績は大き過ぎる程大きいことは言うまでもありません。まさにミスター・ファンキー・ドラマー!!
近年は、マスターズ・オブ・グルーヴや、ファンクマスターズといったプロジェクトで来日していたクライド・スタブルフィールド。私は1999年に、フレッド・ウェスリーがJB’s名義でジャボ・スタークスとクライド・スタブルフィールドのツイン・ドラムを伴って来日した際に見に行きました。もう既に記憶の彼方へとなりつつありますが、目の前で繰り広げられるビート・マスター達の競演に感激したのを覚えています。
クライド・スタブルフィールドさん、安らかに。
*写真のアルバムは、2014年のBLACK FRIDAY/RECORD STORE DAY 限定商品としてアナログオンリーでリリースされた、The J.B.'s の未発表アルバム。録音は1970年。The J.B.'s というと、その後にフレッド・ウェスリーを中心にしたバックバンドとして名を馳せますが、そもそもオリジナルのThe J.B.'s は、70年に新規加入したブーツィー・コリンズやキャットフィッシュ・コリンズを中心としたバンドでした。このアルバムは、そのオリジナルのThe J.B.'s による録音で、KINGからリリースされる予定だったもののお蔵入りになっていた幻の盤。レコーディング・メンバーは以下のような感じ。
Bass – William "Bootsy" Collins
Guitar – Phelps "Catfish" Collins
Drums – Clyde Stubblefield, Frank "Kash" Waddy
Congas – Johnny Griggs
Flute, Baritone Saxophone – St. Clair Pinckney
Tenor Saxophone – Robert McCullough
Trumpet – Clayton "Chicken" Gunnels, Darryl "Hasaan" Jamison
Organ – James Brown
Piano – Bobby Byrd
James Brown - Cold Sweat / Ride the Pony (medley)
こちらは68年のライヴから「Cold Sweat」。JBによる名文句 "give the drummer some" の掛け声に呼応するが如く、スタジオ録音よりは若干ソロらしいソロを叩く若きクライド・スタブルフィールドの勇姿は6分過ぎから。