ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
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『武器ではなく命の水を ~医師・中村哲とアフガニスタン~』

2019-12-12 16:32:11 | 日記


ETVの『武器ではなく命の水を ~医師・中村哲とアフガニスタン~』というドキュメントをみました。

先日亡くなった中村哲さんを扱った番組です。
今から3年ほど前のものですが、中村哲さんの追悼ということで、再放送されていました。

このドキュメントをみて、驚かされました。

水路を作るといっても、資金の提供とか人員の手配とかそういうことだろうと思ってたんですが……そんなものじゃありません。
実際の設計とか、現場の指揮とか、そういうレベルのことまで中村さんが自らやってるんですね。しかも、開削は地元住民らによる手作業。重機もあるにはあるようですが、この21世紀に水路を作るとなったら、もっと効率的に進められる技術がいくらでもあるはずで……いかに中村さんが厳しい環境下で困難なミッションに取り組んでいたかがわかります。

その困難の一つは、堰を作るところ。

これも、先進国とされる国々であればなんら難しいことではないでしょう。しかし、使える機材がかぎられているなかでは、大きな障壁となったようです。

そこで、故郷福岡は筑後川の治水技術を参考にしているという話が出てきました。
恥ずかしながら、この点について私が以前の記事で書いた内容は正確ではありませんでした……
三連水車のことを書きましたが、実際にはその近くにある山田堰をヒントにしているということです。お詫びして訂正します。

ともあれ、幾多の困難を乗り越えて水路は完成し、渇いた土地を潤します。

荒廃した土地が緑に染まっている様子は、感嘆せずにいられませんでした。

さらに、収穫の時期の黄金色の田畑……以前このブログで書いたアニメ『どろろ』の「守子唄の巻」というエピソードを思い出しました。

戦乱に翻弄されながらも、田畑を耕し、日々の糧を得るという生活を決してあきらめない――あのエピソードのラストシーンで、荒れた土地が黄金色に染まっていく様子が重なって見えたのです。

本当の意味で闘うというのはこういうことでしょう。そして、中村哲さんは、確かにその闘いに負けなかったのです。一発の銃弾も撃つことなく。緑の大地がその証です。

IS系の過激派勢力がアフガニスタンに侵蝕してきた際も、中村さんが活動していた地域ではあまりその浸透がみられなかったといいます。
それはまさに、過激思想との戦いに必要なのは、武器ではないということなのでしょう。
そして、それを持っていたからこそ、中村さんは、数千数万の軍隊を擁しながらもアメリカができなかったことを成し遂げたのです。

その勇気と使命感、そして不屈の精神には、ただ感服するばかりです。
前回の記事でも書いた福音書の言葉を、あらためて中村哲さんに捧げたいと思います。

     Blessed are the peacemakers.
    平和のために尽力するものはさいわいである。