今日4月9日は、「フォークの日」だそうです。
フォー(4)とク(9)でフォーク。
いまこの時に、フォークという音楽が意味をもっているのではないか……
そんなわけで、今回はフォークソング特集をやりたいと思います。
ピーター、ポール&マリーの「虹と共に消えた恋」。
Gone the Rainbow (Live in Japan 1967)
歌の中に、「シュー、シュー、シュラルー……」という印象的なフレーズが出てきます。
他にも明らかに英語ではない言葉がいくつも出てきており……私はスキャットだとずっと思ってたんですが、ふと思い立って調べてみると、これはアイルランドで使われているゲール語なんだそうです。
英国の戦争に動員されたアイルランド出身の兵士がイングランド人にわからないようにゲール語で会話しているという体で、こっそり脱出しようといったことを話しているんだとか。
ちなみにこの動画は、いまから10年前に発表された Live in Japan 1967 というアルバムのバージョンで、日本でのライブ音源です。
PPM50周年ということで、新たに発掘された音源を発表したもの。ただ、なにしろ1967年の話なので、あまり録音状態がよいとはいえず、時折ノイズが混じっていたりするのもそのためでしょう。
実は、このアルバムのことは、以前このブログでちょっと触れています。
そこでは、PPM50周年ということとアルバム発売にあわせて日本の朝日新聞がピーター・ヤーロウにインタビューした記事を紹介しました。その記事中に出てきたピーターの言葉をもう一度引用しておきましょう。
今こそフォークが必要だ。格差、原発、環境危機……。様々な問題に対して、手を携えて心を一つにし、本当の意味でグローバルで平和な世界を目指していなかければ。フォークはそれができる音楽だと思う。
それから十年、いまロシアによるウクライナ侵攻という事態を受けて、フォークに、音楽に何ができるのかが問われているということでしょう。
スティーヴ・アールとアリソン・ムーラーが歌う「花はどこへ行った」。
PPMも歌い、ジョーン・バエズも歌いました。日本語訳詞もあり、先日は忌野清志郎バージョンをこのブログで紹介したところです。
スティーヴ・アールという人は、だいぶ前になりますが、このブログで一度紹介しました。
カントリー系のミュージシャンですが、保守色の強い米カントリー界においては珍しく、イラク戦争にもはっきり反対していた人。
Steve Earle & Allison Moorer - Where Have All The Flowers Gone (Live at Farm Aid 2006)
「花はどこへ行った」を作ったのは、ピート・シーガー。
先述したPPMの記事でも、このレジェンドの名前は出てきました。
そこでは、94歳になったピートが FarmAidのステージに立つ動画を紹介しました。
ここで、同じステージの別の曲の動画を載せておきましょう。この曲も、PPMはカバーしていました。
Pete Seeger - This Land is Your Land (Live at Farm Aid 2013)
あらためて調べてみて知ったんですが、ピート・シーガーはこのステージからおよそ4か月後に死去しています。
文字通り、死ぬまでメッセージを歌い続けたといえるでしょう。
そのシーガーの死に接し、同じくフォークの巨人であるトム・パクストンがラジオで哀悼のパフォーマンスを披露しています。
亡き友に捧げた Peace Will Come です。
Tom Paxton - Peace Will Come [Live at Bluegrass Country Radio]
ここから、日本のフォークソングを。
まず、さだまさし「防人の詩」を、ウクライナ出身のナターシャ・グジーさんがカバーしたバージョン。
この方は、ウクライナの民族楽器バンドゥ―ラの奏者としていま注目されています。もっとも、こういうかたちで注目を集めるのは複雑な心境かもしれませんが……
防人の詩 ナターシャ・グジー / Sakimori no Uta by Nataliya Gudziy
「防人の詩」のカバーは10年以上前のもので現在のウクライナ侵攻と関係があるわけではありませんが、いまの状況と重ね合わせてきくと、胸に迫ってくるものがあります。
五つの赤い風船「血まみれの鳩」。
血まみれの鳩
血まみれの小さな鳩が
私の窓辺に 私にこう聞くんだ
この世界の空に私の休める所はないのでしょうか
どこの空を飛んでもどこの国へ行っても
傷ついたあの叫び声が
私の心をいやしてくれない
これ以上ないぐらいにストレートな反戦の歌です。
最後のほうでは、次のように歌われます。
いつわりの平和のなかで あきらめ暮らすよりも
まことの平和つくろう
そして最後は、日本フォークのレジェンド、小室等。
小室さんはPPMよりも一年早く50周年を迎え、50周年ライブを行っています。
その音源から、小室等さんが谷川俊太郎さんの詩に曲をつけた「いま生きているということ」。これはアマゾンミュージックなので、視聴環境がかぎられてしまいますが……
このライブには、谷川俊太郎さん自身も参加しており、曲の前に「モナ
・リザ」という詩を朗読しています。また、息子であるピアニストの谷川賢作さんも参加。
このもとになった谷川俊太郎さんの「生きる」について、昨年TBSのニュースで取り上げた動画があります。
動画のなかで紹介されている絵本「へいわとせんそう」も、いまの時代にこそ意味をもつものでしょう。
詩人 谷川俊太郎×小川彩佳 「生きる」が注目される理由
せっかくなので、「生きる」の詩の一部を抜粋して引用します。
生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと
生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ
生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがること
いまどこかで兵士が傷つくということ
ちなみに、50周年ライブには井上陽水さんもゲストで参加していました。
また、及川恒平、四角佳子といった古くからの仲間、さらに娘のゆいさんも「六文銭'09」のメンバーとして同じステージに。
サックスでは、ドクトル梅津こと梅津和時さんも参加しています。この方は、忌野清志郎のバックバンドでもサックスを吹いておられました。陽水さんといい、こういうところからやっぱりキヨシローにもつながっていくわけです。
もう一曲、同じ50周年ライブから、同じく谷川俊太郎さんの詩がもとになっている「死んだ男の残したものは」。
戦争の惨禍を目の当たりにして、この歌は痛切に響いてきます。