ロック探偵のMY GENERATION

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『キングコング:髑髏島の巨神』

2022-07-27 21:31:29 | 映画


映画『キングコング 髑髏島の巨神』を観ました。

先日『ゴジラVSコング』の過去記事をアップしましたが、あの映画にいたる一つの伏線といえる作品です。
この映画を観ずに『ゴジラVSコング』を観てもさほど問題はありません(実際私もそうです)が、地球空洞説、スカルクローラーといった要素がここで出てきており、そういった予備知識をもっておいたほうが、『ゴジラVSコング』、さらに再来年公開されるという新作もより楽しめるかもしれません。

映画『キングコング:髑髏島の巨神』IMAX版特別映像【HD】2017年3月25日公開

時代設定は、ベトナム戦争末期の1973年。
米軍がベトナムからの撤退を決め、ベトナムに駐留していたヘリ部隊の兵士たちが髑髏島の調査を警護……というようなことで、戦争というものについて考えさせられる内容にもなっています。

パッカード大佐率いるヘリ部隊が髑髏島のジャングルに爆弾を落とす映像は、まさにベトナム戦争をほうふつとさせます。
そして、髑髏島の守護神であるコングがそれに怒って反撃してきて、仲間が殺される。それで仲間が殺されたからといって遮二無二戦い続けようとする……髑髏島でパッカード大佐がやっていることは、まさにベトナム戦争の続きなのです。
兵士たちは、ただそれに従って犬死するだけなのか……終盤は、そういう展開にもなってきます。
そのあたりの細かいところは、例によって詳しく書きませんが……この作品が戦争というものを一つの重要なテーマに据えていることは、マーロウ中尉という人物でも表されています。
マーロウは、第二次大戦中に日本兵の軍平(MIYAVI)とともに島に不時着し、当初は敵として戦っていたものの、やがて島でともに生きていくことになったという人です。戦闘か、それとも共存か……そういうテーマが、ここでも描かれているのです。

 米兵の一人コールは、ベトナムの農民が持っていた銃を装備しています。

 「俺たちがくるまで銃なんて見たことがなかった」とそいつはいっていた。

 コールはいいます。

 敵なんて本当はいないのかもな。こっちが探さないかぎり……

しかし、パッカード大佐はあえて敵を探してしまいます。
彼は、髑髏島に戦争を持ち込んでしまうのです。

 だれも戦争からは戻れない……元のままでは

傭兵のコンラッドはいいます。
ベトナムの戦場が、大佐に戦争の狂気を植え付けた……そういうことでしょう。


と、ここまで戦争というテーマについて書いてきましたが……
もちろん、怪獣エンターテイメントとしての魅力も不足はありません。

序盤のストーリーをちょっと紹介すると、島に乗り込んだヘリ部隊は、コングの襲撃を受けて全滅。乗員たちは、島内に散り散りになって不時着します。米兵、科学者たち、反戦カメラマン、傭兵……それぞれに思惑を持った登場人物たちが、小集団に分かれて島内を移動していく多視点構成で物語が進みます。アドベンチャーの定石といえる手法で、これが髑髏島という舞台でしっかり機能しているといえるでしょう。
定石ということでいえば、女性にやさしいコングというのもそうでしょう。あるいは、未知の島にやってきた探検隊が次々に巨大生物に遭遇するという構図も……そういうふうに、過去のコング映画に対するオマージュを散りばめているところも楽しめます。


最後に、音楽について。

時代設定が1970年代初頭ということで、その頃の歌が作中にいくつか登場します。

ジェファソン・エアプレイン、ホリーズ、CCR、ブラック・サバス……そして終盤では「また会いましょう」(We'll Meet Again)なんかも。『博士の異常な愛情』でもエンディングに使われた歌ですが、あの映画で使われたような毒のあるアイロニーとしてではなく、本作ではこの歌が本来もっている意味にそって使われます。そこから導かれるエンディングも、このエンターテインメント大作にふさわしいといえるでしょう。