ロック探偵のMY GENERATION

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タイガース「僕のマリー」

2021-02-20 21:00:01 | 音楽批評


今日は音楽記事です。

ここ最近このブログでは、いわゆるグループサウンズ(GS)のバンドについて書いてきました。

スパイダースに、その弟分、テンプターズ……その流れをうけて、今回は、GSを代表するもう一つのバンド、タイガースについて書こうと思います。



タイガースは、GSのなかでも屈指の人気を誇るグループでした。

ボーカルは、沢田研二さん。
ベースは、岸部おさみ――この方は、岸部一徳といったほうがとおりがよいでしょうか。
あの『相棒』や『ドクターX』などに出演している岸部一徳さんです。知っている人は知っているとおり、岸部さんはベーシストでもあるのです。岸部さんは、ロックの名曲“のっぽのサリー”からとってサリーの愛称で呼ばれています。そのサリーさんは、タイガース結成にいたる中心人物でもありました。



「僕のマリー」は、タイガースのデビュー曲。

これもまた、いかにもGSらしい曲です。
作詞・橋本淳、作曲すぎやまこういち――というこのタッグは、タイガースの曲ではよくみられるようです。作曲がすぎやまこういちさんというのは、タイガースのみならず、GS全体を考えるうえでも重要なポイントのように思われます。子細に分析すればいろいろあると思いますが……早い話、その音使いが非常に日本人の耳にあうわけです。

その音楽面のこととは別に、タイガースといえば、加橋かつみ(gt)の“失踪”騒動で記憶されます。

先にあかしてしまうと、これは自作自演の事件でした。
本来は、加橋さんが脱退を申し出、事務所側もそれを了承しての円満な脱退だったということなんですが……これによってタイガース人気が失速することをおそれた事務所側が、芝居を打ったということのようです。

しかし、皮肉なことに、この“演出”がバンドメンバーの動揺を引き起こし、解散の一因になったといわれています。

メンバーの中でも、とりわけ瞳みのる(Dr)はこの事件に大きなショックを受け、人間不信に陥ったといいます。バンドを続けていくモチベーションも著しく低下し、そのことが、タイガーズ解散にいたる大きな原因の一つとなっていたようです。

71年1月。
タイガースは、最後の武道館公演をもって解散します。
ちなみに――前に書いたように、この71年一月というのは、スパイダースとテンプターズが日劇ウェスタン・カーニバルでその活動に終止符を打った月でもあります。
すなわち、GS三大バンドともいうべき三つのグループは、ほぼ同時に終幕を迎えたのでした。

この三者のなかでも、タイガースというバンドは、GSというもののある種の虚構性をもっともはっきり示しているように思えます。
テンプターズの記事でも書きましたが、GSというもの、バンドというものはこうあるべきという、いささか硬直したイメージが制作サイドにあり、バンドは彼らが作った仮面をかぶらされている部分があります。ショーケンさんや、岸部さんが、バンドが解散したあと俳優業という「演じる」仕事に軸足を移していったのは、そう考えると象徴的ではないでしょうか。

結局のところ、GSはその演出や虚構性のゆえに、自滅していったのだと私には思えます。

演者にとって本意でないことをやらせるというのは、一時的にはうまくいくかもしれませんが、長い目で見れば無理が出てくるということでしょう。

そしてGS失速後には、おそらくその虚構性のゆえに、元メンバーたちは身の振り方に苦労することになります。
これまでに名前が出てきた人たちの他にも、たとえば寺尾聡さんなど、かつてGSバンドをやっていたことはあまり知られていない人が多いのです。

そんななかにあって、GS時代からあまりキャリアを断絶させずに活動し続けているミュージシャンが、タイガースの沢田研二さんということになるでしょう。

というわけで……次回の音楽記事では沢田研二さんについて書こうと思います。




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