ロック探偵のMY GENERATION

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漱石の日

2021-02-21 19:34:54 | 日記



今日は、2月21日。

“漱石の日”なんだそうです。

漱石とは、もちろん、あの夏目漱石です。

今月は、“ビートルズの日”、“ストーンズの日”がありましたが……なんと日本文学界におけるレジェンドの記念日までありました。
そんなわけで、今日はこの夏目漱石という人について書こうと思います。


夏目漱石は、1867年2月9日生まれで、1916年、12月9日に死去。

つまり、2月21日というのは、誕生日でもなく死去した日というわけでもないんですが……ではなぜそれが漱石の日なのかということ、これは文学博士号を授与するという申し出を受けた漱石が、それを辞退した日ということなのです。

1911年の2月21日、当時の文部省が、夏目漱石に文学博士の称号を贈ると伝えたものの、漱石は「自分には肩書は必要ない」として辞退。このできごとを記念して、2月21日が漱石の日ということになっているのです。

ちなみに夏目漱石は、明治末期に首相をやっていた西園寺公望からの招待を断ったりもしています。

“文人宰相”として知られた西園寺は「雨声会」という文人を集めた会を主宰していましたが、漱石はその招待を計七度も断ったのだそうです。
他に招待されたのは、たとえば森鴎外や島崎藤村、泉鏡花といった名だたる文豪たち。断ったのは、漱石のほか、二葉亭四迷や坪内逍遥……
四迷と逍遥は、まあ同じサイドに立っている人でもあり、その文学的スタンスからして政治家の誘いを断るというのも納得がいくんですが……漱石はどちらかといえば四迷・逍遥とは反対の立場に立つ人です。

その漱石が、なぜ首相の誘いを断ったのか。

そこには、ロックな姿勢があるのかもしれません。

顕彰やら何ならの辞退という話で思い出すのは、このブログでも以前書いた、ジョン・レノンです。ジョンはじめ、ビートルズの面々はMBE勲章というものをもらってるんですが、ジョン・レノンは、ナイジェリアのビアフラ内戦に対するイギリスの姿勢に抗議するために、後にこれを返上しています。

まあ、“抗議”というのとはちょっと話が違うかもしれませんが……要は、漱石の場合も、権威というものになびきたくないということだったんじゃないでしょうか。
それはたとえば、山本周五郎があらゆる文学賞を辞退したというのに近いかもしれません。あるいは、このブログで以前に一度書いた話でいうと、ブラックジャックが無免許医であるとか……つまりは、権威によって箔をつけるなどということではなく、ただ自分の作品それ自体によって評されたいという、そういう矜持でしょうか。

実際、夏目漱石はロックのアティチュードを持っていたと思います。

彼の作品には、旧態依然たる“世間”とそのしきたりに従わない個人の確執が時おり描かれます。
その闘争が、ロックなのです。

島崎藤村の場合は、その確執を個人の内面の問題に帰するという日本的なやり方をとってしまった……そこが違いなのか。そんなことも考えます。自然主義の作家というからには、首相に呼ばれたって辞退するのが筋じゃないかと。政治家に招待されてのこのこ出かけていくなんてのは、ロックじゃないんです。

そこへいくと、夏目漱石のほうが、己という個人と“世間”との距離感によほど自覚的なのです。

記念日の話に戻ると、博士号授与を辞退した日が“漱石の日”になっているというのは、やはり世の多くの人が、そこに何かかっこよさを見出したためでしょう。こいつ、ロックだぜ――と。
そんなわけで、このブログとしても漱石先生をアティチュードとしてのロックンローラーに認定したいと思います。

ついでに動画。
漱石の出身地である東京都新宿区によるものです。

よみがえる明治の文豪 夏目漱石


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