今回は、映画記事です。
映画カテゴリーでは最近ずっとゴジラシリーズの作品について書いていますが……
このあたりで、いったんわき道にそれて、ゴジラ以外の怪獣映画とゴジラ作品とを比較してみたいと思います。
怪獣映画というジャンルでゴジラとライバルといえば――まず、ガメラでしょう。
日活や東映も怪獣映画を作ったことがありましたが、ゴジラに比肩しうるような存在にはなりませんでした。ゴジラとの比較に耐えうるような怪獣といったら、ガメラしかありません。
そこで、『ゴジラ対ヘドラ』とほぼ同時期に公開された『ガメラ対大魔獣ジャイガー』という作品について書きましょう。
ガメラシリーズ第六弾にあたる、1970年の作。
これはゴジラ映画の新作がなかった年で、前年に『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』があり、翌年に『ゴジラ対ヘドラ』が公開されるという、その狭間にあたります。
また、1970年といえば、ちょうど大阪万博が開催された年でもあって、『ガメラ対ジャイガー』も万博を背景にした作品となっています。
万博に展示するために、「ウェスター島」なる島から古代人の石碑が運び出される。
すると、その石碑によって封印されていた大魔獣ジャイガーが目覚め、ガメラと戦う……というストーリーです。
ありがちな設定ではありますが、なかなかうまくできた話だと思います。
作中で提示される謎と、その真相についても、それなりに筋がとおっています。
あくまでも、“理論上ありうる”という程度のものではありますが……ゴジラ映画で散見される、たとえば『ゴジラ対メガロ』のような、いくらなんでもそれは雑すぎだろというものにはなっていません。
そのあたりは『ゴジラ対メガロ』について書くときにまた書こうと思いますが……比べてみると、どうもガメラのほうが子供向け映画としてきっちり作られている気がします。
見る側のある種の先入観のせいもあるでしょうが、ゴジラは、子供向けを志向していても、やはりどこか子供向けになり切れないところがあると思うんですね。
ゴジラの場合、“子どもの味方”路線を出そうとしても、いや俺むかしはあんなだったしなあ……みたいなことがついてまわります。
そこへいくとガメラは、なんのてらいもなく“子どもの味方”をやってるように見えるのです。
そして……そのスタンスの違いが、観客としての“子供”の心を読み切れるかどうかというところにつながっているとも思えます。
どうもゴジラは、相手が子供だと思ってなめてたんじゃないかという気もするのです。
『ゴジラ対メガロ』や、後の平成ゴジラシリーズ『ゴジラ対スペースゴジラ』なんかは、設定に関する説明の雑さをよく批判されますが、それがこの二作に対する低評価の原因となっているのは否定できないところでしょう。
作り手の側は「子供相手ならこんなもんでいいだろ」と思っていても、それを観た子供の側は子供なりに「そんなアホな」と思ってるのではないか。子供だましのつもりで、実は子供もだませてないということなんじゃないか、と……逆に、『ゴジラ対ヘドラ』のような強烈なメッセージ性が――町山智浩少年のように――子供相手にも響いていたのではないか。そんなふうにも思えます。
そのこととの対比でいうと、ガメラは子供だからとなめてかかっていないのです。
観客がツッコミを入れるであろうポイントに、先回りして登場人物がその意図を説明するようなせりふが随所にみられます。そうすることで、作品に一定の説得力を持たせているのです。
たとえば、主人公の少年二人が潜水艇でガメラの体内に入っていく場面。
気管の中を通ってるはずなのに、なぜ水に満たされているのか、おかしいじゃないか、と思います。
すると少年が「ガメラが首を海中に突っ込んだ状態で気を失ってしまったからだ」ときちんと説明するのです。そうすると、その先は水に満たされない空間になっていて、一応納得がいくのです。
ゴジラ作品では、そういう説明やエクスキューズをあまりしないと思うんですね。あるいは、したとしてもその説明があまりにもテキトーであったり……
子ども相手だからそんなに筋が通ってなくてもいいだろ、ぐらいの感覚になってしまってるように思えます。
『ガメラ対ジャイガー』では、そういう理屈的なところもきっちり練られています。
最初にも書いた作中で提示される謎が、その最たるものでしょう。それは、古代人の作った石像がなぜ怪獣を封印していたのか……というものです。この謎について当初ある仮説が示されますが、後半にそれを覆すあらたな真相が明かされます。
ここが、秀逸です。
ネタバレになるので詳細は書きませんが、うまくできているし、科学的にも一応納得のいく仕掛けで、感心させられました。
対するゴジラ作品では、どうか。
せいぜい、当初示される仮説レベルの説明しかしていないような気がするんです。子ども相手だからということで、それぐらいでいいだろうと妥協しているようにみえるんです。
そういう点で、『ガメラ対ジャイガー』はなかなかよくできていると感じました。
ゴジラシリーズが子供向け路線に向かったのはガメラの影響もあるといわれますが……“子供向け映画”という点に関するかぎり、私はガメラの方に軍配をあげたいと思います。