ロック探偵のMY GENERATION

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Samson, Rinding with the Angels

2024-10-23 22:56:02 | 音楽批評


本ブログの前回記事で、Raven というバンドをとりあげました。

いわゆるニューウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル(NWOBHM)のバンド……そういう話が出てきたので、このブログではおなじみの流れで、NWOBHMの他のバンドについても、ちょっと書いてみようと思いました。

で、書いていたところ……たまたま、ポール・ディアノが死去したという訃報が入ってきました。

ポール・ディアノは、このブログにたびたび出てくるアイアン・メイデンで初期のボーカルをつとめていた人。
後に脱退してブルース・ディキンソンに交代するわけですが、そのディキンソンがメイデン加入の前にやっていたSamsonというバンドがあります。
ということで……今回とりあげるのは、そのSamsonです。


サムソンは、1976年にデビューしたヘヴィ・メタルバンド。
NWOBHMのなかでも、初期のほうから活動していたバンドといえるでしょう。

あまり知名度は高くないと思われますが、先述したようにブルース・ディキンソンがアイアン・メイデン加入前に在籍していたことで知らています。当時のディキンソンは、ブルース・ブルースという名前で活動していました。
その時期の曲、Riding with the Angelsを。

Riding with the Angels

一方、アイアン・メイデンが活動を開始したのもサムソンとほぼ同じころ。
しかし、メイデンのほうはバンド結成から作品を発表するまでに数年を要し、音楽業界での活動という点では、少しサムソンに出遅れました。
しかし、あるときイベントで共演したアイアン・メイデンのパフォーマンスに、“ブルース・ブルース”は大きな衝撃を受けたといいます。メイデンのステージが終わると観客の半分が帰宅してしまい、ディキンソンも考えるところがあったということです。
そのときに、このバンドで歌ってみたいというのがあって、後に実際にメイデンに加入するわけですが……このサムソンというバンドは、ディキンソン以外にもなぜかメイデンと人的つながりがいくつかあります。たとえば、ドラムのサンダースティック。覆面ドラマーとして知られる個性的なドラマーです。また、別のドラマーでクライヴ・バーという人がいて、この人もメイデンにいたことがあります。中心人物であるポール・サムソンも、メイデンへの加入を打診されたことがあるんだとか。

といったふうに、アイアン・メイデンとサムソンは浅からぬつながりがあるわけですが……その後のキャリアを比較すると、かなりの差がついていることは否定できないでしょう。
スタート地点ではサムソンのほうがやや先行していたものの、いつしか逆転し、現在ではもう比べ物にならないほどメイデンのほうが巨大になっています。サムソンのほうは、今では知る人ぞ知るバンドといった感じ。サムソンというNWOBHMのバンドを知っているかと人に尋ねたら、サクソンじゃなくて?みたいにいわれてしまうんじゃないでしょうか。
これだけの格差が開いてしまったのは、一つには、それだけブルース・ディキンソンという人の存在が大きかったということでしょうが……私見では、単にそれだけではありません。私が思うに、ディキンソンの移籍は、アイアン・メイデンというバンドがNWOBHMの枠を超越したモンスターバンドになっていく、そのポテンシャルの原因であり、結果でもあったのではないでしょうか。


ディキンソンは、初期のメイデンにジェスロ・タルの影響を感じ取っていたといいます。
以前このブログで、ディキンソンがジェスロ・タルのイアン・アンダーソンと共演している動画を紹介しましたが、そういうところにも支流を持っている点が、ディキンソンの琴線に触れたらしいのです。この点は、アイアン・メイデンというバンドが凡百のメタルバンドとは違う部分の一つでもあったでしょう。

NWOBHMは、基本的には回帰のベクトルをもつムーブメントです。
グラムロックの影響が散見されるのも、そのためでしょう。ジャンル的にはまったく違うものの、そこはブリットポップとも共通する部分があると思われます。
しかし、ブリットポップの話でも書いたように、単に回帰するだけでは、おそらくすぐに飽きられてしまうわけです。そこで、ムーブメントが退潮していくときに、何かプラスアルファの要素を持っているかが問われることになります。そうなったときに、ロックンロールの地層を踏まえていることが重要な意味を持ってくる……ブリットポップでいえば、ブラーやレディオヘッドにはそれがあった。そして、NWOBHMでいえば、アイアン・メイデンやモーターヘッドにはそれがあったということじゃないでしょうか。

で、ディキンソンはアイアン・メイデンに大きなポテンシャルがあることを見抜いた。ゆえに、メイデン加入の道を選んだ。そして、ディキンソンが加入したことで、メイデンは大きく飛躍した……ということではなかったでしょうか。

そうすると、サムソンの側は、アイアン・メイデンになれなかったバンド、ということになります。
後にディキンソンがアイアン・メイデンを一時脱退した際にサムソン復帰の話があったともいいますが、これも結局、ディキンソンがメイデンのほうに復帰したことで流れてしまいます。そのすぐ後に、ポール・サムソンが死去したことで、サムソンはバンドとしての活動を終了するのでした。ニッキー・ムーアやクライヴ・バーなど、その他のメンバーもすでに死去している人が多く、再結成も難しいでしょう。存命のメンバーとしては、サンダースティックが一人気を吐いていて、今でも現役で活動しています。
そのサンダースティックが、自らのバンドで演奏している動画がありました。先ほどのRiding with the Angels もやっています。

Thunderstick - Live at Leos Red Lion 26th July 2019

こういうビジュアル面でのトリッキーな要素は、グラム志向の産物でしょう。後のお面系アーティストたちに影響を与えた元祖ともいわれています。
サクソンにも、アイアン・メイデンにもなれなかったバンド……そんなサムソンですが、ロックの歴史においては、一つのマイルストーンなのかもしれません。




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