今回は、音楽記事です。
寺山修司シリーズは、前回の「ヨイトマケの唄」で終了ということになったので……その前にやっていた日本のフォークソング路線に戻ります。
その最初として取り上げるのは――五つの赤い風船「遠い世界に」です。
日本のフォーク史に燦然と輝く名曲といっていいでしょう。
多くのアーティストがカバーし、「みんなのうた」に採用されるなど、広く親しまれてきました。
最近、この歌の一節を思い出すことがよくあります。
これが日本だ 私の国だ
という歌詞です。
オリンピック開会直前、一連のゴタゴタがありましたが、そうした話を見聞きするにつけ、この一節が思い出されました。これが日本だ、私の国だ、と。
そして今、オリンピックがはじまると、さっと空気が変ってお祭りムードになり、そのかげでコロナが急拡大する状況……ここでもまた、あの歌が聴こえてくるのです。これが日本だ、私の国だ。
「遠い世界に」という歌の中では決して悲観的な文脈で出てくるわけではありませんが……近ごろ私がこの歌を思い出すのは、これが悲しい現実だという意味合いにおいてです。
ちなみに、もとの歌ではこんな感じです。
ボクらの住んでるこの町にも
明るい太陽 顔を見せても
心の中はいつも悲しい
力を合わせて生きることさえ
今ではみんな忘れてしまった
だけど僕たち若者がいる
雲に隠れた小さな星は
これが日本だ 私の国だ
若い力を体に感じて
みんなで歩こう 長い道だが
ひとつの道を力の限り
明日の世界を探しに行こう
最初に発表されたのは1968年。
前回の東京五輪の五年後で、日本が高度成長期にあった頃です。若い力で明日の世界を探しに行く――そんな前向きなメッセージが語られ得る時代だったのでしょう。いまの日本で同じことを歌っても、そらぞらしく聞こえるばかりです。
しかし、絶望してしまうのでないなら、やはり道はひとつです。これが日本だ、私の国だ、という現実を直視したうえで、どうにかする術を考えなければならないのでしょう。長い道ではありますが……