『コンティジョン』という映画を観ました。
致死率が高い未知の感染症が爆発的に拡大して社会がパニックに陥るという、いわゆるパンデミックものの映画です。
タイトルのContagion は、ずばりそのまま“感染”という意味。
このタイトルのストレートさそのままに、作品自体も非常にストレートで、感染が拡大していく世界を淡々と描いています。
アマゾンプライムで観て、観終わった後にレビューもちょっと読んでみましたが、この“淡々”というところで評価が割れているようですね。
パンデミックものというところに期待して観た人は、いささか盛り上がりに欠ける展開に物足りなさを感じるのかもしれません。
しかし私は、この作品に好感を持ちました。
あるレビューでは、まるでシミュレーションのようだという評がありましたが、まさにそのシミュレーションとしてのリアリティが真に迫って感じられました。むしろ、変に嘘くささがなくていいと思えるのです。
ネットを通して拡散するデマがあったり、WHOの偉い人が、秘匿しておくべき情報を身内にこっそり漏らしたり、身内を優遇したりします。また、娘とともに家にこもっている父親が、訪ねてきた娘のボーイフレンドに銃を突きつけて追い返すというシーンもありました。
現実としては、たぶんそんなものでしょう。
映画としては、主人公サイドは強い正義感を持っていて「そんな不正はできない」みたいなことをいわせたほうがいいんでしょうが、そうしないところにリアリティがあります。
そういう観点でみると、クライマックスの盛り場のようなところがないのも、作品のリアルさを維持することにつながっています。変に盛り上がらないからこそ、作り物くささがないのです。
いかにもなパニックものやディザスターものをみせられてきてパニックずれしてきた映画視聴者には、もう一周してこれが新鮮なんでしょう。そういう意味では、リアリティショウとかPOVといったものと同じベクトルを共有しているのかもしれません。