ロック探偵のMY GENERATION

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ドラムの日 ドラマー列伝~アメリカン・ハードロック編

2021-10-10 22:39:00 | 日記


今日は10月10日。

「ドラムの日」です。

というわけで、去年にならってドラマー列伝。
今年は、アメリカン・ハードロックというところにフォーカスをあてていきたいと思います。


ジョーイ・クレイマー
 Aerosmithのドラム。
 エアロスミスというバンド名の名付け親でもある……のだが、最近この人は、そのバンドを訴えたことで話題になった。
 足首の怪我で一時バンドを離脱していたのだが、そこから復帰する際にドラミングのテストを受けさせられたことを屈辱として、バンドを提訴したのである。これまでにエアロスミスのメンバーが離脱した例はいくつかあるが復帰にあたってテストなんか受けさせられた奴はいない、なぜ俺だけが……ということらしい。
 結果としてこの訴訟は門前払いとなったようだが、その後ジョーイは何事もなかったかのようにバンドに復帰している。裁判沙汰になるまでこじれて復帰できるものなのかと思うが、やはり50年も世界的バンドとして活動していれば、そのメンバー間には部外者に想像しがたいような関係があるものだろうか……

 動画は、代表曲の一つ「闇夜のヘヴィロック」。

Aerosmith - Toys in the Attic (from You Gotta Move - Official Video)


パット・トーピー
  Mr.BIGのドラム。
  2014年、パーキンソン病を発症していることを告白した。
 症状はもっと前から出ていたようだが、そのころになると、痙攣によって演奏に支障をきたすようになっていた。
 しかしバンドは正規ドラムを交代させず、適宜サポートドラマーを起用しつつ、パットもステージに立ち続けた。ときにスティックを取り落としたりすることもあり、2017年のツアーでは、ベースのビリー・シーンが「辛かったらいつでもやめていい」と声をかけたという。ステージ上のことだけでなく、ツアーバスでの移動も病身には大きな負担となっていたらしい。だが、結局最後までパットがステージを去ることはなかった。そのツアーの翌年、2018年、パーキンソン病の合併症により死去。
文字通り死ぬまでスティックを握り続けたのは、彼の信条である Never give up によるところだろうか。その姿でパット・トーピーが示したのは、音楽上のテクニックといったこととは別の何かなのかもしれない。

動画は、Addicted to That Rush。
バンドに集った超人たちが各自その超絶テクをこれでもかというほどに見せつけるクレイジーな一曲。

Mr. Big - Addicted To That Rush (MV)


ティコ・トーレス
 Bon Jovi のドラム。キューバ系の人で、画家・デザイナーでもある。
 ボン・ジョビといえば、どこをとっても隙のないハードロック・バンド。ティコのドラムは、そのサウンドを土台で支えている。決して派手さはないが、土台役に徹した堅実なドラミングといえるだろう。前に出るドラムとは対照的な、過度に主張しないドラム――それはそれで、一つの才能なのである。

 動画は、やはりボン・ジョビの代表曲といったらこれ、Livin' on a Prayer。
あらためて聴いてみると、ほんとにドラムは余計な装飾を一切していない……

Bon Jovi - Livin' On A Prayer (Official Music Video)


エリック・カー
 KISSのドラマー。
 KISSには歴代三人のドラマーがいるが、初期メンのピーター・クリスは、ドラムの腕はともかく人としてろくでなしで、たびたび他のメンバーと衝突してバンドを離脱しており、彼が離脱すると三代目のエリック・シンガーが入ってくる……ということを繰り返している。
 その間にはさまれた二代目が、エリック・カー。
 KISSへの音楽的貢献やその人となりについては、バンド在籍中に死去したということで伝説化している部分もあるだろうが……しかし、非常に気さくでファンサービスも欠かさない人物だったという。
パット・トーピーが死去した際、スティーヴ・ルカサーは「どうしていつも、本当に、本当にいいやつばかりなんだ」とコメントしたが、それはあながち誇張ではないのかもしれない。

動画は、エリック・カーによるドラムソロ。
昨年、エリックの誕生日に公開されたもので、「(生きていれば)70歳になっていたエリックを記憶にとどめてくれ」というコメントが泣かせる。

Eric Carr's Animalize Drum Solo


アラン・シュワルツバーグ
 Mountainのドラム。
 マウンテンは、アメリカン・ハードロックの草分け的バンド。その主要な歴代メンバーといえば、レスリー・ウェスト、フェリックス・パパラルディ、ノエル・レディングといった名前が浮かんでくるが、ドラムはとなって、はたと困る。正直このバンド、ドラムのイメージがあまりわかない……しかし、アメリカン・ハードロック編と謳った以上このバンドを取り上げないわけにはいかないので調べてみると、歴代の中で比較的名を知られているらしいドラマーとしてアラン・シュワルツバーグという人が出てくる。
 彼は、ブルース・クリエイションとともにマウンテンが日本ツアーをやったりしていたときにドラムを担当していた。ブルース・クリエイションといえば、日本の伝説的ブルースロックバンドで、かのカルメン・マキをボーカルに迎えていたこともある。後にフェリックス・パパラルディが参加していたこともあり、それはたぶんに日本ツアーの縁もあってのことだろう。
 ただし、その日本ツアーの直後にマウンテンはいったん解散したので、アラン・シュワルツバーグがマウンテンに在籍していたのはごく短期間のこと。もともとセッション・ミュージシャンとして活動している感じの人らしく、おそらくはマウンテンもサポート的な位置づけだったものと思われる。
 セッションミュージシャンとしては、ジョン・レノン、ロジャー・ダルトリー、グレイス・スリック、アート・ガーファンクルなどのソロ活動をサポート。前項に登場したエリック・カー在籍時のKISSや、そのKISSのピーター・クリスやジーン・シモンズのソロ作品にも参加したことがあるという。また、ジェームズ・ブラウンやロッド・スチュワートのバックでドラムを叩いたりもも。以前ロッドによるルイ・アームストロングのカバー What a Wonderful World を紹介したが、あのアルバム音源でドラムを叩いているのはアラン・シュワルツバーグだとか。そんなふうに見ていくと、なかなかすごい人ではある。

 動画は、Roxy Music の Same Old Scene。このドラムを叩いているのが、アラン・シュワルツバーグとのこと。

Roxy Music - Same Old Scene


ドン・ブリュワー
 Grand Funk Railroad のドラム。
 グランド・ファンク・レイルロードといえば、マウンテンと並んで初期アメリカン・ハードロックを代表するバンドの一つである。なので、マウンテン同様取り上げないわけにはいかないのだが……正直、このバンドに関してもあまりドラムのイメージがわかない。一応ウィキによる基本情報として、マーク・ファーナーとともにバンドを創設した人物であり、このバンドが活動状態にあるときには常に在籍しているらしいので、実質的中心人物といえるだろう。
 ちなみに現在のギタリストは、元KISSのブルース・キュリック。KISSとは同じデトロイト出身という縁があり、どこか似たような空気を感じるのもそのためだろう。

 動画は、We're an American Band。
 この曲は、ドン・ブリュワーの作ったもの。

We're An American Band (Remastered 2002)


リッキー・ロケット
 ポイズンのドラマー。
 正直なところ私は80年代ハードロックをあまり好きになれないところがあるのだが、なぜかポイズンは別で、好みだった。
 そのポイズンのドラマーが、リッキー・ロケット。
 女難の運勢というのだろうか、この人は、女性がらみのエピソードが二つ特記される。
 一つは、バンドでギターを弾いていたリッチー・コッツェンにガールフレンドを奪われたこと。この事件は、コッツェンがバンドを追放されるきっかけとなった。
 もう一つは、レイプ疑惑で訴えられたこと。ただしこの件は、事件発生日にバンド活動で別の場所にいたことが証明できたため無罪放免となったらしい。音楽は身を救うといったところだろうか。
 そんな女難のリッキーも、現在は結婚していて二人の子どもがいる。二人の子供の名は、ジュードにルーシー・スカイ。どちらも、ビートルズの曲のタイトルからとったという。幸福な人生……といいたいところだが、5年ほど前には口腔がんを患い、今年は、二回ワクチンを接種したにもかかわらずコロナに感染と、なかなか難儀な人生を送っている人である。

 動画は、Something to Believe in。
 バンドの警備をやっていた友人の死に捧げた曲。 

Poison - Something To Believe In (Official Video)



ナラダ・マイケル・ウォルデン
 ここからJOURNEYのドラマーを二人。
 まずは、現ドラマの、ナラダ・マイケル・ウォルデン。

 私が80年代ハードロックを好きになれないというのは、そこに見られるある種の“割り切った”感による部分が大きいのだが……ジャーニーというバンドは、その“割り切った”アーティストの最たる例といえるだろう。
 詳細は次項にゆずるが、ジャーニーの出発点は硬派なハードプログレ路線であり、それが旅路の途中で割り切っていったわけである。
 ただ、もともとは硬派路線だったので、意外とメンバーも技巧派がそろっている。中心人物のニール・ショーンからして、サンタナバンドに在籍していたとか……そして、つい昨年加入したばかりのナラダ・マイケル・ウォルデンは、あのジョン・マクラフリン率いるマハヴィシュヌ・オーケストラにいたという人物である。それだけでもいかに凄腕かという話だが、ほかにもあまたの大物ミュージシャンたちと活動してきた経歴があり、そのリストは長大なものになる。

 ただ、現在のジャーニーにはやはりどこか割り切った感があり……そのあたりが、大物ドラマーの加入でどう変わるのか、あるいは変わらないのか、という点が興味深くはある。

 動画は、今年発表されたジャーニー最新の曲 The Way We Used To Be。

Journey - The Way We Used To Be [Official Video]


エインズレー・ダンバー
 ジャーニーごく初期のドラマー。
 意外なことに――いや、結構よくある話で、というべきか――はじめのころのジャーニーは、いま一般に認知されているような商業ロックバンドではなかった。プログレとかジャズ/フュージョンといった方向をむいていて、ダンバーはその時期のジャーニーをリズム面から支えたドラマーである。
 ちなみに、出身はイギリス。なので、アメリカン・ハードロックという枠でとらえていいかどうかは微妙だが……渡米したのはフランク・ザッパに誘われたのがきっかけで、以来およそ半世紀にわたってアメリカを中心に活動しているようなので、アメリカのミュージシャンとみなしてもいいだろう。
 
 初期のジャーニーはプログレ、ジャズ/フュージョンを志向していた、と書いたが……つまりはキング・クリムゾンみたいなことを目指していたわけで、そこでは複雑かつ精緻なドラミングが要求されることになる。エインズレー・ダンバーは、まさにそこになくてはならない存在だったのだ。
 ダンバーのドラムがいかに卓越しているかは、イギリス時代に第一期ジェフ・ベック・グループでドラムを叩いていたという事実が示している。
 ギター:ジェフ・ベック、ボーカル:ロッド・スチュワート、ベース:ロン・ウッドというこの強烈な布陣でドラムがなかなか決まらないなか、最終的にそのポジションに定着したのが、エインズレー・ダンバーだった。ジェフ・ベックの耳にかなったというだけでも、その実力は折り紙付きといえる。
 渡米してからのダンバーは、その実力で名だたるアーティストのレコーディングに参加。ザッパをはじめ、ルー・リードや、デヴィッド・ボウイ……ボウイに関しては、あの Rebel Rebel でドラムを叩いている。

 しかし……そのクリムゾン路線では、バンドは売れず。やがてスティーヴ・ペリーが加入し、バンドは皆さんおなじみのあのジャーニーに変わっていく。その変化を好まなかったダンバーは、ジャーニーを脱退した。
 そしてその後、ジェファソン・エアプレインから改名したジェファソン・スターシップに加入。
 そのジェファソン・スターシップの大ヒット Find Your Way Back の動画を。

Jefferson Starship - Find Your Way Back (Official Music Video)

 はっきりいって、このバンドの経歴もジャーニーと似たようなものだと思うのだが……やはりポップ路線に傾斜していくのが気に食わなかったのだろうか、ダンバーは、数年でジェファソンも脱退。
 その後は、ホワイトスネイクに参加したほか、UFO、マイケル・シェンカーといったHR/HM方面のビッグネームとともに活躍をみせていたが、20世紀も終わるころになって、エリック・バードン率いるニュー・アニマルズに参加。あの、「朝日のあたる家」のアニマルズである。なんでもできるけど、最後はそういうところに戻ってくる――というのが、こだわりが感じられていい。
 やっぱり、割り切りすぎるのはちょっと違うよなあ……と私個人としては思います。
 好きな人には申し訳ないけれど、ジャーニーやジェファソン・エアプレイン~スターシップの変化というのは、まさにロックが割り切っていく過程の体現であって……それをよしとせずに出ていったエインズレー・ダンバーが最後にたどり着いたのがエリック・バードンのアニマルズだったというのは、ある種の必然と思えるのです。変えるべき場所に帰ってきたんだ、と。長い旅路(JOURNEY)で、宇宙船(STARSHIP)にまでのったけれど、きちんと帰る道を見つけた(FIND YOUR WAY BACK)……と、きれいにまとまったところで、今回はここまで。 




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