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Anthrax, Among the Living

2020-04-14 18:01:00 | 音楽批評



今回は、音楽記事です。

紹介するのは、Anthraxの Among the Living

先日、小説記事としてスティーヴン・キングの『ザ・スタンド』をとりあげましたが、そこからのつながりです。というのも、この曲は『ザ・スタンド』をモチーフにしてるのです。

 

アルバムのタイトルチューンでもあり、そのアルバムジャケット中央に描かれている人物は、『ザ・スタンド』に登場する悪の世界のボス“ウォーキング・デュード(歩く男)”がモデルともいわれています。そうではないという説もあるようですが、この点に関してドラムのチャーリー・ベナンテは「俺たちの中にどれだけの邪悪がひそんでいるか」を表しているのだといっています。


ここから、アンスラックスというバンドについてちょっと書いておきましょう。
といっても、私はあまりメタル方面には詳しくないので、ウィキからの受け売りになる部分が多いんですが……

アンスラックスは、いわゆるスラッシュメタルを代表するバンドの一つ。
メタリカ、メガデス、スレイヤーとあわせて、ビッグ4と呼ばれています。日本語で言うなら、スラッシュメタル四天王の一角とでもいったところでしょうか。

バンド名のAnthrax は、「炭疽菌」の意味。
炭疽菌というのはなかなか危険な細菌で、ときどきバイオテロで使用が試みられたりもするようで……それをバンド名にするというも、いかにもスラッシュメタルな感じです。

そのアンスラックスが1987年に発表したサードアルバムが、『アマング・ザ・リビング』。

このアルバムには、Indian という曲も収録されていますが、これはその時のボーカルだったジョーイ・ベラドナがアメリカ先住民にルーツを持っていることから。それで先住民音楽の要素を取り入れたりもしていますが……そこにとどまらず、アンスラックスはメタルの枠をこえたさまざまな音楽を自身の音楽に取り入れてきました。
たとえば、パブリック・エネミーなどと共同作業を行い、ラップを取り入れるなどといったことも試みていて、アンスラックスをミクスチャーの祖と見るむきもあるようです。ビッグ4のなかではおそらくもっとも知名度が低いバンドではありますが、そういう意味ではロック史において重要な存在かもしれません。


音楽的なこととは別に、その「炭疽菌」というバンド名で物議をかもしたことがありました。

2001年、アメリカ同時多発テロの際に、アメリカで炭疽菌テロ事件というのがあって、そのときにバンド名を変えたほうがいいんじゃないかという話になったそうです。

実際バンド名を変更することはありませんでしたが、この件は考えさせられます。

アンスラックスにかぎらず、メタル系のバンドは邪悪なイメージを打ち出すことが多いです。それはある種プロレスのヒールみたいなことなんだと思いますが……そのヒールが、現実の邪悪とどう向き合うかという問題ですね。
メタルの例ではありませんが、同時多発テロのときには Massive Attack というグループが名前をMassive に変更するということがありました。この話、以前どこかで一度書いたような気もしますが……これは、attack という単語が時節柄よくないということでそうなったわけです。
こういった例をみていると、ヒールがどう扱われるかということで、現実世界の平和が測られるんじゃないかとも思えます。
世の中が平和だからこそヒールが希求されるわけであり……逆にいえば、ヒールが虐げられるときというのは、世の中が平穏を失いつつあるときだろうと。
で、今がまさにそういうときなんじゃないかという気がしています。
先述した Indians という曲の冒頭部分には、「人は、他人の戦いのことになると、黒か白かですべてを見てしまう」という歌詞があります。ヒールの存在は、そんな単純化されたものの見方に疑問を投げかけるものなのかもしれません。





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