ロック探偵のMY GENERATION

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「ラファエル前派の軌跡」展にいってきました

2019-09-07 22:51:42 | 日記
久留米市美術館で行われている「ラファエル前派の軌跡」という展示会に行ってきました。





ターナーを評価したジョン・ラスキン、そして、ウィリアム・モリスやロセッティといった“ラファエル前派同盟”の芸術家たち……

以前、印象派展のことを書きましたが、立ち位置としては、ラファエル前派は結構印象派に近いところがあるんじゃないでしょうか。

「19世紀に、音楽、絵画、文学などのあらゆるジャンルで既存のスタイルを否定するムーブメントが起きていた」と印象派展の記事で書きましたが、ラファエル前派もその一環と思えます。そうした動きの代表例といえるクールベに影響を受けたアーティストもいるそうです。ロイヤル・アカデミーの価値観を否定してラファエル前派同盟を作るというのは、自分の作品を批判するサロンを否定して史上初の個展を開いたクールベや、やはりサロンを否定して独自の展覧会を開いた印象派の画家たちと重なって見えます。それらはいずれも、形骸化したアカデミズムを批判するという点でベクトルを共有しているでしょう。

もっとも、ラファエル前派の場合は、その名が示すとおりもっと昔に戻ろうという主張です。

ラスキンの美学は中世のゴシックのほうにむかい、ゴシックの雑然とした調和から、真の芸術は不完全なものでなければならないという結論に達します。
それは、産業革命を果たしたイギリスの、人間性を無視した機械的大量生産に対するアンチテーゼとなり、ウィリアム・モリスの手工芸運動につながっていくのです。
そのあたりの発想は、そのままではないにせよ、現代の社会に対しても鋭い批判になっているのではないでしょうか。

また、芸術家たちの人間的な部分も、興味をひきました。

今回の展示の解説によると、ラファエル前派につらなる人たちも、決してお互い良好な関係を保っていたわけではないようです。仲間割れとか、女性をめぐる三角関係なんかで結構どろどろしていたといいます。たとえば――ラファエル前派と直接関係があるわけではありませんが――ラスキンの妻がミレー(イギリスの画家。『落ち穂拾い』で有名なミレーとは別人)と恋仲になり、略奪婚のようなことになってしまったとか……まあ、いつの時代もアーティストというのはそういうものかもしれません。ロック界隈でいえば、エリック・クラプトンとジョージ・ハリスンみたいなことなんでしょう。
この件はビクトリア女王の怒りを買ったそうですが、そういうビクトリア朝の胡散臭い道徳観念との軋轢なんかも含めてアートだというふうにもいえるんじゃないでしょうか。





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