これまで、拙著『ホテル・カリフォルニアの殺人』に登場するイーグルスの曲について書いてきました。
今回は、その番外編として、「ホール・イン・ザ・ワールド」という曲について書きたいと思います。
実は、拙著『ホテル・カリフォルニアの殺人』にも、当初は「ホール・イン・ザ・ワールド」という一章があり、この曲について語る箇所がありました。
結局のところ、その部分はカットすることになったのですが、一応『ホテル・カリフォルニアの殺人』ゆかりの歌ということで、紹介します。
今日この日にこれを書くということには、意味があります。
というのも、この曲は、16 年前の9月11日に起きた事件――すなわち、2001年のアメリカ同時多発テロに触発されたものだからです。
タイトルの Hole in the World とは、直訳すると「世界の穴」。
イーグルスの面々は、あの同時多発テロが起きたとき、ニューアルバム制作のためにLAにいて、その日スタジオに入ることになっていました。
ドン・ヘンリーが朝目を覚ますと、一本の電話がかかってきます。
それはアシスタントからの電話で、「テレビをつけてください」というのです。
テレビをつけると、黒煙をあげるワールドトレードセンタービルが映っていました。
この騒ぎで、その日に予定されていたセッションはすべて中止。
することのなくなったドン・ヘンリーは、一人ピアノの前に座っていました。
そうすると、メロディとともに、言葉が浮かんできました。
今夜、世界に穴が開いてるんだ――と。
こうして、「ホール・イン・ザ・ワールド」という歌が生まれました。
サビの部分では、
今夜、世界に穴が開いてる
おそれと悲しみの雲がある
おそれと悲しみの雲がある
と歌われ、最後に
明日は、世界に穴なんかないようにしよう
としめくくられます。
全体的に明るい曲調ですが、しかしこのフレーズは切なく響きます。
悲しいことに、16年が経ったいまも世界には穴が開きっぱなしです。
むしろ、どんどんひどくなってきているような気さえします。
互いを愛することを学ばないかぎり
約束の地にたどりつくことはない
という歌詞もありますが、まだ約束の地は果てしなく遠いということでしょうか。
約束の地にたどりつくことはない
という歌詞もありますが、まだ約束の地は果てしなく遠いということでしょうか。
この歌を聴いていると、そんなことを感じずにはいられません。