ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
『ホテル・カリフォルニアの殺人』(宝島社文庫)発売中です!

moonriders , I HATE YOU AND I LOVE YOU

2021-06-19 23:58:39 | 音楽批評


今回は、音楽記事です。

このカテゴリーでは、寺山修司ゆかりのアーティストということで最近やっていますが……その一環として今回取り上げるのは、ムーンライダーズ。

このバンドは、前回の音楽記事で紹介した頭脳警察とも深いつながりがあります。
いや、それはあるいは因縁といった方がいいでしょうか……たとえば、ムーンライダーズの前身であるはちみつぱいというバンドは、頭脳警察の記事で触れた三田祭事件に関わっていました。頭脳警察がステージジャックを起こす前にそのステージに立っていたのが、はちみつぱいだったのです。
ただ、この件で被害を受けたのは、あくまでもはっぴいえんど。はちみつぱいのほうは、ステージジャックが起きた時点ですでに演奏を終えていたので、直接の被害はありませんでした。なので、一部で言われているようにこの件ではちみつぱいと頭脳警察の関係が悪化したということはないらしいです。むしろ、はちみつぱい~ムーンライダーズの中心人物である鈴木慶一さんは、後にPANTAさんと細野晴臣さんの和解を仲介したのだとか。

この三田祭事件、頭脳警察とはっぴいえんどがからんでいるという点で邦ロック史における一大事件ですが、そこに一枚かんでくるはちみつぱいもまた、日本のロック史を考えるうえではずすことのできない存在といえるでしょう。
そういうわけなので、最近このブログでとりあげたアーティストの何組かとも関係しています。たとえば、古井戸のバックで演奏していたり、メンバーの武川雅寛さんが、かぐや姫「神田川」でバイオリンを弾いてたりします。

そのはちみつぱいから発展してできたのが、ムーンライダーズ。
頭脳警察とはまた違った意味合いで、アンダーグラウンドの存在です。日本におけるニューウェイヴの先駆けとしてよく知られていますが、ニューウェイヴというのもやはり日本ではあまり広く受容されない要素でしょう。半世紀近く活動しているバンドながらあまり知名度が高いとはいえないのも、そのためかと思われます。バンド名は稲垣足穂の小説からとったといいますが、その名づけからしてすでに、アンダーグラウンドの存在であることを宿命づけられていたといえるかもしれません。



で、そのムーンライダーズがどう寺山修司とつながってくるかということなんですが……
彼らは、寺山修司の『時代はサーカスの象にのって』をロックミュージカルにしているのです。
題して、『時代はサーカスの象にのって '84』。


つまり1984年に上演されたということで、これは寺山修司の死後の話になります。頭脳警察も「時代はサーカスの象にのって」という歌をやっているわけですが、ムーンライダースのほうは、寺山修司の劇全体に音楽を施したもの。天井桟敷立ち上げ時からのメンバーである萩原朔美さんが演出を手がけたリメイク版で、鈴木慶一さんが音楽監督を手がけています。
その頃、萩原さんが関係していた『ビックリハウス』という雑誌で、鈴木慶一さんが高橋幸宏さんと結成したユニット“ビートニクス”の連載ページがあり、その関係で依頼を受けたそうです。
古井戸も天井桟敷で音楽を担当したことがあるわけですが、そういったことも関係しているかもしれません。
出演者には、天井桟敷の団員のほかに、ピンク・レディーの未唯さんやジャニーズのタレントなどもいて、また、日替わりゲストとして林真理子さんやおすぎさんが登場し、音楽監督である鈴木さん自身も舞台に上がったことがあるとか。

……と、知ったようなことをいっていますが、そいういうものが存在するということを私が知ったのはごく最近のことです。

というのも、この音源はレコードのような形で発表されずにいて、つい3年ほど前にようやくCD化されたばかりなのです。上に書いた情報も、多くはそのCDについていたブックレットによっています。
CD化されたことによって、その音楽を聴くことができるわけですが……聴いてみると、このロックミュージカルでムーンライダーズのやっている音楽は、寺山修司の感覚に実にマッチしています。ここに収録されている曲はすべて寺山修司の台本に曲をつけたものですが、ムーンライダーズの歌といってそのまま通用するものばかりです。ニューウェイヴ・バンドとしてのムーンライダーズが持っている実験性のような部分が、寺山修司の波長と共鳴するからでしょう。それはすなわち、あの60年代、70年代の自由の空気ということなのです。

最後に、せっかくなのでムーンライダーズの公式チャンネルから、動画を一つ。
比較的近年の作、アルバム『Tokyo 7』から I hate you and I love you です。

 
moonriders [ I HATE YOU AND I LOVE YOU]  




ホテル・カリフォルニアを3DCGで再現 -中央ホール

2021-06-16 15:15:02 | 3DCG

ひさびさに、拙著に登場するホテル・カリフォルニアを3DCGで再現するシリーズです。

今回は、blender で中央ホールを作ってみました。


これは、なかなか手が込んでいると思います。



最近は、こういう建物系に使えるモディファイアやテクスチャをいろいろ試しています。
今回の場合だと、配列モディファイアやカーブモディファイア、ブーリアンなどが活躍してくれました。
ただ、そういったものを多用すると処理が重くなってくるんですが……




オフスプリングの名曲を振り返る+α

2021-06-14 21:32:00 | 過去記事

The Offspring, The Kids Aren't Alright

今回は、音楽記事です。新年一発目となる音楽記事は……ずばり、オフスプリングでいこうと思います。なぜオフスプリングかというと……そう、彼らはいま、日本公演のために来日してる......


過去記事です。
オフスプリングについて書いています。


オフスプリングといえば、先日ニューアルバムをリリースしました。

 

タイトルは、 LET THE BAD TIMES ROLL。
Let the Good Times Roll というロックスタンダードがありますが、それを裏返しにしたタイトル。これは、フーの The Kids Are Alright を否定文にして The Kids Aren't Alright と歌ったのと同じ感覚でしょう。こうして裏返しにするだけで、はっとさせられるものもあるのです。

ついでなので、バンドがYouTube の公式チャンネルで公開しているタイトル曲の動画をリンクさせておきましょう。

The Offspring - Let The Bad Times Roll (Official Music Video)

もはやCDなどの売り上げはあてにしない時代ということなのか、オフスプリングのチャンネルではニューアルバムの収録曲が全曲公開されているようです。
そのなかから、This Is Not Utopia という歌の動画。
こうして時代を撃つ歌を、いまでもオフスプリングは律儀にやり続けています。

The Offspring - This Is Not Utopia (Official Lyric Video)


最後にオマケとして、フーのThe Kids Are Alright のほうの動画も。
元記事でも書いたように、offspring とは「子孫」の意ですが、その遠い祖先にあたるのがフーです。この歌を否定文にしたオフスプリングも、The Kids Are Alt-Right と歌ったバッド・レリジョンも、その末裔なのです。

The Who - The Kids Are Alright




『ゴジラ VS スペースゴジラ』

2021-06-12 23:33:21 | 映画


今回は、映画記事です。

このカテゴリーではゴジラシリーズの作品について書いていますが……今回取り上げるのは、第二期シリーズ6作目にあたる『ゴジラVSスペースゴジラ』。
公開は1994年。
ゴジラシリーズ全体としては、通算21作目になります。


「ゴジラ VS スペースゴジラ」 | 予告編 | ゴジラシリーズ 第21作目

本来、第二期シリーズは前作『ゴジラVSメカゴジラ』でいったん終了する予定でした。

それは、ハリウッド版『ゴジラ』が制作されることになったから……ということだったんですが、このハリウッド版の制作が遅れます。そこで、急きょゴジラの新作を作ることになってできたのが、『ゴジラVSスペースゴジラ』です。
そういう経緯があったためか、スケジュールは例年の2か月遅れだったといいます。

そのせいかはわかりませんが……この作品を観ていると、いささか散漫とした感じを受けます。
どこか雑然としているというか……


この作品を観ていると、シリーズモノが作品数を重ねるにつれて陥っていく弊害が表れてきているように思えます。
その一つは、“詰め込みすぎ”ですね。
スパイダーマン3みたいな感じです。それまでの作品に出てきたあれやこれやを引き継いでいるために、その糸がからまってくる状態でしょう。

その糸の一つは、『ゴジラ対ビオランテ』から伸びるもの。
この作品に登場する結城晃(柄本明)は、『ゴジラ対ビオランテ』で殉職した権藤五郎の親友なのです。彼は、親友の仇を討つために、ゴジラを付け狙っています。そして本作には、その権藤五郎の妹も登場します。

二つ目は、『ゴジラVSモスラ』から伸びる糸。
本作には、“フェアリーモスラ”とコスモスも登場します。モスラが直接戦闘に参加することはありませんが……スペースゴジラ誕生の原因がモスラにあるかもしれないというような話にもなっています。

三つ目は、前作『ゴジラ対メカゴジラ』から伸びる糸。
すなわち、ベビーの存在です。この作品では、前作で誕生したベビーゴジラがちょっと成長して出てきます。

『ゴジラVSメカゴジラ』において、ベビーの登場によってゴジラのキャラクターが変化したということは以前書きました。
この点は、『ゴジラVSスペースゴジラ』において、いっそうの展開をみせます。
すなわち、ゴジラの“正義の味方”化がさらに進行するのです。

そのカギとなるのが、スペースゴジラ。

昭和の第一期ゴジラがそうであったように、第二期においても、“宇宙からの侵略者”という共通の敵をもつことによって、ゴジラと人類のあいだに共闘関係が生まれます。
先述した結城晃とゴジラとは、いうなれば銭形とルパンのような関係になっていますが、その二人がカリオストロ伯爵との戦いで共闘するのと同じことが起きるわけです。


……と、こう書いてきただけでも十分詰め込みすぎですが、この作品の筋立てをさらにややこしくしているのは、ストーリーの軸が二つあるということです。

その一つは、Tプロジェクト。
サイキックセンターの主任となった三枝未希が、テレパシーでゴジラを操ろうという計画です。

もう一つは、Mプロジェクト。
ここで、モゲラというものが登場します。

前作で登場した「国連G対策センター」が新たに開発したメカ。Mobile Operation Godzilla Expert Robot Aero-type を略してMOGERAです。といっても、これはあくまでもこじつけで、かつて東宝が制作した『地球防衛軍』という映画に登場するモゲラが元ネタ。
第二期を飛び越え、ゴジラシリーズの枠さえ飛び越えて、さらに詰め込んでくるわけです。

こうしていくつもの糸が絡まり合い、ラブロマンス的な要素さえ取り入れて、話も複雑になってます。
まあ、興行成績は悪くないということを考えると、さまざまな要素を詰め込むという戦略は奏功しているということなんでしょうが……


最終的にスペースゴジラを倒した後、ゴジラはおとなしく海へ帰っていきます。
第一期の後半と同じように、ものわかりのいいゴジラになっているのです。ゴジラが現れたらとにかく日本を蹂躙する、だから日本人はゴジラが出現したら否応なしに戦わなければならない――とい前提が崩れています。息子ができるとそうなってしまうんです。
しかしこの変化は、そもそもゴジラ映画を成立させる土台を掘り崩してしまっています。ゆえに、この段階にいたると、もうシリーズの終焉も近いということになるのです。まあ、そもそももう終わるはずだったということでもあり……そんなわけで、次作が第二期シリーズの最終作となるのです。



最後に、3DCGを。
今回は、スペースゴジラを作りました。背景の建物も、blender で自作しています。後方にある茶色の建物のできがやや不満ですが……




ロックの日 ~グラムロック特集~

2021-06-09 21:15:55 | 日記


ロックは死んだ――

先日、KISSの記事で、ジーン・シモンズのそんな言葉を紹介しました。

それは、ロックというジャンルの担い手が危機に瀕しているという警鐘だったわけですが……そのジーン・シモンズの発言に対して反論したのが、アリス・クーパーでした。

いわく――「いまこの瞬間にも、ロンドンのどこかのガレージで、エアロスミスやガンズ・アンド・ローゼズをやってる連中がいる。18歳のキッズがギターやドラムでハードロックをやってるんだ。それはアメリカでも同じさ」
以前の記事でも書いたとおり、統計的にロックがもう聴かれなくなってきているという現状があるわけですが、これに関してアリス・クーパーは、ロックが「まさにいま、本来あるべき位置にある」ということだと述べます。
おかしな言い方に聞こえるかもしれませんが、これはアリス・クーパー一流の慧眼です。
いまロックンロールはメインストリームにいない。そして、メインストリームにいないということこそが、ロックンロールという音楽の本来の立ち位置だ……アリス・クーパーがいっているのは、そういう一種の逆説なのです。
そもそもロックンロールは周縁的なもの、中心からはじき出された者の音楽なのだから、多くのリスナーに聴かれなくなった今こそロックンロールはその本来あるべき場所にいるのだ――じつに深い洞察であり、また力強い言葉でしょう。

これを、単に負け惜しみなどと言ってはいけません。

というのもアリス・クーパーは、いわゆるグラムロックのミュージシャンとして、ロックンロールの原点回帰運動をリードしてきた人だからです。

それはどういういことか。
ちょっと私の思うところを書いてみます。


私の知るかぎり、「ロックは死んだ」という言葉が最初に出てくるのは、フーの Long Live Rock という歌です。

  地すべりだ 岩(rock)が崩れ落ちていく
  俺たちの真上に落ちてくる 
  俺たちは懸命にやったけど あんたはあくびをするばかりだった
  よく見てみなよ ロックは死んだ ロックは死んだ ロックは死んだ…

これは70年代前半の曲で、おそらく「ロックは死んだ」というのはそのぐらいのときからもういわれていたわけでしょう。
そして、その「ロックは死んだ」論に対するロック側の応答の一つが、いわゆるグラムロックだったのです。
それは、もともとのロックンロールが持っていた初期衝動や、中性性、挑発性といったことを取り戻そうという運動です。

一種の、ロックンロール・リバイバル……ゆえに、グラムロックというのは、とにかくド派手で、過激で、挑発的でした。
グラム・ロックという言葉自体は70年代の一時期を指すものでしょうが、そのスタイルは後のロックに大きな影響を与えています。

今日6月9日は「ロックの日」なわけですが、今回はそこにあわせてグラムロック特集をやってみようと思います。



まずは、アリス・クーパーの代表曲の一つ「スクールズ・アウト」。
フー・ファイターズと共演する動画です。ちょっと音が割れてしまっているのが残念ですが……

Alice Cooper joins The Foo Fighters on stage for Schools Out and I'm Eighteen

ちなみに、同タイトルのアルバム発売時のレコードは、学校の机のようなジャケットになっていて、それを開くと女性物の下着に包まれたレコードが入っているという仕様になっていました。まさに、このセンスです。


そして、ジーン・シモンズも影響を受けたといっている Slade。
日本ではあまり知名度が高くないと思われますが、グラムロックを代表するバンドの一つです。

Slade - You Boyz Make Big Noize


デヴィッド・ボウイ。
長いキャリアのなかでいろんな顔をみせてきましたが、70年ごろにはグラムロックのアーティストとみなされていました。
そのいわゆるグラム期からはちょっとはずれますが、本稿の論旨にはふさわしい「愛しき反抗」。
ロックンロールとは存在自体が反逆である……という意味でいえば、そのテーゼを体現する曲ともいえるでしょう。

David Bowie - Rebel Rebel • TopPop


浦沢直樹先生の漫画でも注目を集めたTレックス。
マーク・ボランもまた、グラムロックを代表するアーティストでした。
アニメ『絶対無敵ライジンオー』に登場する矢沢校長は、若いころイギリスに留学したことがあり、マーク・ボランと友達だったそうです。(ちなみに、学校で飼育されているヤギの名前は「キャロル」といいます)

T.Rex - The Soul Of My Suit (Official Promo Video)



モーターヘッドの故レミー・キルミスターが在籍していたことでも知られるホークウィンド。
ごく短期間ながらジンジャー・ベイカーがドラムを叩いていたことも。

Hawkwind - On The Right Stuff - (Live at Stonehenge Free Festival, UK, 1984)


モット・ザ・フープル。
デヴィッド・ボウイが提供した「すべての若き野郎ども」は、単にグラムロックというだけでなく、ロック史に残るアンセムと目すべき名曲です。この邦題もすばらしい。
動画は、2019年ロックの殿堂。亡きボウイへ捧げるパフォーマンスです。
クイーンのブライアン・メイがギターを弾き、スティーヴン・ヴァン・ザントもコーラス……と、このブログではおなじみのメンツが参加。
クイーンは下積み時代にモット・ザ・フープルの前座をやっていたことがあって、彼らもまたグラムロックの血脈を受け継ぐアーティストとみなされているのです。
あと、このパフォーマンスにはデフ・レパードも参加していて、リック・アレンの隻腕ドラムを見ることができます。

Finale performance of "All the Young Dudes" at the 2019 Rock & Roll Hall of Fame Induction Ceremony

話がクイーンのほうにいったので、ついでにクイーンの関連動画を。
フレディ・マーキュリー・トリビュートコンサートにおけるHeroes です。
先の動画にも出てきたイアン・ハンターと、グラム期ボウイの盟友ミック・ロンソンがゲストで登場。ボウイにはクイーンとの共作曲もあり、その縁ということでしょうか。

Queen David Bowie, Ian Hunter, Mick Ronson - Heroes (Freddie Mercury Tribute Concert)

フレディ・マーキュリーも、デヴィッド・ボウイも、ミック・ロンソンももういませんが……それでも、次の時代の“ヒーロー”は必ず現れる。そいつは、いまどこかのガレージでギターを弾いている……そう信じていたいと思うロックの日です。