ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
『ホテル・カリフォルニアの殺人』(宝島社文庫)発売中です!

ギタリスト列伝 ~ブリティッシュHR/HM編~

2021-06-01 16:28:29 | 日記



去年このブログでは、ドラマー列伝、ベーシスト列伝というものをやりました。

それは、「ドラムの日」、「ベースの日」にあわせてということだったわけですが……では、「ギターの日」というものはないのか? そう思って探してみると、「ソロギターの日」というものがあるんだそうです。
それが、今日、6月1日。
ギターの弦が基本6本であることと、1=ソロということから……なかなか苦しいところですが、このへんがこじつけるにもギリギリのところでしょう。
ともかくギターの日、ということで、今回はギタリスト列伝をやろうと思います。ソロギターの日ということなので、ソロが際立つハードロック、ヘヴィメタル系のギタリスト、そして、英国というところにフォーカス。ドラマー列伝、ベーシスト列伝の形式を踏襲して、動画も載せていきます。




ジミー・ペイジ
 いわずと知れたレッド・ツェッペリンのギター。
 エリック・クラプトン、ジェフ・ベックと並び、いわゆる“三大ギタリスト”の一人に数えられる。
 そのうちジェフ・ベックとはローティーンの頃から親交があり、学生時代にやっていたクルセイダーズというバンドでは、体調不良で離脱する際にジェフ・ベックを後任に推薦したりもしている。それはバンド側に拒否されたらしいが、後に、ヤードバーズからクラプトンの後継ギタリストにならないかと誘われたときには、それを断って、ここでもジェフ・ベックを推薦。ジェフ・ベックがヤードバーズに加入するきっかけを作った。その後、ペイジ自身もベーシストとしてヤードバーズに加入し、ジェフ・ベック脱退後にはリードギターに。こうしてヤードバーズは三大ギタリストが全員在籍したバンドということになった。
 ジミー・ペイジはセッション・ミュージシャンとして活動していた時期も長く、キンクス「ユー・リアリー・ガット・ミー」、フー「アイ・キャント・エクスプレイン」、ジョー・コッカー「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンド」といったロック史に燦然と輝く名曲に参加している。そして、そうしたセッション活動の中から、レッド・ツェッペリンが誕生。このツェッペリンでの活動で、ジミー・ペイジは不動の名声を獲得した。
 ただ、“三大ギタリスト”の一人とされつつ、世の中にはそのテクニックを疑問視する声も少なくない。
 彼のプレイは、右手のピッキングと左手の押弦のタイミングが微妙にずれていて、つまったような音になるとよくいわれる。それを個性ととらえるかどうかの問題だろう。
 エディ・ヴァン・ヘイレンのように、それをはっきり「へたくそ」と評する人もいる。(ただし、後に評価を修正)が、彼がロック史上における最重要ギタリストの一人であることは間違いないだろう。
 ツェッペリンにおいてペイジ先生が生み出した名リフは数あれど……ここでは Black Dog を紹介。

Led Zeppelin - Black Dog (Live)


リッチー・ブラックモア
 Deep Purple のギター。レインボー、ブラックモアズ・ナイトなどの活動でも知られる。ジミー・ペイジのところで触れたバンド、クルセイダーズにも参加していたことがあるとか。
 ハードロックでギターソロを全面に押し出したプレイということでいえば、リッチー・ブラックモアはその元祖ともいえるギタリストの一人だろう。もともとはオルガン主体でプロコル・ハルムのような音楽だったディープ・パープルが、ハードロックバンドになる方向性を決定づけた立役者の一人といえる。そしてそのスタイルが、ハードロックというジャンルの一つのひな型を提供した。そういう意味では、ハードロック史における最重要ギタリストということにもなる。
 しかし、2016年、ディープ・パープルがロックの殿堂入りを果たした際、そこに彼の姿はなかった。
 漏れ伝わってくる話によれば、ブラックモアはディープ・パープルの現在のメンバーたちとはあまり関係がよくないらしい。たとえばイアン・ギラン(Vo)は、「最近のリッチーの演奏を素晴らしいと思わない」といっている。また、イアン・ペイス(Dr)は、「リッチーは良いか悪いかでしか対処できず、その中間がない」と語り、その非妥協的な姿勢がメンバー間の関係を悪化させていたことを示唆。そういう事情があるため、ブラックモア本人はもう一度パープルで演奏したいという気持ちを持っているようだが、それが実現するかは不透明である。
 曲は、ブラックモア伝説第二章ともいうべき Rainbow の Kill the King。

Rainbow - Kill The King (Live in Munich 1977)


ブライアン・メイ
 Queenのギタリスト。生粋の理系ミュージシャンであり、ギターを自作したりもしている。その材料となったのは、樹齢200歳の木なのだとか。
 そのギターサウンドは、よく「鼻にかかるような音」と評され、誰が聴いてもすぐにブライアン・メイとわかる無二の個性を持っている。このブライアンが、フレディ・マーキュリー、ロジャー・テイラー、ジョン・ディーコンというメンバーと一つのバンドにそろったのは、ロック史上における奇跡の一つだろう。
 また、ブライアンは天文学者でもあり、ある小惑星を“フレディ・マーキュリー”と名付けるのに一役買った。
 曲は、ケリー・エリスとの Panic Attack ……の2021年バージョン。
 もともとは2017年に発表された曲だが、まるでコロナ禍の世界にむけた歌のように聴こえる。ということで、この新たなバージョンを作ったものと思われる。歌詞は若干変えてあるものの、ほとんどオリジナルのまま。

Brian May & Kerry Ellis - Panic Attack 2021 (It's Gonna Be All Right)


ここからは、ヘヴィメタルのほうへ。

トニー・アイオミ
 Black Sabbath のギター。サバスはキャリアが長く、一時メンバーがかなり流動的になっていた時期もあるが、アイオミはブラックサバスのデビューから活動終了まで在籍し続けた唯一のメンバーである。
 彼は、かつて旋盤工として働いていた際に、事故で右手の指を切断してしまった過去を持つ。レフティであるアイオミにとって、右手はフィンガーボード側。その指を切断というのはギタリストにとって致命的だが、義指を装着することで克服した(事故を起こした職場の工員が作ってくれたものらしい)。
 ただし、義指ではテンションの高い弦でのチョーキングが難しい。その対策としてテンションの低い弦を使用したりドロップチューニングなどの工夫をした結果、低音はよりヘヴィに。ということは、指の切断という事故がサバスのヘヴィネスを生み出すきっかけになったいえるのかもしれない。
 先述したとおり、アイオミはデビューから活動終了まで一貫してブラックサバスに在籍していたが、サバスのデビュー前、その前身バンドの時代に一時バンドを離脱していたことがある。
 それは、ギタリストを解雇して後任を探していたジェスロ・タルに加入を打診されたためだった。
 50人ほども候補がいたという中から、アイオミは見事選ばれ、ジェスロ・タルのギタリストとしてあのロックンロールサーカスに出演している。
 しかしアイオミは、そのままジェスロ・タルに定着はしなかった。本人の弁によれば、すでに売れているバンドでサポート的な立ち位置でプレイするよりも、新しいバンドの一員として自力でのしあがっていきたいという気持ちがあったためとのこと。そうして彼が復帰したバンドは、直後にブラック・サバスとしてデビューし、メタル史に大きな足跡を残すことになる。アイオミは、その野心を果たしたといえるだろう。
 曲は、サバスの代表曲の一つ Iron Man。

BLACK SABBATH - "Iron Man" (Official Video)


エイドリアン・スミス
 アイアン・メイデンのギタリスト。その技巧は、超絶をもって知られる。
 一時バンドを脱退したものの、復帰。エイドリアン脱退後バンドはヤニック・ガーズを新ギタリストに迎えたが、エイドリアン復帰後もガーズは残留。現在アイアン・メイデンはギター三人の編成になっている。
 今年2021年、アイアン・メイデンはロックの殿堂候補に。意外にも、これが初のノミネート……だったが、殿堂入りは逃した。
 一方エイドリアン・スミスは、最近リッチー・コッツェンとともに新たなプロジェクトを始動させている。
 その Smith/Kotzen の動画を。

Smith/Kotzen - Taking My Chances (Official Video)


グレン・ティプトン
 ジューダス・プリーストのギター。
 2018年、パーキンソン病を患っていることを公表した。
 パーキンソン病は、MR.BIGの故パット・トーピー(Dr)も苦しんだ進行性の難病。かのオジー・オズボーンも罹患している。ボーカリストならパフォーマンスに影響しないかも知れないが、楽器奏者にとっては致命的な病気である。グレンも、演奏クオリティを維持できないと判断し、初期の段階でライブから身を引く決断をくだした。ただし、時折ゲストとして参加し、負担のかからない曲を演奏することはある。2018年の来日公演でも、数曲参加した。
 一方バンド側は、この事態を受けて「グレン・ティプトン・パーキンソン病基金」を設立。治療法の研究などを支援している。
 動画は、ジューダスの代表曲 Painkiller。

Judas Priest - Painkiller


エディ・クラーク
 モーターヘッドのギタリスト。
 人呼んで、ファスト・エディ・クラーク。初期のモーターヘッドでギターを弾いていた。
 彼は、今回紹介したギタリストのなかで唯一の故人である。その呼び名のとおり、too fast to live な人生だったのかもしれない。
 2018年、死去した際には、メタリカやスコーピオンズ、ガンズ・アンド・ローゼズの面々が追悼の言葉を寄せた。その顔ぶれからも、エディがどういうギタリストだったかはよくわかる。カーク・ハメットの「最後のエースが去ってしまった」というツイートが、すべてを物語っているだろう。
 曲は、モーターヘッドの The Hammer。

Motörhead – The Hammer (Live in Newcastle 1981)


最後に、レアなコラボ動画を。

まずは、フレディ・マーキュリー没後のトリビュートコンサートにおけるブライアン・メイとトニー・アイオミの共演。
曲はクイーンの Stone Cold Crazy。ちなみに、歌っているのはメタリカのジェームズ・ヘットフィールド。

Queen & James Hetfield/Tony Iommi - Stone Cold Crazy (The Freddie Tribute Concert)

さらに、ブライアン・メイ、トニー・アイオミに加えて、リッチー・ブラックモアが参加している動画。 
曲は、Smoke on the Water。
ギター弾きなら誰でも一度はそのリフを弾いたことがあるだろうといわれるあの曲。
ギターには、他にピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモア、イエスのクリス・スクワイア、ラッシュのアレックス・ライフソン……とプログレ系の人達も参加してかなり豪華。
プログレ系では、エマソン、レイク&パーマーのキース・エマソンも鍵盤で参加。
ついでに他のメンツについても触れておくと、ドラムは先ほどの動画でも出ていたクイーンのロジャー・テイラー。ボーカルには、ブライアン・アダムス、ポール・ロジャース、イアン・ギラン、そして、アイアン・メイデンからブルース・ディッキンソン……と、こちらも超豪華。

Smoke on the Water with Queen, Pink Floyd, Rush, Black Sabbath, Deep Purple, etc