ロック探偵のMY GENERATION

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ロックの日 ~グラムロック特集~

2021-06-09 21:15:55 | 日記


ロックは死んだ――

先日、KISSの記事で、ジーン・シモンズのそんな言葉を紹介しました。

それは、ロックというジャンルの担い手が危機に瀕しているという警鐘だったわけですが……そのジーン・シモンズの発言に対して反論したのが、アリス・クーパーでした。

いわく――「いまこの瞬間にも、ロンドンのどこかのガレージで、エアロスミスやガンズ・アンド・ローゼズをやってる連中がいる。18歳のキッズがギターやドラムでハードロックをやってるんだ。それはアメリカでも同じさ」
以前の記事でも書いたとおり、統計的にロックがもう聴かれなくなってきているという現状があるわけですが、これに関してアリス・クーパーは、ロックが「まさにいま、本来あるべき位置にある」ということだと述べます。
おかしな言い方に聞こえるかもしれませんが、これはアリス・クーパー一流の慧眼です。
いまロックンロールはメインストリームにいない。そして、メインストリームにいないということこそが、ロックンロールという音楽の本来の立ち位置だ……アリス・クーパーがいっているのは、そういう一種の逆説なのです。
そもそもロックンロールは周縁的なもの、中心からはじき出された者の音楽なのだから、多くのリスナーに聴かれなくなった今こそロックンロールはその本来あるべき場所にいるのだ――じつに深い洞察であり、また力強い言葉でしょう。

これを、単に負け惜しみなどと言ってはいけません。

というのもアリス・クーパーは、いわゆるグラムロックのミュージシャンとして、ロックンロールの原点回帰運動をリードしてきた人だからです。

それはどういういことか。
ちょっと私の思うところを書いてみます。


私の知るかぎり、「ロックは死んだ」という言葉が最初に出てくるのは、フーの Long Live Rock という歌です。

  地すべりだ 岩(rock)が崩れ落ちていく
  俺たちの真上に落ちてくる 
  俺たちは懸命にやったけど あんたはあくびをするばかりだった
  よく見てみなよ ロックは死んだ ロックは死んだ ロックは死んだ…

これは70年代前半の曲で、おそらく「ロックは死んだ」というのはそのぐらいのときからもういわれていたわけでしょう。
そして、その「ロックは死んだ」論に対するロック側の応答の一つが、いわゆるグラムロックだったのです。
それは、もともとのロックンロールが持っていた初期衝動や、中性性、挑発性といったことを取り戻そうという運動です。

一種の、ロックンロール・リバイバル……ゆえに、グラムロックというのは、とにかくド派手で、過激で、挑発的でした。
グラム・ロックという言葉自体は70年代の一時期を指すものでしょうが、そのスタイルは後のロックに大きな影響を与えています。

今日6月9日は「ロックの日」なわけですが、今回はそこにあわせてグラムロック特集をやってみようと思います。



まずは、アリス・クーパーの代表曲の一つ「スクールズ・アウト」。
フー・ファイターズと共演する動画です。ちょっと音が割れてしまっているのが残念ですが……

Alice Cooper joins The Foo Fighters on stage for Schools Out and I'm Eighteen

ちなみに、同タイトルのアルバム発売時のレコードは、学校の机のようなジャケットになっていて、それを開くと女性物の下着に包まれたレコードが入っているという仕様になっていました。まさに、このセンスです。


そして、ジーン・シモンズも影響を受けたといっている Slade。
日本ではあまり知名度が高くないと思われますが、グラムロックを代表するバンドの一つです。

Slade - You Boyz Make Big Noize


デヴィッド・ボウイ。
長いキャリアのなかでいろんな顔をみせてきましたが、70年ごろにはグラムロックのアーティストとみなされていました。
そのいわゆるグラム期からはちょっとはずれますが、本稿の論旨にはふさわしい「愛しき反抗」。
ロックンロールとは存在自体が反逆である……という意味でいえば、そのテーゼを体現する曲ともいえるでしょう。

David Bowie - Rebel Rebel • TopPop


浦沢直樹先生の漫画でも注目を集めたTレックス。
マーク・ボランもまた、グラムロックを代表するアーティストでした。
アニメ『絶対無敵ライジンオー』に登場する矢沢校長は、若いころイギリスに留学したことがあり、マーク・ボランと友達だったそうです。(ちなみに、学校で飼育されているヤギの名前は「キャロル」といいます)

T.Rex - The Soul Of My Suit (Official Promo Video)



モーターヘッドの故レミー・キルミスターが在籍していたことでも知られるホークウィンド。
ごく短期間ながらジンジャー・ベイカーがドラムを叩いていたことも。

Hawkwind - On The Right Stuff - (Live at Stonehenge Free Festival, UK, 1984)


モット・ザ・フープル。
デヴィッド・ボウイが提供した「すべての若き野郎ども」は、単にグラムロックというだけでなく、ロック史に残るアンセムと目すべき名曲です。この邦題もすばらしい。
動画は、2019年ロックの殿堂。亡きボウイへ捧げるパフォーマンスです。
クイーンのブライアン・メイがギターを弾き、スティーヴン・ヴァン・ザントもコーラス……と、このブログではおなじみのメンツが参加。
クイーンは下積み時代にモット・ザ・フープルの前座をやっていたことがあって、彼らもまたグラムロックの血脈を受け継ぐアーティストとみなされているのです。
あと、このパフォーマンスにはデフ・レパードも参加していて、リック・アレンの隻腕ドラムを見ることができます。

Finale performance of "All the Young Dudes" at the 2019 Rock & Roll Hall of Fame Induction Ceremony

話がクイーンのほうにいったので、ついでにクイーンの関連動画を。
フレディ・マーキュリー・トリビュートコンサートにおけるHeroes です。
先の動画にも出てきたイアン・ハンターと、グラム期ボウイの盟友ミック・ロンソンがゲストで登場。ボウイにはクイーンとの共作曲もあり、その縁ということでしょうか。

Queen David Bowie, Ian Hunter, Mick Ronson - Heroes (Freddie Mercury Tribute Concert)

フレディ・マーキュリーも、デヴィッド・ボウイも、ミック・ロンソンももういませんが……それでも、次の時代の“ヒーロー”は必ず現れる。そいつは、いまどこかのガレージでギターを弾いている……そう信じていたいと思うロックの日です。