ロック探偵のMY GENERATION

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SHAKALABBITS「少年と白い犬」

2021-06-26 23:15:01 | 音楽批評


今回は、音楽記事です。

このカテゴリでは寺山修司ゆかりのアーティストということでやっていて、前回は moonriders の鈴木慶一さんが音楽を担当したロックミュージカル『時代はサーカスの象にのって』を紹介しました。

それでYouTubeを観ているうちに知ったんですが……『時代はサーカスの象にのって』は、2017年に、新たな演出で上演されているんだそうです。

そこで音楽を担当したのが、SHAKALABBITS。

というわけで、今回はこのシャカラビッツというバンドについて書こうと思います。まあ、寺山修司ゆかりといえるかどうかはかなり微妙ですが……



シャカラビッツ、通称シャカラビは、女性ボーカルUkiを中心とする4人組のバンド。

ロック味あふれるサウンドや詩心に満ちた歌詞は、非凡なものを感じさせます。
そのため――なんだか上からな言い方ですが――一目置いていたバンドです。
そんなシャカラビが21世紀の『時代はサーカスの象にのって』で音楽を担当していたというのを知って、なるほどと納得させられました。

ちなみに、私がいまやってるバンドで彼らの曲をやったこともあります。
それが、「少年と白い犬」。

[SHAKALABBITS] "少年と白い犬" Full Ver. [Music Video]

で、そのシャカラビが、『時代はサーカスの象にのって』にみずから出演し、音楽もやっていたわけです。
公式チャンネルにその様子を編集した動画があったので、のせておきましょう。

時代はサーカスの象にのって

リングを作ってそのうえで劇をやるというのは、この演目が初めて上演されたときの演出を踏襲したものらしいです。
84年版では、そもそも《舞台》というものを造らずに、演者も観客も同じフロアにいるというかたちでしたが……こんなふうに、演者と観客の関係を問い直すというのも、寺山修司ならではでしょう。

寺山修司は、ナントカ主義的な言い方でいえば、おそらくポスト構造主義みたいなところに分類される人だと思われます。
その目指すところが、いわゆる“第四の壁”を破る試みであったり、作者/演出者すらコントロールできないある種の偶発性によって予定調和を乱す演出ということになるでしょう。

たとえば、『時代はサーカスの象にのって』では、ボールを渡された人がアドリブでなにかせりふを口にすることになっていて、誰にボールをパスするかということは事前に決められていない……といった演出があります(※すべてのバージョンが同様の演出なのかは不明……)。
そういう、事前に決められていないところ、ハプニング的なところにしか“リアル”はあらわれないわけです。
予定調和が破れた亀裂からリアルが現出する……それがロックンロールだと、このブログでは何度か書いてきました。
そんなリアルなロックンローラーが、忌野清志郎だ、と。
そして、そのキヨシローの盟友であるチャボさんの古井戸もまた、天井桟敷に関わっていた――というふうに、話がつながってくるわけです。
そこに共有されている波長がすなわち、ニューウェイヴということであり、そのウェイヴは、この日本という歌謡曲大国においても消滅することなくたゆたっていて、時折表舞台にも顔を表します。
シャカラビッツもまた、その波長を共有するアーティストということなのでしょう。