露地栽培と言っても,庭先の一隅もあれば数列の畝を作って育てる畑の栽培もある。露地栽培についての記述も掲載されているので参考までに書き写してみた。
「邦産ムラサキ園芸栽培の実際」 伊賀 達紀(著述・野草研究家)
5、露地栽培
この場合は鉢植栽培とは趣を異にし、傾斜地を好むムラサキに対して平地栽培を行わねばならず、東京地方のような
雨量の多い地域では、排水不良のため根部が腐敗し、6月梅雨明けの頃には、1本も余らず全滅する場合がよくあ
る。このため、花壇の上にビニール屋根を設けて雨水を遮断し、水の供給はもっぱら灌水のみに頼るようにし、乾燥
が甚だしいときのみこれを行う。実際に管理してみると、ムラサキは実に乾燥に強い植物であるとつくづく感じさせ
られる。土が真っ白に乾燥していても、容易に萎れない。
花壇への植え付けは直播きが比較的よいが、種子の量を考虜に入れて行う必要があることは前に述べた。鉢栽培で
1年を過ごし、2年目に露地に移植するのがもっとも確実である。この場合の用土は、普通の黒土、赤土などなんで
も生育するが、肥料分の少ない砂がもっともよく、いずれの用土の場合でも、降雨水は避ける必要がある。平地での
栽培では排水不良となり、おそらく全滅すると思われるのである。2年生苗を移植した露地栽培では、その年に茎葉
が実によく伸長し、開花結実し観賞には最高の生育状態となる。
移植の方法は鉢植えの例にならい、植穴を広くとって、土塊を貫通しているムラサキの細根を切らぬよう、静かに
植込むことである。邦産ムラサキの生育では、個体差が甚だしく、全く同一の条件にて栽培した筈であるが、その結
果には際立った差異が生じてくる。移植の際に根を損じたものは生育が悪く、根が健全なものは生育がよいのは、当
然であるがその影響の大きさには、特に注目させられる。栽培にばらつきが多いのは考えものである。
数本の少数栽培にはミニ花壇が最適であり、20~30℃ の底なし箱に、赤玉土を満たした程度で十分である。
露地栽培もまったく施肥なしで管理する。施肥は主根の伸長を促し枯死を早める結果となる。また露地栽培では、マ
ルチを行わなくても十分に生育する。
同一花壇内(東京地方)100本の例では、5月1日第1花(頂花)が開花した。この時点でのムラサキの草丈は
48cm、葉の数37枚、花の径は1.0cmであった。また開花の最盛期は1ヶ月後の6月1日で当日の開花数は455個、
1株当たり平均開花数は 5.83個、7月10日では開花数は11個、1株当たり平均開花数は0.12個であった。この花壇
の開花が終了したことを示している。
また、この花壇に植え付けたムラサキ100本中開花を見たものは85本であり、残15本は開花を見ずに枯死したものが
主である。個々の株のうちもっとも生育の旺盛だったものは、1株で2茎を出次第1花開花までの草丈はそれぞれ
57cmと55cm、葉数34枚と31枚,側枝数16本と10本、開花数385個と120個,得られた分果数689個と264個,つま
り1株より953粒の種子を得たことになる。5月初旬開花のものは,8月20日には第1回の採取ができ,とり播き可能
である。これ以降も適時に蕚の黄変したものより採取してゆけばよいのであるが、完熟後1ヶ月を経過したものも播
種した結果は、発芽率に差異は認められなかった。 P55~57より転載
「邦産ムラサキ園芸栽培の実際」 伊賀 達紀(著述・野草研究家)
5、露地栽培
この場合は鉢植栽培とは趣を異にし、傾斜地を好むムラサキに対して平地栽培を行わねばならず、東京地方のような
雨量の多い地域では、排水不良のため根部が腐敗し、6月梅雨明けの頃には、1本も余らず全滅する場合がよくあ
る。このため、花壇の上にビニール屋根を設けて雨水を遮断し、水の供給はもっぱら灌水のみに頼るようにし、乾燥
が甚だしいときのみこれを行う。実際に管理してみると、ムラサキは実に乾燥に強い植物であるとつくづく感じさせ
られる。土が真っ白に乾燥していても、容易に萎れない。
花壇への植え付けは直播きが比較的よいが、種子の量を考虜に入れて行う必要があることは前に述べた。鉢栽培で
1年を過ごし、2年目に露地に移植するのがもっとも確実である。この場合の用土は、普通の黒土、赤土などなんで
も生育するが、肥料分の少ない砂がもっともよく、いずれの用土の場合でも、降雨水は避ける必要がある。平地での
栽培では排水不良となり、おそらく全滅すると思われるのである。2年生苗を移植した露地栽培では、その年に茎葉
が実によく伸長し、開花結実し観賞には最高の生育状態となる。
移植の方法は鉢植えの例にならい、植穴を広くとって、土塊を貫通しているムラサキの細根を切らぬよう、静かに
植込むことである。邦産ムラサキの生育では、個体差が甚だしく、全く同一の条件にて栽培した筈であるが、その結
果には際立った差異が生じてくる。移植の際に根を損じたものは生育が悪く、根が健全なものは生育がよいのは、当
然であるがその影響の大きさには、特に注目させられる。栽培にばらつきが多いのは考えものである。
数本の少数栽培にはミニ花壇が最適であり、20~30℃ の底なし箱に、赤玉土を満たした程度で十分である。
露地栽培もまったく施肥なしで管理する。施肥は主根の伸長を促し枯死を早める結果となる。また露地栽培では、マ
ルチを行わなくても十分に生育する。
同一花壇内(東京地方)100本の例では、5月1日第1花(頂花)が開花した。この時点でのムラサキの草丈は
48cm、葉の数37枚、花の径は1.0cmであった。また開花の最盛期は1ヶ月後の6月1日で当日の開花数は455個、
1株当たり平均開花数は 5.83個、7月10日では開花数は11個、1株当たり平均開花数は0.12個であった。この花壇
の開花が終了したことを示している。
また、この花壇に植え付けたムラサキ100本中開花を見たものは85本であり、残15本は開花を見ずに枯死したものが
主である。個々の株のうちもっとも生育の旺盛だったものは、1株で2茎を出次第1花開花までの草丈はそれぞれ
57cmと55cm、葉数34枚と31枚,側枝数16本と10本、開花数385個と120個,得られた分果数689個と264個,つま
り1株より953粒の種子を得たことになる。5月初旬開花のものは,8月20日には第1回の採取ができ,とり播き可能
である。これ以降も適時に蕚の黄変したものより採取してゆけばよいのであるが、完熟後1ヶ月を経過したものも播
種した結果は、発芽率に差異は認められなかった。 P55~57より転載