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流野精四郎&東澤昭が綴る読書と散歩、演劇、映画、アートに関する日々の雑記帳

Meet the Kids

2009-04-23 | アート
 4月19日、東京芸術劇場1階のアトリウムで行われたMeet the Kidsダンス公演「トーキョーゲーゲキ☆デビュタント」を観る機会があった。
 東京文化発信プロジェクトの一環として、小学生の子どもたちとダンサー・振付家の森下真樹が一緒に創作し、今年2月、パルテノン多摩で初演され好評だったダンス作品を改編したものである。ほかにダンサーの入手杏奈が出演している。
制作:NPO法人芸術家と子どもたち、主催:東京芸術劇場、東京都、(財)東京都歴史文化財団。
 
 子どもたちが考える自分自身の特長や将来の夢、独特の身体の動きなどを再構成しながら作品化したもので、30分ほどのパフォーマンスはアトリウムという場所の特性も含めてよく練りこまれたものであった。

 しかし、もう少し集中を保てる場所であってほしかったというのが正直な感想だろう。アーティストはもちろん、何より子どもたちが可哀想でならなかった。

 おりしも、隣接する池袋西口公園では、バングラデシュのお正月を祝う「ボイシャキ メラ(正月祭)」と「カレーフェスティバル」が行われていたのだ。
 もちろん彼らに罪はないのだが、子どもたちのパフォーマンス中にも、情け容赦なく民族音楽や日本の和太鼓、津軽三味線や屋台からの音楽が流れ込んでくる。
 おまけにカレーの皿を抱えた一群がこちらの舞台前のベンチに陣取り、食べることに没頭している。
 子どもたちが演じているその目の前で、舞台なんかには興味がないことを露骨に態度に出して舞台には一切目も向けようともせず、食べ終わった途端に一斉に席を立ち、おかげで一番良い舞台前に空席ができてしまう始末である。
 なんとまあ、腹の立つ・・・!

 こうした時に焦るのが大人たちである。
 森下真樹さんもよほど腹に据えかねたのだろう、パフォーマンス中に「カレーフェスティバルには負けないぞうっ」などと口走っていたが、これはまあ御法度だろう。
 しかし、パフォーマンスやアートという非日常が、カレーや正月祭などという徹底的に日常的で伝統的な生活文化の前に晒されると、いかに脆弱なものであるかということを痛感する。
 森下真樹さんが葉加瀬太郎の演奏する「情熱大陸」のテーマに合わせてダイコンとネギでヴァイオリンを演奏するパフォーマンスなど、ちゃんとしたシチュエーションの舞台であれば抱腹絶倒のシーンなのだろうが、こうまで徹底的に日常的現実感の横溢する場では、直視することが憚られるような「コッケイ」で「ヘンな人」に見えてしまう。

 救いは子どもたちである。彼らはそうした状況にもめげることなく臆することなく、自分の表現すべきものを表現していた。

 子どもたちは強い。舞台に立つ者の気構え、心構えを教えてもらったような気さえする。
 ありがとう、子どもたち!


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