2012年に補修工事が始まった国の重要文化財門司港駅(木造一部2階建て)の工事が終わり、2019年3 月 10 日、駅前広場でグランドオープンを迎えました。
門司港駅は鹿児島本線の始発駅で、関門トンネルが開通するまでは、九州の玄関口でした。駅舎は、1914年(大正3年)に建築された木造2階建てで、ネオ・ルネッサンス様式と呼ばれる左右対称の外観デザインが特徴でした。1988年に駅舎としては全国で初めて国の重要文化財に指定されています。
開業後100年近くが経過し、シロアリ被害や老朽化による腐食でゆがみや亀裂が生じていることが分かり、本格的な保存修理工事や耐震工事が2012年9月から開始されたのですが、6年を超える工事をやっと終えたのです。
門司港駅には強い思い出が残っています。門司港駅のある門司市(現在は北九州市門司区)は、私の第2の故郷です。昭和26年、中学卒業と同時に、有線通信士の養成機関である電気通信省「熊本電気通信学園」に入寮しました。食糧難の時代、寮の食事ではおなかが空いてたまりません。
土曜日になると授業の終わるのを待って、門司の母のもとにいそいで帰省したものです。新幹線が開通し、いまでこそ熊本~門司港間は約1時間で行くことができますが、当時は約7時間ほどかかりました。門司に着くのは何時も夜遅くなります。翌日はまた熊本へ帰らなければなりません。
そこで利用したのが、門司港駅23時5分発の都城行きの夜行列車です。寮のある上熊本駅には午前4時30分に着きます。日曜日の夜、列車を待つわずかな時間、駅の構内を歩き回りました。
戦前から使用されている洗面所、一風変わった大きな手水鉢、チッキ(手荷物)取扱所、立ち入ることができず外から眺めた「一・二等客待合室」・「貴賓室」・「関門連絡船通路跡」など。
夜行列車の4人掛けの椅子は固く、丸くなって列車の窓から深夜の暗闇を眺めたのも、また楽しい思い出の一つです。
門司港駅は「レトロ門司港」の玄関口として、多くの観光客で賑わっています。修復なった新しい門司港駅の駅舎を1日も早く訪れたいものです。