Stolen Moment

朝から経営分析の講習会だった。
経営分析というのは、
自己資本比率がどうの、経常利益率がどうのというやつである。
過去にも勉強したことはあるが、あまり役に立った覚えがない。

大企業の財務とか、経営管理の仕事をする人には有用な知識なのだろうか。
文系な私には、未だに何故、固定費を限界利益率で割ると、損益分岐点の
売上高が出るのか、さっぱり分からない。
とにかく、サビついた頭の体操のつもりでやっている。

講習会場の隣りには、公園があり大きな池がある。
すっかり様変わりしているが、
この公園、子供の頃に来たことがある。
懐かしくなって、昼休みに少し散歩をした。

曇った空からは、おぼろな白い太陽が見えた。
鈍い光の中、池をぼんやりと眺めて歩いた。
水辺には紫色のカキツバタが咲き、
甲羅干しの亀が何匹も寝転んでいた。

釣り糸を垂れるおじさん連中、
水面をトンボが、スイスイと飛んでゆく。
風はそよとも吹かず、水もつゆと動かず、
大きな風車ばかり、電気仕掛けで廻っていた。

私は、何かがもどかしかった。
木々の緑を滴らせ、
池の水が跳ね回るくらいの、
雨が降るがいい。
風景全てが煙るがいい。

どうしてか、
少し悲しい気持ちがして
緑の小道を引き返していた。