俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

迎え酒

2014-05-14 10:11:28 | Weblog
 迎え酒が有害だということは常識だが、実は私は迎え酒の常習者だ。二日酔の不快感を解消するためにこれほど有効な手段は無い。新しい酒を注入すれば不快感が爽快感に変わる。この効果は、不快感を感じる中枢神経の働きが鈍化するからだろう。食欲不振や憂鬱にも効くのは脳の機能が低下するからだろう。
 しかし迎え酒は肝臓にとっては最も悪いらしい。それを防ぐために私の迎え酒は135mlのビール1缶だ。これで不快感を鎮めて夜までは飲まない。
 喫煙の効果も迎え酒と似ている。長期的には多分有害だろうが、煙草を喫えば気分が落ち着くし意識もスッキリする。
 薬に依る対症療法もこれらと同じようなものではないだろうか。とりあえず今の不快感を緩和することしか考えていない。治療とは全く逆であろうとも今が良ければそれで良い。
 医師は飲酒・喫煙を、健康を損なう有害な生活習慣と咎めるが、医師のやっていることもそれと大差無かろう。現在の不快な症状を誤魔化しているだけだ。SSRIなどの抗鬱剤は酒や麻薬と同じような効果しか持っていないのではないだろうか。
 迎え酒を慎むことが肝障害を防ぐように、薬を極力飲まないことこそ重要とさえ思える。飲んでも構わないのは緊急時と、治療効果がある薬に限定すべきだろう。
 東日本大震災以降PTSD(心的外傷後ストレス障害)を患う人が増えているそうだ。フロイトはトラウマを抑圧するから神経症に罹ると考えたがそんな単純なものではない。特に顕著なのは事故や戦争によるPTSDであり、彼らが最も恐れるのがフラッシュバックだ。最も思い出したくない瞬間が、まるでたった今起こっているかのように再現されてその度に恐怖が蘇る。これを薬で誤魔化すのではなく、脳内秩序を再構築するという方向で気長に治療に励まなければ治癒はあり得ない。PTSDの治療に最も必要なのは心のリハビリであり、迎え酒にも等しい対症療法に頼っていては治癒できない。

二枚舌

2014-05-14 09:41:31 | Weblog
 福島県産の農産物は安全か、と問えば殆んどの人が「安全だ」と答える。危険な地域からは収穫されていない筈だからだ。政府もマスコミも安全と言い、危険だと言おうものなら「風評被害を助長する差別主義者」と非難されかねない。しかし実際の行動はどうだろうか。福島県産品は差別されている。「小さな子供には少しでも安全な物を食べさせたい」と言う。どちらが本音であるかは言うまでも無かろう。彼らは口先では安全と言いながら実際の行動では差別をする。彼らがこんな対応をするのは、安全という大本営発表を信じていないからだ。政治家が寄ってたかって「美味しんぼ」を非難するのはこの大本営発表を否定させないためだ。
 「美味しんぼ」による風評被害について考えるために第110巻「福島の真実①」を読み直してみた。原作者の雁屋哲氏の真意が非常に明確に、海原雄山の言葉として伝えられていた。「安全なものは安全、危険なものは危険、きちんと見極めをつけることが福島の食材には必要なのです。消費者に真実を伝えなければいけない。(P126)」私はこの言葉を100%支持する。市場に出回っている福島県の食材を総て安全と言う人も、総て危険と言う人もどちらも誤っている。実際には基準値を超える物が市場に出回っている。特に問題なのは魚だ。東北で獲れた魚をわざわざ関東で水揚げして産地偽装をしている業者がいるという噂が跡を絶たない。産地偽装魚でなくても、魚は自力で泳ぐのだから福島第一原発の近海にいた汚染魚が関東で捕獲される可能性はかなり高い。
 BSE(狂牛病)騒動では全く無意味な全頭検査を十数年間続けることによって数百億円が無駄遣いされた。これと比べれば放射能検査は手間も費用も掛からない。それを怠っているのは、基準値を超えた食材が見つかって嘘が露呈することを避けたいからだろう。安全な物と危険な物を分別できないようにすることが国の施策だ。
 風評被害が発生するのは事実が隠蔽されているからだ。危ない物も危なくない物も一緒にして販売されているからだ。非難されるべきなのは「美味しんぼ」ではなく、事実を調査しようとせず、公然の秘密でさえ隠蔽しようとする農林水産省であり、放射線による健康被害を皆無と主張する厚生労働省だろう。