俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

法則

2014-11-04 10:30:54 | Weblog
 冬に近付けば寒くなり夏に近付けば暑くなる。これらは無条件に肯定されねばならない。変えられないことに対しては自分が変わるしか無い。天を呪うのではなくそれに対応することが唯一可能な選択肢だ。
 子供の頃、私は自分の体が思い通りに動かないことに不満を持った。その時ふと気付いた。首が後ろまで曲がらないことは不便だろうかと。あるいは目が後ろにも付いていないから不自由だろうかと。通常こんなことに不満を感じない。無い物ねだりは無意味だ。自分に備わった能力に満足してそれを精一杯生かすべきだと思った。
 人は境遇に対して不満を持つ。しかしそれは多くの場合、他者と比較して恵まれていないと思うからだ。人は象よりも小さくて弱いがそのことに不満を感じる人はいない。人は象ではないからだ。自分と他人は違うということが分かれば他人を妬むことは無くなる。
 変えられないことに不満を持っても仕方がない。1日は24時間であり人は老化する。こんなことに不満を持つよりも、変えられることに対して不満を持つべきだ。黒澤監督は映画の撮影中に「あの夕陽を止めろ!」と叫んだそうだが、映像の中でならともかく現実の天体運動は変えられない。
 英語のlawは「法律」であると同時に「法則」という意味でもある。彼らは法則を神が定めた法律と考える。日本人にとって法則とは自然そのものであってルールではない。
 法則を変えることはできない。人は自然という大海に浮かぶ小舟のようなちっぽけな存在だ。しかし社会なら違う。社会は所詮人間が作ったものであって人間が変えることができる。中国のような思想統制の国とは違って日本では自由に考え自由に発言できる。思考と言論の自由、これは素晴らしい特権だ。自分で考えることを放棄することは生きることの放棄にも等しい。マスコミなどの嘘に騙されていれば偽りの中で一生を終えてしまう。これはオウム真理教の誤った教えを信じて生きることと大差は無い。
 私は天に向かって唾を吐かない。必然は受け入れ人為だけを批判する。人為なら人力によって変えられるからだ。法則は変えられない、ただ従うだけだ。しかし社会は変えられる。法則は変えられないが、法律も憲法も変えられる。

祖父母

2014-11-04 09:52:40 | Weblog
 もし幼子を遺して母が死んだらその夫にはどんな対応があり得るだろうか。①シングルファザーになる②再婚する③祖父母に預ける④里子に出す。私は③を最善の選択と考える。
 女性が幼子を抱えて、育児と仕事を両立させることなど不可能だ。託児所に預けるだけで解決する訳ではない。あるいは夫がイクメンになっても今度は夫が育児のために仕事の手抜きをせねばならない。先に結論を書いてしまうが、祖父母との同居だけが解決策だ。核家族化こそ女性の社会進出を拒む最大因だ。
 マタハラを禁止しても問題は全く解決しないどころかもっと深刻な問題を招く。それは女性の就職条件が現状よりも悪くなるということだ。どこの企業も近い将来に長期休養を要する病人を雇おうとはしない。出産は長期休養を要する難病のようなものだ。勿論、妊娠・出産・育児は病気ではない。しかし企業にとっては同じことだ。長期休養を要する人など雇わないし、雇うとしても補助的な役割しか任せられない。
 突然、全く別の話に飛躍するようだが、人類の寿命の異常な長さについて考えたことがあるだろうか。動物として最も典型的なのは鮭の寿命だ。産卵と射精を終えた成魚は総て死ぬ。動物は繁殖力を失った時点で死ぬのに、人類のメスだけは閉経後も30年も生きる。繁殖力を失った個体が生き永らえても種にとっては何のメリットも無い。R.ドーキンスが指摘したように、もし個体が遺伝子を運ぶための乗物であるなら早急に乗り捨てるべきだろう。なぜこんな動物界の常識に背く異常な方向に進化したのだろうか?
 肉食動物であれば繁殖力が失われる前でも捕食力が失われれば死ぬことになる。老人は繁殖力も捕食力も失っているのに生き永らえる。これは不合理だ。こんな穀潰しは早く死んだほうが種のためになる。実際に口減らしや姥捨てが行われた時代もあった。このことだけを考えれば長寿は無駄だ。種の生存にも繁殖にも役立たないのだから無駄としか思えない長寿という特性が淘汰されなかったのは、老人には種の存続のために欠かせない何らかの重要な役割があったからだろう。
 成人は男女共に余りにも忙しかった。生き延びることだけで精一杯で子育てにかまけてなどいられなかった。しかし出産最適期は同時に狩猟・採集や農耕のために最適な活動最盛期でもあった。多分、人の知力以外の能力は25歳前後にピークを迎えるだろう。その時期をどう使うべきか。仕事・スポーツ・出産などの選択肢から総てを選ぶことはできない。働き盛りの女性であれば自分にしかできない妊娠・出産を請け負いそれ以外を他者に任せることが最も有利な選択だろう。だから長期に亘る育児は祖父母に任された。育児のために人類の寿命は動物として異常なほど長くなった。このことを目的論ではなく進化論的に説明すれば、孫育てが可能なほど長寿の祖父母を持つ夫婦が適者として多くの子孫を残したということだ。
 祖父母が孫を育てるために長寿になったのであればこの動物的特長を生かさない手は無かろう。日本が少子高齢化したのは核家族化が最大の原因だ。これを克服することが唯一の解決策であり、マタハラ禁止もイクメンも託児所も一時凌ぎの対症療法であって根本的解決にはなり得ない。3世代同居の大家族化こそ日本の衰退を防ぐための唯一の処方箋だろう。これ以外に育児と仕事を両立させる方法は無かろう。