俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

大国のエゴ

2014-11-14 10:21:55 | Weblog
 アメリカも中国も我儘な国だが、12日に発表された米中の共同声明は酷過ぎる内容だった。中国は2030年頃までを二酸化炭素排出のピークとするとのことで、中国が環境を汚染し続けることをアメリカが承認したという形だ。二大国の合意となれば他国はおいそれと口出しできなくなる。これで中国は堂々と大気汚染を続けられる。これは二酸化炭素排出量が1・2位で世界の4割を占める迷惑国による馴れ合いだ。
 こんな暴挙の裏には何らかの交換条件があったと思われるが今のところそれは表には出ていない。いずれ分かることだろう。
 中国ではAPECに合わせて1~12日まで、工場の操業停止や自動車の交通規制などを行った。その成果は素晴らしい。北京のPM2.5は前年同期比で55%も減ったそうだ。テレビで見る限り、北京では滅多に見られないような青空になりAPECブルーと呼ばれているそうだ。抜本的な手を打たずその場凌ぎの対策だけでこれほど効果があるということから、普段いかに酷い垂れ流しが行われているかよく分かる。これをあと16年間放置することにアメリカがお墨付きを与えてしまった。
 アジアの上空には偏西風がある。だから中国による大気汚染で被害を受けるのは日本と韓国と北朝鮮だけだ。広い太平洋で隔てられたアメリカの被害は殆んど無い。日本と韓国はアメリカの国益のために無視されてしまった。
 勿論、最も重大な被害を受けるのは中国人民だ。多分、平均寿命が数年縮まるだろう。だから何らかの手を打つだろうが、それは外国に干渉されることなく中国共産党の意のままだ。日本はこれまでに何度もアメリカに煮え湯を飲まされた。こんな国を友好国と考えるのは余りにもお人好し過ぎる。
 イソップ寓話を思い出した。イタチが鶏に言った「お前達は朝から騒いで迷惑だ。」鶏が答えた「人間様に朝を告げているのです。」イタチが再び言った「鶏姦(ギリシャ語では近親相姦を意味するらしい)をするとはけしからん。」鶏が答えた「卵を沢山産んで人間様に役立っているのです。」するとイタチは「つべこべ言うな」と言って鶏を食べてしまった。教訓;悪党に正しい理屈を主張しても虚しい。

刑罰

2014-11-14 09:46:34 | Weblog
 近代法の刑罰は様々な意味を持っている。人によってどれを重視するかが異なるので意見の一致が難しい。現存する成文法では2番目に古いハンムラビ法典は「目には目を」を原則とする。これは復讐法のように理解され勝ちだが「目には目で償え」という意味であり損害賠償の色合いが濃い。現代の刑法もこの2つの要素が大前提となるがそれ以外に社会秩序の維持も目的とされている。刑法の根本には、一方に個人の権利を守るための復讐と損害賠償があり、もう一方に社会秩序を維持するための禁止がある。
 秦の始皇帝は法家の思想に基づいて厳格な法律万能主義を採った。これは権力者が上から押し付けた法律だった。人民を支配し搾取するための法律だ。だからこの「法治主義」は人民にとっては軛でしか無かった。秦を倒した劉邦の「法三章(殺すな、傷付けるな、盗むな)」が熱烈に歓迎されたのは、秦の法律が権力者のためのものだったからだ。秦の法律は過酷で年貢や人足などが足りなければ厳罰が科せられた。だから厳罰を避けるために山賊になる者も後を絶たなかった。このことが却って国力の低下を招いた。
 法律はトップダウンとボトムアップが入り乱れているし、社会秩序を守るための法律が、道路交通法のように同時に市民を守る法律になることもある。
 刑罰は抑止力として働く。日本でしばしば議論になるのは、死刑が抑止力を持つか、ということだが、どんな刑罰も何らかの抑止力を持つ。逆に罰則の無い規則であればマナーに過ぎず拘束力を持ち得ない。
 裁判ではしばしば責任能力の有無が問われる。心神喪失状態であればそれが違法であることを意識できないからだ。あるいは殺人罪とするためには殺意が問われる。殺意が無ければ過失致死罪になる。倫理的にはそんな区別が必要だろうが、私はヒグマだろうがツキノワグマだろうが、人を襲うクマは悪いクマだと考える。やむを得ない事情があった殺人犯よりも、理由も無く犯行に至る狂人のほうが怖い。
 私は特に性犯罪者を危険と考える。昨年の強制猥褻犯の再犯率は46.4%で、強姦犯では54.6%だったそうだ。発覚しにくい性犯罪なのに発覚した分だけでこんな高率になるのだから、実際の再犯率はこれよりも遥かに高いだろう。
 アメリカでは性犯罪者の人権は大幅に制限されているそうだが、日本も見習うべきではないだろうか。性犯罪は再犯率が高いことを考慮して現状よりも厳罰化すべきだろう。多分、多くの女性もそう考えているだろう。