俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

非戦論

2014-11-19 10:16:11 | Weblog
 戦争を肯定する気は無いが、非戦あるいは避戦が常に正しいとは限らない。第一次世界大戦後、ナチス・ドイツはベルサイユ条約を無視して侵略戦争を始めた。周辺諸国は第一次世界大戦後の厭戦気分が強かったためにナチスによる暴走を放置し、このことがナチス・ドイツの強大化に繋がった。これはあくまで結果論だが、早い時期に英仏などがドイツを攻撃していれば第二次世界大戦には至らず、局地戦で終わっていただろう。
 現在そんなジレンマを抱えているのがトルコだ。隣国のシリアで「イスラム国」が勢力を拡大しつつある。トルコは介入すべきかどうか非常に難しい決断を迫られている。介入しなければ自国にも及びかねない侵略を黙認することになる。介入すれば「イスラム国」との戦争やテロが避けられない。できれば介入せずに済ませたいというのが本音だろう。自らは手を下さず欧米が鎮圧してくれることを期待したいところだろう。
 クルド人問題を含めるともっと複雑になる。独立国を持たない民族として最大の人口を擁するクルド人は、イラン・イラク・シリア・トルコなどに約三千万人が居住する。トルコ国内のクルド人にとって「イスラム国」によるクルド人虐殺は見逃せない。トルコのクルド人は「イスラム国」との即時開戦を要求している。民族による温度差は顕著だ。
 朝鮮戦争はまだ終わっていない。現在はあくまで休戦状態だ。戦闘が勃発した時、日本はどうするべきだろうか。左派も右派も不介入を主張するだろう。左派は憲法9条を盾に、右派は嫌韓感情に基づく。両者も合わせれば国民の9割ぐらいが不介入を支持するだろう。理念としての平和主義は正しい。しかし現実としてはどうだろうか。隣国での戦争に知らぬふりをすることが正当とは思えない。
 国内での暴力なら禁止できる。それは警察という暴力装置を国が独占しているからだ。戦国時代に信濃国と甲斐国が闘っても誰も止められなかった。織田・豊臣・徳川による天下統一によって初めて地域間での戦闘が禁じられた。現代の国連にそんな権限は無い。ウクライナの紛争でさえ収拾できない。そんな状況での非戦論は空念仏に過ぎない。他国の惨事を無視することは決して平和主義ではない、事勿れ主義だ。
 

誤診

2014-11-19 09:41:44 | Weblog
 自分が受けている治療に疑問を持った患者は他の医師によるセカンドオピニオンを求めるだろう。その時、異なった診断をされてそれに納得すれば鞍替えをするだろう。以前の医師にそのことを伝えることはあるまい。するとその医師は誤診に気付けない。来なくなった患者は治癒したものと勝手に思い込んでその後も同じ誤診を続けることになる。これは医療システムとしての大きな欠陥だ。間違った医療が放置される。
 こんな恐ろしいことが医療、特に精神医療では頻発しているのではないだろうか。鬱病は10人に1人、統合失調症は100人に1人の割合で発病すると言われているが、現在治療中の人はそれぞれ百数十万人および70万人ほどらしい。しかしこれらの患者は正しく診断されているのだろうか。統合失調症の患者数が多過ぎるように思える。
 薬は怖い。薬は人体に異常反応を起こさせる劇物だ。しかも薬の効果とは実は異常反応を起こさせるということに他ならず、降圧剤が健常者に投与されれば低血圧症状になる。同じように抗精神病薬を投与された健常者は精神異常状態になるだろう。薬の効果とは異常を正常に戻すことではなく異常にさせることだ。異常を異常にすることによって正常にしようとしているだけだ。罷り間違えれば更に悪化させてしまうし、正常者を異常者にすることもある。
 抗鬱剤の最大の副作用が欝状態の重症化であることは割と知られているが、統合失調症の「治療薬」の副作用は余りにも多過ぎてどれが病状の悪化でどれが副作用なのかさえ分からないのが現状だ。だから副作用の症状が現れても更に投薬量が増やされることもある。症状は悪くなる一方であり、このままでは廃人にさせられてしまう。
 誤った診断と治療による医原病を防ぐことが急務だ。一番必要なことは医師に誤診を知らせることだろう。患者や他の医師が誤診を指摘しても多分、納得しないだろう。だから医原病の疑いがあれば公的機関に報告することを総ての医師に義務付けて公的機関を通じて改善勧告をすべきだろう。手術の失敗であれば結果から判定できる。しかし精神病などの治療の失敗は殆んどが闇の中に葬られている。
 医師による通報の目的は医療技術の向上であり、公的機関による懲罰が目的ではない。しかし勧告にも拘わらず誤診を繰り返す医師がいれば、再教育や資格停止などを科することも必要になるだろう。